税務調査と査察の違いをご存知でしょうか?国税庁の発表資料「令和元年度 査察の概要」から、実際にどのような事案が査察の対象となっているのかを解説します。(『奥田雅也の「無料メルマガでは書けない法人保険営業ネタ」』奥田雅也)
※本記事は有料メルマガ『奥田雅也の「無料メルマガでは書けない法人保険営業ネタ」』2020年7月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
事業(医業)経営に関する生命保険・損害保険活用術に精通し、過去20数年間で保険提案した法人数は2,500社以上。現在は大阪を拠点として保険代理店経営・保険営業を行うかたわら、年間60回程度の講演や、業界紙・本などの執筆、コンサルティング業務を展開中。著書に『ここから始めるドクターマーケット入門』(新日本保険新聞社)『法人保険販売の基礎』(電子版・保険社)など。
税務調査と査察の違い
国税庁ホームページにて、少し面白いデータが公表されています。
・令和元年度 査察の概要 – 国税庁(PDFファイル)
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/sasatsu/r01_sasatsu.pdf
査察というのは、昔の映画でありました『マルサの女』で有名になりましたので、ご存知の方も多いと思います。
税務調査と査察の違いについて、法律事務所さんのサイトより引用させて頂きます。
・税務調査
税務調査は、所轄の税務署が行うもので、所得税や法人税等に規定されている質問検査権により行う「任意」のもので、申告漏れを調査することが目的です。通常は「○月○日に調査に伺いたいのですがよろしいですか」といったように事前に電話連絡があり、納税者に調査の協力を得ます。・査察
査察は、国税局査察部が行うもので、国税犯則取締法に基づく「強制」的な調査で、臨検、捜索、差押等の権限があり、悪質な脱税を摘発することが目的です。事前の連絡はなく、会社や社長の家に一斉に捜査員がなだれ込みます。相手方の同意を必要としません。
査察は強制力のある調査で、税額の修正だけでなく場合によっては刑事告発にまで至ります。
令和元年度の告発件数は116件、脱税総額93億円
では、実際にこの国税庁のレポートを見てみます。
【令和元年度の取組】
・検察庁に告発した件数は116件、脱税総額(告発分)は93億円
・海外に不正資金を隠す国際事案、無申告ほ脱事案のほか、市場が拡大する分野や時流に即した社会的波及効果の高い事案を告発
ここの中でちょっと意外な感じがしたのは、116件で総額93億円ということは、1件あたりの税額は約8,000万円という金額だということです。
査察が入るのはもっと高額かと思っていましたが、それほど高額な案件でなくても入っているんですね…。
Next: そして国税庁側が重点事案として挙げているのが、消費税還付・無申告ほ税――
重点的に査察調査されるのは?
そして、国税庁側が重点事案として挙げているのが、以下の4つになります。
・消費税還付
・無申告ほ税
・国際事案
・社会的波及効果が高い事案
なお「無申告ほ税」とは、税金逃れをして納税しないことであり、ひとことで言えば脱税事案ですね。
4つ目の「社会的波及効果が高い事案」は、「近年、市場が拡大する分野や時流に即した脱税事案など」と解説してあり、事例として以下が挙げられています。
・投資用不動産販売等の関連グループ5社を告発
・福島原発の除染に絡む建設会社会社員による所得税事案を告発
・インターネット広告会社を告発
・消費税還付コンサルにより多額の利益を得た税理士を告発
最後の「消費税還付コンサル」はニュースになり、かなり話題になりましたので、記憶に新しいところです。
※参考:税理士が2億円脱税疑い 消費税還付指南で多額報酬 – 産経ニュース(2020年5月21日公開)
査察件数第1位は「法人税」
税金の種類で言えば、法人税が1位で64件ですが、2位は消費税で32件となっています(ちなみに相続税はゼロなんですね…)。
消費税は負担が大きいのと、輸出免税制度を悪用するケースが多いと思われます。
事実、この概要の中にも「消費税の輸出免税制度などを利用した消費税受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であることから、引き続き積極的に取り組み、令和元年度は11件を告発しました」と書かれています。
告発が多い業種は「建設」「不動産」
あと興味深いのは、告発が多かった業種で、以下のようになっています(1位は同数で2業種)。
1位:建設業
1位:不動産業
3位:人材派遣業
4位:下水道管調査
過去を見ますと、建設・不動産・人材派遣は常にランクインしており、令和元年はなぜか「下水道管調査」という業種が入っております。
Next: 最後に 国税庁発表資料に掲載されている「気になる事例」をピックアップ――
国外財産調書不提出を指摘する「お尋ね」が増えている?
最後に、 国税庁発表資料に掲載されている「気になる事例」をピックアップします。
・国外財産調書不提出に係る罰則を初適用
日本居住者の国外財産については、調査権限や把握体制に制約があるところ、平成24年度税制改正において創設された国外財産調書に係る罰則を初めて適用し、個人事業に係る売上除外資金を入金していた国外預金に係る国外財産調書の不提出犯を所得税ほ脱犯と併せて告発しました。【事例】
Fは、家具の輸入販売仲介業を営んでいたものですが、売上代金を他人名義の預金口座に入金するなどの方法で事業所得を除外したほか、同様の方法で所得を隠し、所得税の確定申告を一切しない方法で多額の所得税を免れていました。また、多額の売上代金が入金された国外預金を有していたにもかかわらず、正当な理由なく国外財産調書を提出期限までに提出していなかったため、国外財産調書不提出に係る罰則を適用して告発しました。
初の国外財産調書不提出による告発事案です。
以前に当メルマガでも書きましたが、国外財産調書不提出を指摘する「お尋ね」が増えていますので、くれぐれも注意した方が良いですね…。
少し面白いデータでしたので、ご紹介いたしました。
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- 給付金請求に思うこと…(7/15)
- 判例と裁決事例(7/8)
- 興味深い生保会社決算内容(7/1)
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※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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