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「パナマ文書」をリークした米国の狙い~資金源に共和党、ソロスも=高島康司

いま大きく報道されている「パナマ文書」のリークには、まったく報じられていない裏がありそうだ。

今回「パナマ文書」をリークした「ICIJ」やその親組織である「CPI」の活動資金は、かつて「カラー革命」や「アラブの春」を主導したアメリカ政府系NGOを支援していた団体が提供している。これはアメリカ政府の外交政策を実現するために画策された事件である可能性が非常に高い。(未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ・高島康司)

パナマ文書リークのNGO、資金源は「カラー革命」「アラブの春」と同一

拡大するスキャンダル

今回のテーマは、まったく報じられることのない「パナマ文書」の裏である。

「パナマ文書」とは、租税回避地への法人設立を代行するパナマの法律事務所、「モサック・フォンセカ」の金融取引に関する1977年から2015年12月までの内部文書のことである。

この文書には各国の指導者や著名人の名が記されており、彼らの脱税や不正取引を証明する重要な証拠になると見られている。

これまでに「モサック・フォンセカ」は、税率が極端に低く世界の富裕層の「租税回避地」となっているパナマに、24万社の「オフショア企業」と呼ばれるペーパーカンパニーを法人登記。「オフショア企業」のオーナーとなった「モサック・フォンセカ」の顧客は、「租税回避地」であるパナマのペーパーカンパニーを通して投資を行うことで、本国における租税の支払いを回避する仕組みだ。

この内部文書を最初にリークしたのは、アメリカのNGO、「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」だ。その後「パナマ文書」は、世界中の100以上に上る報道機関に流出した。「ICIJ」のサイトでは各国の政治家や著名人の名前を公表している。以下は代表的な人物だ。

文書の公表の直後、アイスランドでは多くの国民が激しく抗議したため、4月5日、グンロイグソン首相は辞任した。

これからさまざまな著名人の名前が公表され、この問題は大きなスキャンダルに拡大していくことは間違いない。

リストに「米政治家は含まれていない」の裏

これがいまのところの事件の全容だが、公表された名前を見るとやはり大きな違和感を感じてしまう。金融取引の内部文書がリークした「モサック・フォンセカ」はパナマの法律事務所である。中南米はアメリカの実質的な裏庭と化しており、政治や経済のあらゆる領域でアメリカとの関係がもっとも深い地域である。

そうであるにもかかわらず、今回リークされたリストにはアメリカの政治家や民間人の名前はまったく含まれていない。リークした「ICIJ」はこれから多くの米民間人の名前を公表するとしているが、それには米政治家は含まれていないとしている。

実質的にアメリカの政治的な支配地域といってもよい「租税回避地」であるパナマでリークした文書に、米政治家の名前が一切出てこないというのは実に奇妙な話である。ホワイトハウスのアーネスト報道官は、米司法省がこれから調査を開始するとしているが、「ICIJ」が米政治家の名前は含まれていないというのだから、司法省の調査でも出てくるかどうかは分からない。

このように見ると、やはり今回の「パナマ文書」のリークは不自然である。報道されているような事件ではない可能性がある。見えない裏がありそうだ。まずは今回の公表に至った経緯を確認してみよう。

Next: 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は米政府の国策機関だ



国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は米政府の国策機関だ

調べて見ると、「パナマ文書」の情報が最初に報道されたのは今回が初めてではなかった。すでに16カ月前、徹底した取材で有名な独立系メディア「VICE」で、調査ジャーナリストのケン・シルベスタースタインが「モサック・フォンセカ」の怪しい業務について報じていた。

その後、ちょうど1年前、ドイツ、ミュンヘン市の日刊紙「南ドイツ新聞」に「モサック・フォンセカ」が登記にかかわった21万4000社のリストが、匿名の人物によって持ち込まれた。「南ドイツ新聞」は「ICIJ」と協力し、これらのペーパーカンパニーを所有している人物の名前を明らかにした。そして今回、「ICIJ」の手によってこれにかかわった著名人の名前が一部公表された。

当然この経緯だけからは、米政治家の名前が含まれていないという不自然な状況の説明にはならない。もしかしたら、これを公表した「ICIJ」という団体にカギがあるかもしれない。これまでこの団体の名前を聞いたことのある人は少ないはずだが、「ICIJ」とはいったいどのような団体なのだろうか?

これも調べて見るとすぐに分かるが、「ICIJ」は独立した団体ではない。アメリカの非営利の調査報道団体「センター・フォー・パブリック・インテグリティ(CPI)」に属するプロジェクトの名称だ。

ちなみに「CPI」は、国際的なジャーナリストのチームを組織し、「越境犯罪、汚職や権力の説明責任」などの問題に焦点を当てるため、1996年に結成されたアメリカのNGOである。現在、60カ国以上から160人の会員ジャーナリストが在籍し、国際的な犯罪に関わる様々な調査を行っている。

「ICIJ」はここの「組織犯罪と汚職の報告プロジェクト」という部門に属している。いわば「ICIJ」は、親組織である「CPI」の理念を実現する現場の調査プロジェクトであるようだ。

そして「CPI」のサイトでこの組織の資金源を調べると、興味深いことが分かる。次の組織が資金のおもな提供者であることが明確に記載されている。

長くなるのでいちいち解説しないが、これらの団体は米国務省共和党とつながりが強い団体ばかりであることに気づく。また「オープンソサエティー」は、ジョージ・ソロスが設立した財団である。

さらに、「ICIJ」の上位組織である「組織犯罪と汚職の報告プロジェクト」は、米政府の海外援助を実施する「合衆国国際開発庁(USAID)」から直接資金の提供を受けている。

こうした事実を見ると、「パナマ文書」をリークした「ICIJ」やその親組織の「CPI」は、米政府の国策機関である可能性が非常に高い。もしそうであれば、公表された「パナマ文書」にアメリカの政治家の名前が一切含まれていないことの説明がつく。

Next: カラー革命やアラブの春も、NGOを利用した米国の国策だった



カラー革命やアラブの春も、NGOを利用した米国の国策だった

ところでアメリカは、国外の政権の転覆などの外交政策の実現のために、NGOを国策機関として活用している。

たとえば2000年から2005年まで続き、セルビア、グルジア、ウクライナ、キルギスなどおもに旧ソビエト地域の親ロシア派の政権を打倒した「カラー革命」では、革命を主導した反政府青年組織の結成に関与し、資金を提供して訓練したのが米政府と関係の強いNGOであった。

それらは、米国務省系の人権団体「フリーダムハウス」、共和党系の「国際共和党機関」、民主党系の「全国民主党機関」、米政府の「合衆国国際開発庁」、そして投資家ジョージ・ソロスの「オープンソサエティー」などの組織である。

さらに、2010年12月に北アフリカのチュニジアで始まり、中東全域に拡大した「アラブの春」では、米国務省が2008年に立ち上げた「青年連帯運動」に結集した青年組織を、「フリーダムハウス」などの「カラー革命」に関与したと同じNGOが支援した。

そして大規模な反政府活動の実地訓練は、革命コンサルタントの異名をもつ「CANVAS」という組織が実施したことはよく知られている。これらのことは、ニューヨークタイムスなどの主要メディアの記事でも明らかになっている。

このように、「カラー革命」や「アラブの春」には多くのアメリカの政府系のNGOがかかわっている。これらのNGOは、まさに米政府の国策機関だといってもよいだろう。

そして、今回の「パナマ文書」をリークした「ICIJ」や「CPI」の活動資金は、「カラー革命」や「アラブの春」を主導したNGOに資金を提供した同じ団体が提供している。

たとえば「CPI」の大口の献金者である「フォード・ファウンデーション」や米政府の「合衆国国際開発庁」は、「カラー革命」と「アラブの春」で重要な役割を果たした「フリーダムハウス」の主要な資金提供者でもある。

これを見ると、今回の「パナマ文書」のリークには「カラー革命」や「アラブの春」を画策した同じ組織や団体が深く関与しており、まさにアメリカの外交政策を実行するために引き起こされた意図的な事件であると結論して間違いないように思う。

これは、特定の国々に米政府系のNGOを派遣して反政府活動を組織し、米政府の外交政策を実現した「カラー革命」や「アラブの春」と同じ手口だ。

Next: トランプ降ろしか、北朝鮮攻撃か。米政府の狙いとは?



トランプ降ろしか、北朝鮮攻撃か。米政府の狙いとは?

もし「パナマ文書」のリークが米政府による意図的なものだとするなら、その目的は何であろうか?

これからアメリカ以外の国々の著名な政治家の名前が次々に公表されるはずだ。公表されて一番打撃が大きい国や地域を見ると、米政府の最終的な目的が何であるのか見えてくる可能性が高い。

だが、はっきりしていることは、「パナマ文書」による政治家の実名の公表は、米政府が目標とする政策を実行するように特定の国々に迫る脅しとして使えるという事実だ。

トランプを引き降ろすために使う?

また「ICIJ」がいうように、「パナマ文書」にある米民間人の名前がこれから公表されることになっている。もし共和党大統領候補のドナルド・トランプの名前があったらどうだろうか?

おそらく共和党の主流派はこれをトランプ引き降ろしのための格好の材料として使うに違いない。とするなら国策機関である可能性が高い「ICIJ」が「パナマ文書」を公開した目的は、トランプの引き降ろしであったことになる。

この可能性は決して低くくはない。しかしながら、「ICIJ」が「南ドイツ新聞」と協力して「パナマ文書」の分析をはじめたのは、1年前である。一方、トランプが大統領選の立候補を宣言したのは、昨年の6月である。調査が始まった時期には、まだトランプの立候補は決まっていなかった。ましてや、立候補した当初、トランプは泡沫候補の一人として見られ、すぐに消え去ると見られていた。

こうした点を考えると、決して否定はできないものの、トランプの引き下ろしが公開の目的であるとはちょっと考えにくいかもしれない。

北朝鮮攻撃が近い?

もしかしたら、この焦点になるのはロシア中国かもしれない。そしてその目的は、(日米韓合同軍による)北朝鮮攻撃の是認である。これは次回に書く。

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未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』(2016年4月8日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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