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金と金貨、どちらが儲かる? ゴールド相場高騰でわかった今後の投資価値=田中徹郎

よく比べられがちな金と金貨、いったいどちらが儲かるのでしょうか?各銘柄の値動きから、希少価値の上昇をポイントに紐解いていきます。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
株式会社銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

「失われた20年」でも、金価格は5倍近く上昇

僕はときどき皆さんからこんな質問をいただきます。

「金と金貨、どっちが儲かりますか?」

やや遠回りになるかもしれませんが、今回は上記のテーマで書いてみたいと思います。

僕が銀座なみきFP事務所を作ったころ、金の価格はグラムあたり1,500円弱でした(※2004年の平易金価格=1,472円/グラム 田中貴金属サイトより)。

そういえば、当時は1kgのバーが150万円で買えた記憶があります。それが今ではグラム当たり6,900円ほど、1kgのバーなら手数料込みで690万円にもなります。

よく考えてみれば不思議な気もします。

日本ではよく「失われた20年」などと言われ、ここ20年ほどモノの値段はほとんど動いていません。にもかかわらず、上記のように金の価格は、この16年だけをみても5倍近くにもなっているのです。

この現象はいわゆる「資産インフレ」というヤツで、「紙幣の量」と「実物資産の量」のバランスが崩れることによって生じているように僕には見えます。

中央銀行の量的緩和政策によって「紙幣の量」は増える一方ですが、地下から掘り出される「金の量」は紙幣ほどには増えていません。ですから紙幣の相対的な価値が薄まるのは、自然な成り行きだといえるでしょう。

銘柄別にみる金貨の値動き

ではこの間、金貨はどのような値動きをしたでしょうか。そして、もし金と金貨が異なる値動きをしたならば、その要因はどこにあるのでしょう。

まず金貨は、金と違って、いろんな銘柄があります、ですから銘柄の選択によって違った結果が出ることを忘れてはなりません。

そのような点も踏まえ、今回は誰もが知っている代表的な金貨を、いくつか例にとって考えてみたいと思います。

まずは地金型金貨として、誰もが知っている「メイプルリーフ金貨」です。このコインは一応金貨のかたちをしていますが、希少価値はありません。ですから実質的には金ではなく金の地金です。

<カナダのメイプルリーフ金貨>

・20年前の価格:約35,000円
・現在:約227,000円
・20年前比:約6.5倍
※いずれも税込み小売価格、20年前は年間平均

上記のようにメイプルリーフは地金ですので、これがあらゆる金貨の基準となります。

では、例えば皆さんよくご存じの、フランスで19世紀に発行された「ナポレオン100フラン金貨」は、同じ期間でどのように動いたでしょう。

Next: コインは金と違って年号や状態などによって値付けが違いますが、そこまで――



金貨の値上がり幅

コインは金と違って年号や状態などによって値付けが違いますが、そこまで解説をするとそれだけで1記事分くらいになってしまいます。なので、ここでは平均的な年号で、かつ平均的な状態のコインという前提で、大づかみな金額を紹介させていただきます。

<ナポレオン100フラン金貨>

・20年前の価格:約40,000円
・現在:300,000円前後
・20年前比:約7.5倍

確かにメイプルリーフ金貨に比べると「20年前比」は約6.5倍から約7.5倍に上がっていますが、その差はさほど大きくはありません。

これは「ナポレオン100フラン」が、今でも地金に近いコインとしてみられており、逆に言えば希少性がほとんど認められていないことを示しています。

(※ただし上記でも申しましたように、これはあくまで一般的な年号でかつ並程度の状態の100フランです。たとえばグレードがMS64以上の高状態のコインや1865年や1868年銘などは、1枚100万円を超えてきますので、その点はお断りしておきます。)

さて、次は皆さんお好きな「雲上の女神」、オーストリアで1908年に発行された「100コロナ金貨」です。

この金貨は今でこそ100万円を超える値が付きますが、僕がこの事務所を作ったころは、世界でもっとも安く手に入る金貨でした。

<オーストリア1908年フランツ・ヨーゼフ100コロナ金貨>

・20年前の価格:約40,000円
・現在:800,000円前後
・20年前比:約20倍

最後にもう1枚、イギリスで1935年に発行された「ジョージ6世の5ポンド金貨」です。

この金貨も上記2銘柄と同様、つい最近まで地金型金貨とみられていたものです。

<イギリス1937年、ジョージ6世5ポンド金貨>

・20年前の価格:約48,000円(地金価格は38,000円なので希少価値は10,000円です)
・現在:800,000円前後
・20年前比:約17倍

上記3枚に共通するのは、この間の地金価格の上昇率である約6.5倍を上回って値を上げている点です。

つまりこの20年間、押しなべて、金貨は金価格の上昇率を上回ってきたといえるでしょう。それはなぜでしょうか?

なぜ金貨は金より値上がりした?

アンティーク・コインの価格構造をみますと、「地金価格 + 希少価値」に分解することができます。

つまり、すべてのコインは、まず金や銀といった金属としての価値がベースにあり、それに希少価値が加わって相場ができあがっているといえるでしょう。

では、さきほどの「ジョージ6世の5ポンド金貨」を例にとりますと、どのように分解できるのでしょうか。

前述の通り「金貨の価格=地金価格 + 希少価値」です。

まず、地金価格はどうでしょう。このコインの重量は39.94グラム、金品位91.7%ですから、「地金としての価格は約25.3万円」と計算できます(※約6,900円 × 39.94グラム × 91.7 ≒ 252,700円)。

では、もう1つの要素である希少価値はどう計算できるでしょうか。地金価値が25.3万円ならば、希少価値は54.7万円です(※希少価値=80万円 – 25.3万円 = 54.7万円)。

以上を踏まえ、あらためて直近20年の「ジョージ6世の5ポンド金貨」の価格変動を分解しますと、以下のように整理できます。

地金価格の上昇(メイプルリーフ事例より)

・35,000円 → 227,000円(約6.5倍)

希少価値の上昇

・10,000円 → 547,000円(54.7倍)

確かに地金価格も6.5倍ほどに値上がりしてしますが、希少価値の上昇のほうが圧倒的に大きいことがわかります。

つまり、過去20年間の値動きを見る限り、その値上がりの大半は希少価値の上昇で説明することができるといえるでしょう。

金と金貨、どっちが儲かりますか?

そこで再び冒頭のご質問、「金と金貨、どっちが儲かりますか」です。

もちろん銘柄や状態などによって程度の差はありますが、少なくとも過去20年をみる限り、金そのものの値上がりよりも、金貨が持つ希少価値の上昇のほうがよほど大きかったことがわかります。

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image by:allstars / Shutterstock.com

一緒に歩もう!小富豪への道』(2020年7月17日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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