【書評】腹八分目、一流の男のみが知る「残り二分」の深い意味

 

松平家の男性は、「腹八分目」の精神を身につけています。「腹八分目」は、暴飲暴食に対する戒めであると同時に、「自分の人生の二分を人のために役立てなさい」という献身性を説いた教えです。一流の男性は、地位も名誉も富も、独り占めすることはありません

「一番」を目指す人生は、他人と自分を比較する“常に足りていない”人生です

私が幼いころ、祖母の姪である秩父宮妃殿下のご自宅で、おせち料理をいただいたことがあります。箸がうまく使えなかった私は、厳かな雰囲気の中で、粗相をしました。里芋をつまみ損ね、じゅうたんの上に転がしてしまったのです。すると、妃殿下が「あらあら、この里芋さん、ころころ転がって元気ね」といって、場をやわらげてくださいました。妃殿下が私を責めず、私がしたことをなごやかな笑いに変えてくださったから、幼かった私の心は救われました

一流の人は、どのような相手であっても、ミスをとがめたりせずに「やり過ごす」ことがあります。なぜなら、恥をかかせないことは、一流の思いやりだからです

二流は仕事を「作業」と捉え、一流は仕事を「夢」と捉える

茶道では、相手を敬い、思いやりの心を残すことを「残心」といいます。何をするときも「最後まで気を抜かず、清らかな余韻を残せる」人は一流です。ドアは、静かに閉める。電話は、相手が切ったことをたしかめてからそっと切る。お客様に書類をお渡しするときは、両手で差し出す。相手が書類をきちんと受け取るまで、自分の手を少しだけ留めておく……。ほんのわずかなことですが、思いやりの心を残そうとする所作は相手に伝わります

「語尾」は崩さずに、はっきり伝える。「語尾」の「ます」に思いを込めるのが、一流の挨拶です

会話の基本は、聞く。人の話を最後まで聞かず、自分の話ばかりするようでは、一流とはいえません。「相手の気持ちを吐き出させる」ことに徹してこそ、一流です

会話中は相手の「目」よりも、相手の「心」を見る

貧乏とは、お金がないことをいうのではありません。「人のために何もできない(しない)こと」です

隣の人が困っていたなら、手を差し伸べる。知らないふりをしない。通り過ぎない。踏みつけない。その人のために労を惜しまない。一流の人の心根にあるのは、「隣人へのやさしさ」なのです

月並みな表現で恐縮ですが、本当に背筋が伸びる一冊で、良いタイミングで良い本に出合ったと感謝しています。

部下に指導する時でも、子どもに指導する時でも、なぜこのマナーが大切なのか、所作が大切なのか、その本来の意味を知らなければ説得力に欠けるものです。

その点本書は、人を大切にするための根本的な考え方が示されており、いつでも応用可能な心構えとなっています。

タイトルに偽りなし。

これは読み応えのある一冊です。

image by: Shutterstock

 

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著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
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