欧州委員会が仮想通貨への本格的な規制に乗り出した。デジタル人民元はいよいよ抽選で国民に配っての実証実験に入るなど、法定デジタル通貨導入へ向けて世界は大きく動いている。それに向けてビットコインやリブラなどの仮想通貨を規制しておこうという狙いだ。(『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』高島康司)
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仮想通貨規制に本腰
仮想通貨の本格的な規制と、法定デジタル通貨の導入について解説したい。
9月24日、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は、仮想通貨に関する規制案を正式に発表した。消費者と投資家の保護、金融システム安定等の観点から包括的な規制を提案している。以下の3点だ。
1)仮想通貨を発行する承認の取得
2)発行者はEU内に拠点をおくこと
3)ルールに違反した場合の罰金支払いなどを義務付ける
これから2024年までに規制を導入するという。
ターゲットはFacebook主導の「リブラ」か
また今回の規制では、裏付け資産が確保されているかを厳格に監督することも明記されている。
特にこの規制は、「フェイスブック」が主導するステーブルコイン「リブラ」を想定しているとみられている。
欧州委員会は、一般的な仮想通貨市場は規模が大きくないため現時点では金融の安定には影響はないが、グローバルに利用されるステーブルコインは状況が異なるとしている。
いよいよ国家発行のデジタル通貨が出回る
このEUによる仮想通貨規制案の発表は、各国の規制強化の動きの一環だとも見られている。
それというのも、中央銀行が発行する法定デジタル通貨の導入が間近なので、この規制はそれに会わせた動きと見られているからだ。「中央銀行デジタル通貨(CDBC)」の本格的な導入の前に、これの撹乱要因となる既存の仮想通貨を規制しなければならないという方針だ。
Next: 抽選で「デジタル人民元」約1.6億円分を配る中国政府
動き出した「デジタル人民元」
早くも中国は、中国の中央銀行デジタル通貨となる「デジタル人民元」の導入を加速させている。広東省、深セン市は、10月10日までに「デジタル人民元」を市民に配布すると発表した。「中国人民銀行(中央銀行)」と連携した試験運用の一環として、実際にスマートフォンで使ってもらうという。
配布総額は計1,000万元(約1億5,700万円)だ。抽選で1人当たり200元を配るという。専用のアプリをダウンロードして使う形式だ。
「人民銀行」はすでに中国各地で「デジタル人民元」の実用試験を進めているが、今回は実用化を見据えさらに踏み込んだテストだ。「中央銀行デジタル通貨(CDBC)」をめぐっては、中国主導を警戒する日米欧も導入に向けて作業を加速しており、今回の取り組みに注目している。
このように「中央銀行デジタル通貨」の導入は中国を筆頭に加速している。
10月11日、「国際決済銀行(BIS)」は7つの中央銀行と共同して、「中央銀行デジタル通貨(CDBC)」を本格的に導入するための共通の基本原則を公表した。
中国を含め今後の各国による「中央銀行デジタル通貨」の導入は、この基本方針にしたがって実施されるものと思われる。
仮想通貨のゆっくりとした規制
このような「中央銀行デジタル通貨」の本格的な導入に向けての動きが、既存の仮想通貨への規制を強める要因となり、これが一層厳しい規制の導入につながる可能性は大きい。このため、既存の仮想通貨の将来性を悲観する見方も広まっている。
しかし、だからといって、既存の仮想通貨の取引が困難になるほど厳しい規制が課せられるとは思えないという見方が強い。
世界の株式の時価総額は20兆ドルだが、これにははるかに及ばないとしても、既存の仮想通貨の市場規模は2,000億ドルを越えている。
このため、「ビットコイン」や「イーサリアム」などの有力な仮想通貨は、「ゴールドマン・サックス」や「JPモルガン」など、欧米系の大手の金融機関のポートフォリオに入れられて、販売されている。仮想通貨の先物を手掛ける金融機関も多い。
そのため、政府が仮想通貨を一斉に規制し、仮想通貨の取引そのものを禁止するようなことでもあれば、こうした欧米系の金融機関には大きな打撃になる。新たな金融危機の引き金にこそならないものの、主要な金融機関の財務状況の悪化につながることは間違いない。
Next: 目が離せない仮想通貨規制。強引な排除はまだ見られないが
強引・性急な仮想通貨排除はまだ見られない
前述の理由で、各国政府が「中央銀行デジタル通貨」の本格的な導入に向けて既存の仮想通貨への規制を強化する方向に動いたとしても、その規制は金融機関や投資家に対応するための十分な時間的猶予を与えるペースで進められると思われる。
この動きは、仮想通貨の将来を決定するうえで大変に重要なので、新しい情報があれば紹介する。
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『ヤスの第四次産業革命とブロックチェーン』2020年10月14日号より一部抜粋
※記事タイトル・リード文・本文見出しはMONEY VOICE編集部による
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昨年から今年にかけて仮想通貨の高騰に私たちは熱狂しました。しかしいま、各国の規制の強化が背景となり、仮想通貨の相場は下落しています。仮想通貨の将来性に否定的な意見が多くなっています。しかしいま、ブロックチェーンのテクノロジーを基礎にした第四次産業革命が起こりつつあります。こうした支店から仮想通貨を見ると、これから有望なコインが見えてきます。毎月、ブロックチェーンが適用される分野を毎回紹介します。