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日本経済はコロナ後に二度死ぬ?そこから株バブルの本番が始まるワケ=山崎和邦

コロナ後の景気回復において、日本経済は成長力を取り戻せるだろうか。大規模な財政出動で株価は戻っているが、政治の迷走ぶりや過去最大の人口減を見ると悲観的になる。リーマン・ショック後と比較しながら、コロナ後の日本経済を占いたい。(「週報『投機の流儀』」山崎和邦)

※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2020年8月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め購読をどうぞ。

経済成長とは言えない「アベノミクス景気」

コロナ後の景気回復において、日本経済は成長力を取り戻せるだろうか。

本来ならば低成長国ほど高い成長を遂げられるはずである。それは発展途上国の高率な成長ぶりを見ても判る。

ところが、日本は平成バブル崩壊後、IT化による生産性向上の波に完全に乗り損ねたことも主因であり、かつ平成時代に入って官僚機構の衰弱により政治家の政策無能をカバーできずに、世界先進国の中では低成長部類の国に入り続けてきた。 

これはリーマン・ショックの後、大規模な金融政策と財政出動によって、主として大規模な財政出動を繰り返して国家が経済を支えてきた結果である。

そのことにおいては中国も米国も同じだ。ところが、日本経済は中国の何分の1か、米国の2分の1以下の成長率しか実現できなかった。

戦後2番目の長期景気であるアベノミクス景気といっても、その期間の平均成長率はわずか1.1%に過ぎなかった。これでは経済成長とは言えない。横ばいである。

コロナ危機が終わってもリーマン・ショック後と同じく遅れを取る恐れは大いにある。日本の株式市場はそれを織り込みつつあるが、過剰流動性によってバブル相場で支えられているとしか言えない。

「GoToトラベル政策」の異常さの背景

新型コロナウイルスの感染が最大に達しているという状況の下で、政府が金を与えて旅行を勧めている。

この「GoToトラベル」政策という異常さはどこから来るのか。

「3密」を避ければ旅行は危険ではないから、地方の経済を活性化させるという言い分である。しかし、そのために金を与えてまでも旅行を勧めるのは異常であろう。

これには次の背景があるということになっている。

日本旅行業界5,500社の会長に二階幹事長が就任している。そして5,700万円の政治献金を受け取っているという。週刊文春が7月31日号で報じた。この利権の見返りとして、旅行を政府の金で勧めるという。

政治が利権と結びつくことは当たり前の常識となっているが、国民の健康や生命に反する形で利権政策を進めるのは異常なことと言わねばならない。

Next: 小泉進次郎には日本の舵を取る頭脳と度胸が欠けている



なぜ環境相・小泉進次郎は何も言わない?

環境相の小泉進次郎は、これに対してひとことも言わない。厚労省も言わない。コロナに対しては、テレビ画面では厚労省も環境省も出てこない。

小泉進次郎の国政の生命力は環境相就任の時に喪失したと筆者は思っているが、こういう「GoToトラベル」の不合理さが現れたときに、小池百合子ならばこれをジョーカーのカードとして使って、必殺のカードを切る好機とばかりに踊り狂うだろう。

だが、小泉進次郎にはその頭脳はないし、二階幹事長に立ち向かう度胸もない。小泉進次郎は世襲政治家としては4代目であるから「世襲中の世襲」であるが、次期総理や次の次の総理への道は、環境相の失敗で完全に閉ざされたと筆者は思う。

大体、滝川クリステルを同伴させて官邸に婚約の報告に行くなんてことは大衆週刊誌ばりだ。

安倍首相は、閣僚指名中で最も遅れて環境相の指名をした時に、自分の師匠だった小泉純一郎の息子に対して最も意地悪な役割を割り振った、と筆者が本稿で述べたことがある。そして、就任の時の挨拶でそれは暴露された。

日本の人口、11年連続減。生産人口は過去最低

人口動態調査は、総務省が住民基本台帳に基づいて毎年行う。

2020年1月1日時点の人口動態が8月5日に発表になったが、前年から50.5万人減少。これは調査を開始して以来、最大の減少幅となり、11年連続で減っている。生産年齢人口(15歳〜64歳)は日本人全体の50.3%であり、こちらは3年連続で60%を切った。これも過去最低となった。

1年ほど前にジム・ロジャーズが『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』(著:ジム・ロジャーズ/監修:小里博栄・花輪陽子/刊:講談社)という本を出したが、その中で最も日本の将来を悲観しているのは人口減少であり、労働人口の減少と高齢化であった。

高齢化では個人金融資産は増えるが、消費活動に回る分が減る。消費は日本のGDPの6割を占める(アメリカでは7割)。高齢化と労働人口の減少が日本の衰退の主因だという。

ただし、ジム・ロジャースも長期的には時々見誤ることがある。15年ほど前(だったと思う)「中国に理想的な資本主義を見た」と述べ、共産党一党独裁の官製資本主義を褒めたたえていた。共産党独裁国家の行く末は、筆者は安心できないものと思っている。内部から崩壊するか、あるいは何ヶ国に分かれて合衆国化するか、いずれは内部から大変動が起こると考えている。

Next: コロナ後はリーマン・ショックと同じように回復?過去との比較



大恐慌、リーマンショック、コロナ禍の比較で分かること

この3つを比較してみよう。それぞれ株価が最も下落した時を言えば、

(1)大恐慌は、1929年11月13日
(2)リーマン・ショックは、2009年3月9日
(3)コロナ禍は、2020年3月19日

これらの3つの時期を比較すれば、いずれも大底をつけて約4ヶ月後までには回復基調が続いているが、その後が異なる。

(1)の大恐慌はフーバー大統領の失敗であるが、政府の対応が遅れたために不況が長引いた。リーマン・ショックと今回のコロナ禍では、世界中で大規模な財政・金融政策がとられた。

そして、リーマン・ショックの時には、そこから長期上昇波動が始まった。

日本で言えば、リーマン・ショックの時を大底とすれば(アベノミクス相場始動点は2012年11月だったが、リーマン・ショックの時は2009年3月)、日本は約3.5倍(7,000円〜2万4,270円)となった。NYでは4倍を超えた。

8月5日には、米S&P500種株価指数がコロナ・ショック前にほぼ並び、大恐慌とリーマン・ショックの2つのトレンドの分岐点に立つことになった。

今回の危機では世界中が大規模な財政金融政策がとられたから、リーマン危機に似てくるのではないかという期待感もある。

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第1部:当面の市況

(1)急騰の後だけに週明けは弱含み保合いで始まろうが、2週間ぶりに海外投資家の資金が流入した。その半面、米中対立を意識する動きが局部的には出ている
(2)多くの「一般個人投資家」は高くなれば買いたくなり、安くなれば売りたくなるという傾向を持つ
(3)上場企業、今期見通し6割が減収減益、純利益は36%減
(4)円ドル、為替のこと 
(5)現在の株高は「コロナ後の期待」を織り込んでいる
(6)キン急落、NY先物、米金利上昇などで
(7)株価が高値に張り付いている中でもVIXは一貫して高止まりしているのは異例の状況
(8)米国経済と米国株式市場
(9)日米株の連動性が薄れるか─今後も一時的には薄れることは在り得るが本質的にはない。
(10)跛行相場(K字型相場)が明暗を分けつつある
(11)国内経済の戻りは鈍く、先行きも慎重な見方 
(12)マザーズが1ヶ月ぶりの高値
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第2部:中長期の見方

(1)低成長下の日本株式市場
(2)再び経済成長について
(3)米国の対中政策は鮮明に転換した 
(4)「中国共産党は全体主義の政党である」
(5)中長期の見方;中国の強国路線に厳しい目ジャーナリスト嶌信彦通信より
(6)米雇用の雲行きが怪しくなってきている
(7)バイデンが当選すればどうなるか
(8)「Go Toトラベル政策」の異常さの背景。政治献金と政策の歪み
(9)19世紀には日本経済はデフレとインフレの間を行ったり来たりしていた
(10)日本の人口減、11年連続減。過去最大減少、生産人口も過去最低
(11)中長期の見方:人的社会資本
(12)中長期の見方:大恐慌とリーマンショックとコロナ禍
(13)ドル指数が10年ぶりの下落率

来週号の予定

・今はバブル相場の一種に入る
・ポストコロナは世界経済に何をもたらすか
・この異常事態に今の位置に張り付いている日経平均は「異常」だ
・中長期の見方――歴史上の一党独裁の最高記録はソビエト社会主義共和国連邦の74年間
 (1917年レーニン革命~1991年ゴルバチョフvsレーガンのマルタ会談)
・官僚の衰弱が日本経済政策をダメにしたという本稿の論調についての追記
・政界のミーハー族的話題
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2020年8月配信分
  • 米国の対中政策は鮮明に転換した(8/16)
  • 3月19日のような「陰の極」に近づいたら……(8/2)

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山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2020年8月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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