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私が村上世彰さんにフジテレビ買収のアイデアを教えた時の話=房広治

村上さんが旧通産省を辞める前の年に、とある忘年会で初めて会った。敵対的買収の賛同者同士であったために紹介され、いくつかのアイデアを彼にあげた。結局、このうちの3つを村上ファンドは仕掛けることになる。(『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』房広治)

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※本記事は有料メルマガ『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』2020年8月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:房広治(ふさ こうじ)
アメリカ、イギリス、香港など主要金融センターで著名な日本人投資家。留学中に外資系銀行に就職し、わずか10年で日本のインベストメントバンキングのトップとなった。投資家転向初年度に年率リターン90%以上の運用成績を出し、ファンドマネジャー・オブ・ザ・イヤーとなる。現在は、バークレー大学・ハースビジネススクール、コロンビア大学、ロンドンビジネススクール、香港大学など著名大学で、オルタナテイブ投資、ヘッジファンド、プライベートエクイテイファンド、コーポレートガバナンス、金融危機についてのゲスト講義なども行っている。

村上世彰さんと「子会社のほうが時価総額が大きくなる話」

村上ファンドの村上世彰さんが著書『村上世彰、高校生に投資を教える』の中で、フジテレビとニッポン放送の話を書いているという。ニッポン放送関係者がメールで教えてくれた。

私はまだ本のほうは読んでいないのだが、この関係者の話によると、村上さんは自身の名誉回復のために本を出版したのではないかと言う。村上さんの伝えたいメッセージは、「日本の裁判官は、金融リテラシーがない」「自分は、その金融リテラシーのない裁判官の被害者である」ということなのではないか?とおっしゃっていた。

また本件については、他の方もいろいろと好きなことを書いているということなので、「秘密保持の時効成立」ということで、誰も傷つけないような事柄に限ってだが、以下、金融リテラシーという観点から書いてみた。

敵対的買収「賛同者」としての出会い

まず、私は村上さんと面識がある。

村上さんが旧通産省を辞める前の年に、ファンドに最初の1億円を出資して合計で3億円を集めてあげたという日本の上場会社の社長に連れられて、「忘年会」で初めて会った。

村上さんは、通産省時代の通産官僚として、当時は異例の敵対的買収賛成者なのだという説明であった。

私は、村上さんを紹介してくれた社長に、「世界で最初の敵対的買収は、私が勤めていた会社の創業者が1958年から59年にかけて、ブリティッシュ・アルミニウムという会社を、TIという会社に買収させたものだ」と説明していた。

1990年に日本に戻ってきた私も「日本でも敵対的買収が産業の活性化につながる」との意見を持っていたために、その社長が連れてきたのであった。

村上さんと語り合った買収アイデア

当時、同僚でしょっちゅう一緒に仕事で協力し合っていたマイケル・レミントンと私が、村上さんを連れてきた社長を接待するという場であった。

その社長の話を聞いて、当時スイスの「ビジョンファンド」というM&Aのターゲットになりそうな会社にお金を突っ込むファンドの話を教えたことで、村上氏の「ファンドの構想」が鮮明になったのだと思う。

カール・アイカーン、T.ブーン・ピケンズ、アイヴァン・ボウスキーなど投資家の話とともに、マイケルと私で「日本でやるなら」と、村上さんにいくつかのアイデアをあげた。

この時のアイデアのうち、結局、3つを村上ファンドは仕掛けることになる。

Next: なぜ「ニッポン放送・フジテレビ」買収のアイデアを持っていた?



買収ターゲットとなる日本企業はいくらでもあった

私のアイデアが、「ニッポン放送・フジテレビ」と「東京エレクトン・TBS・TBSの不動産」で、マイケルが「住友電工・東京タングステン」だった。

ただ、最初のうちは、ヘルメットのSHOEIとか東京スタイルとか、安定株主が50%を超えているものを狙っていたため、くすぶっていた。

この話は『まぐまぐ!Live』で受けた。なぜ、そんなアイデアを持っているのか?という質問が出た。

答えは簡単。このような、含み資産が時価総額より大きい状況は、この何十年もの間、日本の上場会社には腐るほどたくさんあるのである。

子会社の方が時価総額が大きくなるケース

簡単に説明してみよう。例えば、マスコミ業界だ。

まず、戦後発展したマスコミは、ほとんどが通信社か新聞社が母体である。すべての新聞社が未上場であり、お互いに相手のことは報道しないという不文律があるために目立たない。私は、M&Aバンカーとして日本に戻ってきた1990年に、朝日新聞の当時の大株主から相談を受けて、業界のことをかじることになる。

日本のマスコミは、新聞社がラジオやテレビを作り、子会社の方が親会社よりも大きくなってしまうのである。

ニッポン放送の場合は、弱小の産経新聞だけではなく、財界が創ったような老舗のラジオ局で、その株を中興の祖の鹿内信隆さんという方が、筆頭株主として、産経新聞もニッポン放送も牛耳っていたのだ。

朝日新聞の朝日テレビも同じである。読売新聞と日本テレビも、テレビ局が上場すれば親会社よりも大きくなるのである。

今ではどちらも10兆円の時価総額になってしまったNTTとNTTドコモも、過去はドコモがNTTを抜いた時期があった。もっと古くは、古河鉱山。子会社の古河電工や富士電機の方が大きくなった。富士電機の子会社の富士通の方が富士電機よりも大きくなり、時価総額3兆円の富士通の子会社のファナックの方が大きい。ソニーとエムスリーも同じような関係だ。

というわけで私は、同じ会社出身で、村上さんのようになりたいという後輩にいくつかアイデアをあげたりしている。

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image by:Olga Kashubin / Shutterstock.com

房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』(2020年8月8日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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