アパルトヘイト撤廃が裏目に?南アで深刻化する技術者流出問題

 

そこで出てくるのが、3か月間ならビザなし滞在できる日本人技術者を派遣して、3か月ごとに出国して再入国を繰り返すという方法なのだという。日本人は、劣悪な環境の海外勤務にはあまり向いてないともいわれているのだが、ビザなし滞在をできるという点で、世界展開要員としては向いている。

プラント会社というのは、将来的に見込みがあるとみて、危険な国や劣悪な国にも投資するケースが多いように感じる。しかし、この技術者派遣会社は「南アは、今後どんどん堕ちてゆく」という。堕ちてゆく国地域にプラント建設、というのでテンション上がらないとおもうが、それでもやり続けるのがビジネスなのだろうか。発電などの産業インフラは、その設備が完成するのにも数年以上のロングタームだし、完成したあとに、そのインフラを活用して新しい地域づくり国づくりを夢見られるところに醍醐味がある。

堕ち行く国にプラント建設を、というのは、建設屋としてはあまりない思想だ。とはいえ、派遣会社だから、毎月利益回収できるということで、気にしないでよいのだろうか。そう考えると、「堕ち行く業界、堕ち行く国」という負けモードを気にしないで淡々と任務を続行できるのは、派遣社員だから、ということか。ということは、傭兵は、負け戦向き? いや、そんなことない、負け戦に投入された傭兵なんて、とっとと戦線離脱していった例は歴史上多い。

カトケンの知り合いで海外赴任したい技術屋がいたら紹介してほしい、と言われたが、「堕ち行く国」と社長に太鼓判押されてる南アフリカ行を紹介できる友人はいないよなあ。堕ち行く国の側にとっても、どうせ活用できない発電プラントを建設することで負債が莫大に膨れ上がるだけで、南アフリカ国民のことを考えても、プラント建設を進めるのがどうなんだろか、と。えっ、人道派NGOじゃないんだから、ビジネスとしてやった分はむしり取ればいいんでは? ってか。プラント建設屋のマインドって、機械を売る商売と、ちょっと違うのかも。

image by: Shutterstock

 

異種会議:戦争からバグパイプ~ギャルまで』より一部抜粋

著者/加藤健二郎(建設技術者→軍事戦争→バグパイプ奏者)
尼崎市生まれ。1985年早稲田大学理工学部卒。東亜建設工業に勤務後、軍事戦争業界へ転職。1997年より、防衛庁内局OPL。著書は「女性兵士」「戦場のハローワーク」「自衛隊のしくみ」など11冊。43才より音楽業に転向し、日本初の職業バグパイプ奏者。東長崎機関を運営。自分自身でも予測不可能な人生。建設業→戦場取材→旅行業→出版→軽金属加工→軍事戦争調査→探偵→バグパイプ奏者・・・→→次はなに?
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