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なぜ種苗法改正はひっそり進む?農業も水道も「日本が売られる」=原彰宏

農作物の自家増殖を制限する種苗法改正案が近日中に国会で可決される見通しです。種子法廃止、水道民営化しかり、あらゆる物事で日本が売られていきます。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2020年11月16日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

誰に何が売られるのか?

「日本が売られる」、かなりショッキングなタイトルですが、いったい誰に何が売られるのでしょうか。それは日本にとってはメリットなのでしょうか、デメリットなのでしょうか。

「誰に売られるか」という問いに対しては、「外資」という答えが返ってきます。「外資」とは外国資本で、海外企業になります。円満に交渉が進めば「売却」となり、それに対して「買われる」という表現になりますが、敵対買収の場合は「乗っ取られる」という表現になるのでしょうね。

「何が売られる」となると、以下の複数のものが指摘されています。

農業

健康(医療・薬剤等)
食品
海洋
森・山林
教育
金融
個人情報
etc…

放送ジャーナリストのばばこうへい氏の娘で、参議院議員の川田龍平議員を夫に持ち、ベストセラー「日本が売られる(幻冬舎)」の著者であるジャーナリスト堤未果氏は「国家まるごと民営化」と表現されています。

以前も当メルマガで、「水道民営化」と「種子法廃止」「種苗法改定」について、その問題点を指摘しました。

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どちらも「水が売られる」「農業が売られる」ということになります。

日本の方針は「Sell Japan」か?

トランプ大統領の「Buy America」ならわかりますが、日本を安売りしているのですからね。

「Trust my アベノミクス」「under the control」と、英語っぽい表現で本質をごまかしてはきましたが、さすがに「Sell Japan」とは表現できないでしょう。

こちらはごまかしというよりも、あまりにも本質をついた表現ですからね。とても日本国民にとって良いことのようには思えないのです。

日本を安くたたき売りして、なんの得があるのでしょう。なんのため、誰のため、いったい誰が儲かるのでしょうか?

ここからは、売られていく「農業」「水」そして「金融」について個別に解説していきます。

Next: 女優の柴咲コウさんも問題提起。日本の「食」が売られる



農業が売られる

コロナ対策の影に、というかマスコミはもうコロナと日本学術会議委員任命拒否問題に明け暮れている間に、国民の目にさらされることなく「種苗法改定」が決まりそうです。

本来は、安倍政権最後の通常国会で通すはずの法案だったのですが、黒川弘務東京高検検事長(当時)定年延長問題で審議ができず、世間の風も安倍政権に厳しかったこともあり、通常国会での成立は見送られました。

種苗法改定は、世論の目を気にしなければならない法案だということです。

女優の柴咲コウ氏が先頭に立って、種苗法改定に異を唱えたことで、一般の人の目にもとまることになりました。

【関連】柴咲コウ、種苗法改正に憤り。コロナの影で日本の「食」が外国資本に売られる

黒川弘務検事長問題も、女優の小泉今日子氏が声を上げたことで世間の注目を集めることになり、やはり発言力のある人の声は大事ですね。

種子法廃止から、種苗法改定へ…この流れで「農業が売られる」を考えてみましょう。

日本の食を危険にさらす「種子法廃止」

種子法廃止に関しては、以前に当メルマガで書いた記事を、掘り起こしてみます。種子法は通称であって、正式には「主要農作物種子法」と言います。

主要農作物種子法は、コメ・麦・大豆などの主要な農産物に関しての優良な種子の安定的な生産と普及は国がその役割を果たすべきであることを定めたものです。

時代背景から見て、主要農作物種子法(以下通称の「種子法」を用います)は、食料の安定供給が目的だったかと思われます。この法律が、2018年4月に廃止されました。

この背景には、農業分野への民間参入というものがありますが、問題は、民間企業の国籍です。外資の参入に対する警戒感があるのです。

種子法廃止は、当時TPP(環太平洋パートナーシップ協定)加盟に向けての政府方針が関わっていると思われます。「自由競争」の名のもとに、すべての産業等を開放するのがTPPの趣旨で、日本人の主要農産物を国が管理していることが不都合になったのではないでしょうか。

TPPでは、自由競争を阻害する国の関与は認められません。

コメの自由化という言葉もありましたが、日本の主食であるコメが自由市場に晒されることで、外資の競争に巻き込まれることが危惧されていました。

すでに民間が主体となっている野菜などの作物では、圧倒的な技術力と資本を持つ数社の多国籍企業が、中小の種苗会社を次々に買収し、世界中にシェアを拡大しています。

今スーパーなどで販売されている野菜の多くも、そうした多国籍企業の種子によるものなのです。

「特許ビジネス」が日本の農業を食い物に

その競争の背景に「特許」という概念がついてきます。ロイヤリティービジネスです。

つまり、種子法廃止の根本的な問題として、新しい品種をつくるために素材となる遺伝資源である品種は、国や都道府県が“公共の資産”として持つという考え方だったのが、民間に委ねられた場合、遺伝資源を基にして改良された新品種について、改良部分だけでなく種子全体に特許をかけ、企業がその所有権を主張するのではないかという指摘です。

ロイヤリティ(特許料)を払わなければその種子が使えなくなる、遺伝資源が企業に囲い込まれてしまう、これは「種子の私有化」を意味するというものです。

農家は、作物をつくるのに、毎年このロイヤリティ(特許料)を負担しなければならなくなるのです。

この「新しい品種をつくるために素材となる遺伝資源である品種」が、農家の努力で培われたもので、それが次の年により良い品種の作物が生まれるものとして、その財産権は各農家に委ねられることを、オープンにしろというのが、今国会で成立するであろう「種苗法改定」の主旨となるのです。

それは種子法が規定する主要農作物だけではありません。いちごもメロンもすべてです。

種子法廃止から種苗法改定の間に、米国を含むTPPは大きく縮小されましたが、外資参入の障壁は取っ払うことは続けられ、農家が自ら生産した作物から種子を採取する「自家採種」の権利をも奪うことになっていくのです。

農家は作物栽培のためのロイヤリティ(特許料)を毎年外資企業に払うことになるのです。

Next: まもなく「種苗法改正案」国会通過、日本の農業が外資に売られる



まもなく「種苗法改正案」国会通過

ポイントを整理しますと、以下の流れになっています。

農業の自由市場化 → 外資参入 → 農業の(遺伝資源である品種という)知的財産が奪われる → ロイヤリティービジネス

この流れで、今まさに国会を通過しようとしている「種苗法」を見てみましょう。

農家が登録品種のタネを自由に自家採種し、自家増殖することを禁じる「種苗法」改正案に対し、農家の不安や憤りの声を取材したドキュメンタリー映画「タネは誰のもの」(原村政樹監督)が、オンラインで有料上映されています。

種子法廃止やTPPに対して反対運動を展開してきた、弁護士で民主党政権時代に農相を経験した山田正彦氏がプロデューサーを務めた映画です。

「種苗法」に関しては、過去に当メルマガでも書きました。

NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』で主演の女優・柴咲コウさんが自身の公式ツイッターで

新型コロナウイルス感染拡大の中、種苗法の改正が行われようとしている

ことに警鐘を鳴らしていました。

種苗法の改正案には、農作物を新たに生み出した人や法人に「育成者権」を与えることなどが盛り込まれる方向で、ゴールデンウイーク明けから国会で審議される見通しです。

育成者の知的財産権が保護される反面、各農家による株分けや種取りなどが制限され、農業崩壊が起きる可能性も指摘されています。

そんな流れに対し、柴咲さんは

新型コロナの水面下で、「種苗法」改正が行われようとしています。自家採取禁止。このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます。これは、他人事ではありません。自分たちの食卓に直結することです…

とつづっています。

TPP前提の種子法廃止から、種苗法改定に至るまで、主要農産物(コメ・麦・大豆など)から農業全般において、外資に日本の農業そのものを“売る”プロセスが見られると思います。

反対意見は黙殺。強行採決で重要法案が決められていく

グローバル化の名の下、海外で模造品が作られることを防ぐということで、これらの法律の必要性を訴えていますが、その運用の仕方によっては、種苗法の改正案には、農作物を新たに生み出した人や法人に「育成者権」を与えることが盛り込まれていることから、いかようにもできる、世界のグローバル企業は、特許権、知的財産権でお金を儲ける道具に使われるということになります。

法律制定の趣旨を論じるのはわかりますが、その運用方法に抜け道はないかをチェックすることも大事なのです。

法律制定、あるいは改正・廃止する側は、その運用方法の抜け道を知って、あるいはわざと残しているようで、そこに法律制定側の意図が込められているのを、見抜く必要があります。

それゆえ、常に法案反対者の意見に耳を傾ける姿勢が大事なのですが、その余地すら与えないように、前政権から今の与党は強行採決を連発して議論をさせなようにしているところに、闇を感じ怖さを感じ、その方向性に不審を抱くのです。

まさに、種子法廃止から種苗法改定に至るまでの流れが、人目を避けてこっそりと進めていることに注目してほしいと思います。

私たちの食卓の問題です。

TPPの時も、盛んに遺伝子組み換え食材が食卓を埋め尽くす時代になると危惧されていましたが、いままさに、日本の農業が外資に売られようとしているのです。

Next: 貧乏人は水を飲むな? 外国資本に売られるとどうなるか



世界は再公営化が主流。それでも日本は水道事業を民営化へ

2018年12月、改正水道法が成立しました。

この改正案は、自治体が公共インフラである上下水道などの施設を所有権したまま、運営権(通常15~20年)を民間企業に売却するという、民営化の一つの形である「コンセッション方式」の導入を促進する内容です。当メルマガでも、2度に渡って取り上げました。

【関連】あまり報道されない「水道民営化」可決。外国では水道料金が突然5倍に

ポイントは「コンセッション方式」です。

コンセッション方式は、災害時の水の安定供給の責任は自治体が負う、届けさえすれば厚生労働省の認可なしで企業が水道料金を変更できるという、民間企業にとってより都合がよい形にして、導入しやすくしたものです。

コンセッション方式を導入した自治体には地方債の元本一括返済の際に最大で利息の全額を免除するという改正PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律)も成立しています。

自治体にとっては、コンセッション方式を導入したら旨味があるというものです。

ただ世界の流れは「再公営化」で、2000年から2015年の間に、37か国235都市が、一度民営化した水道事業を再び公営に戻しています。

それは、民営化して不都合が生じたからです。民間企業に運営権を持たせたことによる料金高騰や水質悪化、サービスの低下などの問題が次々に出てきたからです。

まさに「貧乏人は水を飲むな」です。

「貧乏人は水を飲むな」が現実に

以前の記事をそのまま引用します。

マニラは1997年に水道事業を民営化しましたが、米ベクテル社などが参入すると水道料金は4~5倍になり、低所得者は水道の使用を禁じられました。またボリビアは1999年に水道事業を民営化したものの、やはりアメリカのベクテルが水道料金を一気に倍以上に引き上げ、耐えかねた住民たちは大規模デモを起こし、200人近い死傷者を出す紛争に発展しました。

当時のボリビア・コチャバンバ市の平均月収は100ドル程度で、ベクテル社は一気に月20ドルへと値上げしたのです。大規模デモは当時の政権側は武力で鎮圧されましたが、その後、コチャバンバ市はベクテルに契約解除を申し出ると、同社は違約金と賠償金を要求してきたそうです。

外資が参入してきて水道料金を引き上げ、水道料金が支払えない低所得者層は水が飲めずに、衛生上よくない水を飲んで病気になるケースがみられ、民間の水道事業者が利益ばかり追いかけたことにより、「再公営化」が世界の潮流となりつつあるという指摘もあります。

この外資企業と言われるのが「水メジャー」と呼ばれる企業で、2強と呼ばれるのがスエズ・エンバイロメント(フランスや中国、アルゼンチンに進出)とヴェオリア・エンバイロメント(中国、メキシコ、ドイツに進出)です。

いずれもフランスの企業です。

人間が生きていくうえで必要なのは「空気」と「水」だ。

Next: 「金融」まで売られる日本。生活すべてがグローバル企業の手の内に



金融が売られる

「金融」では、具体的には銀行や保険会社などで、行き着く所「日本人の資産が売られる」ということになります。要は、いろんなことに外資(外国企業)が主導権を握り、日本国は何も言えなくなるということです。

「外資に売られる」を、見方を変えて「日本の米国化」という表現だと、これまでにいろんなものが「グローバル」の名のもとに変えさせられてきました。

企業年金制度は、日本古来の給付型年金から「確定拠出年金制度」に移行しました。米国では「401k」と呼ばれていることから「日本版401k」と言われています。投資信託を通して、日本株式だけでなく、米国債券や米国株を買っています。公的年金資産も同じです。

かんぽ生命は、相次ぐ不祥事があって、その株価を下げてます。公開株式は自由市場ですから、いま安くなった株を買い占めることもできます。かんぽ生命は、一生懸命アフラックのがん保険を売っています。

日本の個人資産を虎視眈々と狙っているというのは、グローバルの名の下でも、また郵政民営化のときにも散々言われたことです。

雇用形態も大きく変わりました。高度成長期に企業を支えた終身雇用は、悪のレッテルを貼られて葬り去れら、代わりに「働き方の多様化」の旗のもとに非正規雇用形態が増えました。

日本ではない海外の製薬会社のワクチンを使用することが求められています。日本は大量に海外企業からコロナワクチンを買うことになっています。しかも副作用が出た場合の訴訟費用は政府負担という特約付きです。まるで日本人を利用したワクチン効果大実験です。

特効薬も、海外企業の製品が使われます。森が、海が売られます。

ひとつひとつ細かくチェックしてみてください。なぜこのようなことになっているのでしょうか。いったい誰が得をするというのでしょうか。

そして、日本はどこに向かおうとしているのでしょうか?

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  • らぽ~る・マガジン第443(2020.11.16)「日本が売られる Sell Japan …!! 」(11/16)
  • らぽ~る・マガジン第442(2020.11.9)「米大統領選挙の本当の勝者は“中国”?パート2」(11/9)
  • らぽ~る・マガジン第441(2020.11.2)「膨張する日本銀行、そこから見えてくるものって実は…」(11/2)

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image by:ziggy_mars / Shutterstock.com

らぽーる・マガジン』(2020年11月16日号)より一部抜粋
※タイトル、本文見出しはMONEY VOICE編集部による

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