11月13日、120人以上の犠牲者を出す大惨事となったパリ同時多発テロ。ISによる犯行と断定されたこの事件は、今後の世界を大きく変えそうです。メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、予想される各国の動きを詳細に解説しています。
「パリ同時多発テロ」で何が変わる?
皆さんご存知のように、フランス史上最大、最悪のテロが起こりました。今日は、これについて考えてみましょう。
何が起こったのか?
時事通信11月15日に、「何が起こったのか?」がよくわかる記事がでています。
30分間に7カ所襲撃=3チームで分刻みの犯行−パリ同時テロ https://t.co/6Cpy1Gc3nK
— 時事ドットコム (@jijicom) 2015, 11月 15
わずか33分の間に、7か所でテロ。メチャクチャ組織的であることがわかります。フランスのオランド大統領は、「イスラム国の犯行だ!」と断定しました。そして、「イスラム国」は、「犯行声明」を出しています。
ISがビデオ声明「フランス人を眠らせるな」 空爆非難 https://t.co/5kuOkEcUXj
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) 2015, 11月 14
「動機」は何なのでしょうか?
「フランスが、シリアに介入したことだ」とテロリストは語っていたそうです。
パリ連続襲撃事件、実行犯は「シリア介入」が動機と語る https://t.co/1TonSKDx2i
— AFPBB News (@afpbbcom) 2015, 11月 14
というわけで、
犯行=イスラム国
動機=フランスがシリアに介入したこと
(※ フランスは、2014年9月からイスラム国への空爆に参加している)。
パリ同時多発テロ前の状況
以上、13日に起こったことを見ました。
しかし、状況をもっと深く理解するために、テロリストがいっている「シリアで何が起こったのか?」を知る必要があるでしょう。
中東、北アフリカ諸国で2010年ごろから「アラブの春」と呼ばれる革命運動が活発になりました。実際にいくつかの国で、独裁政権が崩壊しています。
2011年末、独裁者アサドが支配するシリアでも、「革命運動」がおこってきた。ロシアは、事実上の同盟国であるシリアのアサド現政権を支持。一方、欧米は、「反アサド派」の支援を開始しました。もちろん今回テロがあったフランスも。この辺は、皆さんご存知ですね。
「イスラム国」は当時、欧米が「民主主義を求める善の勢力」と定義した「反アサド派」に属していました。長くなるので、ここでは詳細に触れませんが、「イスラム国」【驚愕の正体】については、こちらの記事をご一読ください。
欧米対ロシアの「代理戦争」と化したシリア内戦は激化していきました。
「なかなかアサド政権は倒れない!」
業を煮やしたオバマは2013年8月、「シリアを攻撃する!」と宣言します。しかし、翌9月、「やっぱシリア攻撃やめた!」と戦争をドタキャン。世界を仰天させます。
プーチンの説得により「化学兵器破棄」に同意したアサド。誠実に約束を守り、政権を延命させることに成功しました。
アメリカの熱意が衰えてきたことで、「イスラム国」は「反アサド派」の枠にとどまらない活動を開始します。
2014年1月、「イスラム国」は「独立」を宣言しました。同6月には、「カリフ宣言」。そして、彼らは外国人を片っ端から捕まえ、身代金を要求。「公開処刑」の動画をネット上に公開し、世界を震え上がらせました。
2014年8月、オバマは、「イスラム国」への空爆開始を宣言。同年9月、今回テロがあったフランスが空爆参加を表明。「有志連合国」の数は、どんどん増えていきました。
しかし、アメリカを中心とする空爆は、どうも「本気」が感じられません。1年間空爆をつづけている間、「イスラム国」は弱くなるどころか、逆に支配領域を広げていった。
ロシアは、欧米の空爆について、「本気ではない。イスラム国をアサド政権打倒のための武器として使っている」と考えています。
長びくシリア内戦。支配領域を拡大していく、残虐な「イスラム国」。結果、新たな大問題が起こってきました。それが、「大量難民」の問題です。テロが起こる前、欧州のメディアは、毎日「難民問題」がメインでした。
2015年9月30日、ロシアがシリア空爆を開始。「共通の敵イスラム国を打倒するため」という建前ですが、本音は、親ロシア・アサド政権を守るため。それで、「イスラム国」と「反アサド派」両方を空爆しています。
「イスラム国をアサド打倒のために利用したい」欧米の「なんちゃって空爆」と違い、ロシアは本気。1か月半の空爆で、アサド政権は元気を取り戻しました。アサド軍は現在、着々と失地を回復しています。これが、「パリ同時テロ」が起こる前の状況です。