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もう一つの横浜・傾きマンションは今。住民から届いた悲痛な叫び

先日、横浜の三井傾きマンション関連の記事で、すでに昨年から傾きが問題になっていた住友不動産の建物を取り上げた、マンション管理士の廣田信子さん。今回のメルマガには、その住友マンションの住民から寄せられた悲痛の声が紹介されています。

昨年の傾き事件「パークスクエア三ツ沢公園」の今

こんにちは!廣田信子です。

昨年、建物の傾きが問題になった横浜市の「パークスクエア三ツ沢公園」(住友不動産熊谷組)の住人の方から現状を伝えるメールを頂きました。

問題が発覚して大きく報道されたマンションも、その後の経過は、なかなか表に出にくいのですが、今回の「パークシティLaLa横浜」の報道を見て黙ってはいられない思いでメールをくださいました。私たちの今をぜひ知ってもらいたいと。

住民の方たちにすれば、そっとしておいてほしいという思いもあるのではと少し迷いましたが、「今考えますと、ここに住んでいる住民の方々は、もっと早くにマスコミ等と通じて、問題を表に出すべきだったと反省しきりです」という言葉に、問題をちゃんと知ってもらいたいという強い思いを感じ、書かせてもらうことにしました。

以下、頂いたメールを、分かりやすいように整理しつつ、できるだけ、内容はそのままで記載させて頂きます。

「パークスクエア三ツ沢公園」は、A棟(エアリーテラス) とB棟(ブリーズテラス)とオーナーズコートの3棟からなり、管理組合1つです。しかし、実質的には、A棟はコの字型の3棟、B棟はL字型の2棟の建物が連結してできています。傾きがあったのは、L字型のB棟の南面の「Bの南棟」です(この問題があってから、「Bの南棟」、「Bの東棟」という呼び方が始まりました)。

 

現時点で、傾いた「Bの南棟」は建て替えと決まり、L字でつながる「Bの東棟」は、建替えずに、杭の是正工事で対応するということになっています(横浜市もそれを承認しているからです)。基礎杭の未達が複数本確認されており、大きな傾きはないものの、室内やエレベーターの擦り傷が確認されているのに…です。

 

住友不動産は、住居の買い取り保証はしているものの、全棟の建て替えは、全く応じるつもりはありません。

 

保障についても、「Bの南棟」の建て替えに関しては、工事期間中、A棟、B棟すべての住居に対して仮住まいの提供とその費用の負担をすると言っていますが、「Bの南棟」は、全ての費用負担をすることになっているのに対して、「Bの東棟」は、住めないにもかかわらずパークスクエアに掛かる費用は各区分所有者の負担となっています。

一番悲惨なのは、A棟で、同じく未達の杭が複数本あるにもかかわらず、軽微なので、是正工事すら必要ない(但し是正工事はする様ですが)と横浜市がいい、僅か100万円の慰謝料で済ませられる予定で話が進んでいます。

 

この物件は、昨年この問題が表面化する前までは、購入価格より10年以上経過しても販売価格が2割前後上回る、とても人気の物件でした。しかし、この問題の表面化後、担保にもならない物件となってしまいました。住友不動産は、風評被害はないと言い切っていますが、だれが、是正工事後にこの物件を以前の高い価格で買うでしょうか。

 

しかも、建替えた「Bの南棟」は3~4年後には新築物件、その他は築15~16年の問題があった中古物件となるのです。

 

住友不動産は、言葉では「前向きに住民の皆様の立場にたって、誠心誠意対応する」と言いますが、何度か開催された住民説明会で、住民から社長の謝罪を求める発言が何度も何度もあったにも関わらず社長の謝罪の一言もないまま現在に至っております。

 

最後に、最近の問題のマンションの報道を聞いておりますと、この問題が、この業界の根本的な体質から起こっている問題としか思えません。

 

学校や官公庁等の低層階の物件では、同じ問題を含んでいたとしても、大震災等のよほど大きな問題がない限り、問題自体が発覚しないままになっているのではと感じております。

 

パークスクエアは、氷山の一角に過ぎません。是非この問題を、建築業界への楔としていただきたいと痛切に願っております。

(以上、居住者からのメールより)

私は、これを読んで、それぞれの立場の住民の方々の心情を思うと、言葉が出ませんでした。特に、

建替えた「Bの南棟」は3~4年後には新築物件、その他は築15~16年の問題があった中古物件となるのです。

ということの問題の根深さをこの方は一番伝えたかったのだと思いました。

今回の「パークシティLaLa横浜」問題に、自分たちの苦しい現状からの教訓を生かしてもらいたいという思いが伝わってきました。

売主の対応に差が生じることで、同じ被害者である住民同士でさえ、心を1つにできない状況は、本当に悲劇としか言えません。

マンションのディベロッパーは、大きな夢を売る仕事です。住宅という大多数の人には一生で一番の大きな買い物を決意させるほどの夢を売っているのです。「パークスクエア三ツ沢公園」の販売広告に、どんな夢を売る言葉が並んでいたか…。それを、これほどひどい形で裏切ることになった罪深さを、ちゃんと分かっているのか…という思いが、社長の謝罪を求める声につながるのだと思います。

最後は金銭的な形でしか償えない部分があるとしても、それを工事施工業者にすべて持たせるというのではなく、売主自らも住民と同じ痛みを背負う覚悟をして誠意をつくす…それが、大きな夢を売った企業の責任ではないでしょうか。

その自ら負った痛みがあればこそ、二度とこのようなことがないようにという改善につながるのだと思います。それができてこそ大企業であり、企業ブランドではないでしょうか。

そして、昨日、「パークシティLaLa横浜」に関して、三井不動産レジデンシャルが示した補償内容が明らかにされました。

 ●傾いた棟だけでなく全4棟を建替える方針を「基本的枠組み」とする

 ●建替える場合も、建替えない場合も転居希望者からは、不動産鑑定士による新築想定価格で買い取る(以前に示した、過去のもっとも高かった時期の価格で買い取るという考え方よりより有利な条件提示といわれています)

 ●建替え中の仮住まいの家賃や引っ越し費用、家具保管料等を負担する

 ●現在行っている地盤調査など安全性確認中の宿泊ホテル代等を負担する

 ●精神的な苦痛や今後発生する様々な負担に対する慰謝料を支払う

この保障案の提示を評価する住民の声が多いとされる一方、区分所有者全員全棟)の5分の4の賛成を得て建替え決議をするにはまだまだハードルがあるとされています。

が、今、ボールはかなり受け取りやすい状態で、三井不動産から住民、管理組合側に投げられていると言えるのでしょう。

私は、この記事をほぼ書き終わった時点で、このニュースを聞いて、「パークスクエア三ツ沢公園」の方々は、どう感じたのかと思わずにはいられませんでした。

メールをくださった方が言われるように、三井不動産は「パークスクエア三ツ沢公園」の事例から学んでいると思います。

そして、この三井不動産の発表を聞いて、住友不動産の方々は「パークスクエア三ツ沢公園」での自分たちの対応を今、どう思っているでしょうか…。

image by: 熊谷組

 

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