【今日の3分間書評】「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか?

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旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」を要約して紹介するメルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』。筆者の土井さんは、Amazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤーで本読みの達人。忙しくて本を読む時間がないビジネスマンでもたった3分で内容がわかります。今回は世界を席巻する日本のお菓子について書かれた本を紹介します。
 

3分でわかるビジネス書

本日の一冊は『「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか?

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三田村蕗子・著 日本実業出版社

こんにちは、土井英司です。

本日の一冊は、マーケティング会社を経てフリージャーナリストとして活躍中の著者が、世界を席巻する「日本のお菓子」をフィーチャーした、注目の一冊。

フランスでは大人の味として売られている江崎グリコのポッキー(現地名はミカド)や、大リーガーに受け入れられ、大ブレイク中の森永製菓ハイチュウ、アメリカのヘルシー志向が追い風となって売れているカルビーの「ハーベストスナップス」など、海外展開で成功する日本のお菓子とメーカーの試みがこれでもかというぐらい紹介されており、じつにワクワクする読み物です。

通常、日本の商品は個性がなくて退屈と言われていますが、お菓子市場に関しては、世界でもかなりのキワモノ。

最近は、空港に行っても抹茶味のチョコレートがお土産品で売られていたり、海外スーパーでは豆系のスナックが売られていたり、「日本のお菓子」は、本当に世界を席巻しつつあります。

本書は、こういった日本のお菓子メーカーの快進撃を扱ったレアな一冊で、結論から言うと、本当によく調べて書いていると思います。

意外なモノが意外な理由でウケていたり、絶対に売れそうなものがちょっとした理由で売れなかったり…。読んでいてじつに面白い。

それぞれのカテゴリーの市場規模、どこが世界の主要プレイヤーでどれだけのシェアを占めているのか、どんな味がどんな理由でウケているのか、海外ブランドとのコラボレーションの状況など、じつに詳しく書かれており、投資家目線でも申し分ない内容です。

最近調べたところによると、本書で紹介されているようなお菓子メーカーは、現在急速に海外販売比率を高めており、株価も好調です。

本書は、お菓子ビジネスの「今」を切り取った優れた読み物であると同時に、投資家にとっては良い投資指南書になるでしょう。

これは、強くおすすめしたい一冊です。

▼ 本日の赤ペンチェック ▼

  • 3%台だった(カルビーの)営業利益率は2010年3月期には6.5%に急増した。2014年3月期は9.9%。もう食品メーカーとしてはトップクラスの域だ。グローバル企業にふさわしい数字として目標に掲げていた10%まであと少しに迫っている
  • アジアを除く海外では、甘く煮た豆は嫌われるのに、ただの豆はヘルシーだという理由で好まれる。ととえば、2013年に海外でグーグルを使って検索された和食のキーワードで、一番多かったのはやはり「寿司」だが、2番めは「枝豆」だった
  • カルビーの「ハーベストスナップス」は、アメリカの店頭では「Better for you」(健康によい食品)というカテゴリーで販売されている
  • 長い不遇の時代を経て、ようやく「フルグラ」は花開いた。主に女性やファミリー層の支持を得て、2013年度の売上は年間95億円。2014年度は150億円。これは全売上(カルビー単体)の1割にあたる数字である
  • NCA(National Confectioners Association)の調べによれば、ガムやキャンディーが含まれるコンフェクショナリーの市場規模は、2013年で約336億ドル(約4兆円)。(中略)「ハイチュウ」が該当すると思われるノンチョコレート菓子や、競合するカテゴリーのガムの市場規模だけをピックアップすると、あわせて130億ドル(約11兆5600億円)(中略)アメリカには日本の約4倍もの肥沃な市場が横たわっている
  • 陣頭指揮を取るのが、海外事業部長(森永製菓)の山下充洋さんだ。新卒でマンダムに入社し、2年目にシンガポールに赴任後、タイ、インドネシアと20年間駐在を続け、その間、1978年に誕生したメンズ化粧品ブランド「ギャツビー」をアジアナンバーワンのブランドに育て上げ、マンダムの海外売上比率を40%に引き上げた最大の功労者である
  • ニューヨークには安いものから高級品まで、チョコレートの選択肢が豊富にある。でも、「生チョコ」はいまのところはほぼロイズだけ
  • 岩塚製菓のように、海外企業への技術供与という形でグローバル市場に進出している企業はほかにもある。お菓子ではないが、世界最大の即席麺メーカーに成長した「サッポロ一番」ブランドのサンヨー食品グループだ
  • アメリカでは「グルテンフリー」が注目株
  • 「ターゲットにしているのは、世界のオリエンタルマーケット。アメリカの3億人の人口中、3000万人がオリエンタル系なんですよ」(丸京製菓 代表取締役社長 鷲見浩生さん)
  • 世界最大のイスラム国家、インドネシアでは、焼きたてシュークリームの店、「ビアードパパ」が脚光を浴びている

◆目次◆

第1章 看板商品でも太刀打ちできない?!
第2章 唯一無二の食感でメジャーデビュー
第3章 おもねらず、堂々とプレゼンスを示す
第4章 世界ナンバーワンの黒子となる米菓メーカー
第5章 味のローカライズで米菓を世界のお菓子へ
第6章 古参商品の再ブレイクで世界展開
第7章 「DORAYAKI」が世界共通語となる日
第8章 五感訴求型販売スタイルとフランチャイズ方式で大量出店
第9章 「おもてなし」のパッケージ戦略で活路を見いだす
第10章 ご当地戦略で本家を凌駕する
エピローグ ガラパゴス商品を愛する非ガラパゴス人の熱き想い

■編集後記

今回は、NY在住28年の板越ジョージさんが主催する、日本人の集まりにいくつか参加してみました。

クリエイターの会やMBAの会など、さまざまなものがあり、良い刺激を受けています。

この手の集まり、世界中で行われているはずなので、いろいろ出てみたいですね。

ちなみに「本日の一冊」は、日本のお菓子がテーマでしたが、日本のお菓子、本当にキテいます。

インバウンドの影響もあり、日本のお菓子メーカーの株は軒並み上がるかもしれませんね(既にかなり上がっているので株価に注意ではありますが)。

毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン
著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行
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