カランカランと鐘が鳴り、独特の声で競りが始まる――。80年もの間、首都圏の食卓を支え続けた「築地市場」が江東区・豊洲に移転することが決定すると、賛否の声が飛んだ。なかには「歴史と情緒が失われる」との意見もあった。
実際のところはどうなのだろうか?エンタメプレックスは、11月14日にTOKYO ICHIBA PROJECTが開催した「東京いちばセミナー」に出向き、プロジェクトの応援団長を務めるタレントの清水国明にインタビューした。
TOKYO ICHIBA PROJECTとは、築地市場の豊洲への移転に向け、中央卸売市場の機能や役割を都民に再発見・再認識してもらうことを目的としており、セミナーは3度目を迎える。女性限定にしぼった今回のセミナーでは、専門家が23名の参加者に移転の目的をわかりやすく説明した。
■そもそも移転する必要があるの?
話によると、「築地市場がもう限界を迎えているから」とのこと。多くの建物が耐用年数を超えているため、地震などが起きた場合、非常に危険なのだという。「じゃあ直しながら使えば?」との意見もあるが、「再整備するにはあまりにも土地が狭い」「今の施設がパンパンで駐車場や荷置き場が全然足りていない」「時間がかかりすぎる」などの問題が多すぎるのだとか。
■移転するメリットは何?
築地市場は、古い開閉型の施設。豊洲新市場は、温度をちゃんと管理できる閉鎖型施設にすることで、商品を高温や雨風から守り、より鮮度を保てるという。さらに、新市場の広さは、築地市場の約1.7倍と、車や荷物のスムーズな流れを可能にする。
■清水国明インタビュー「現代のニーズにあった施設を」
――セミナーは今回で3回目だそうですが、感触はいかがですか?
「1度目は区別なく、2度目は親子に向けて。今回は女性へのアピールですが、応募がすごく多かったんです。食事を作る女性がたくさんいて、口から入るものへの安全性への関心が高まっている証拠だと思いますね」
――確かにそうですね。
「食が口に入るまでにブラックボックスがあると、それが原因で病を招くケースがある。“完成品”をパッと口にしているけれども、プロセスがわからないと不安じゃないですか?」
――とくに最近はネット上でも「あれがいい」「これが悪い」とソースの不明な情報が飛び交い、よくわからない状態です。
「こうして実際に現場に足を運んで担当者から聞いて確認するのが一番だと思います。不安材料をなくして気持ちよく食べることが、もっとも健康にいいと思うので」
――それにしても単なる移転ではなく、施設が大幅にグレードアップすることが目的なのは知りませんでした。
「築地市場って風情や雰囲気は確かにいいんですよ。でも、もう限界まで達している。実際に働いている人たちも敷地内でギュウギュウになって大変だという現実的な問題もあります。もちろん情緒は大事ですが、時代に合わせて変えるべき部分は変えていく必要があるのではないでしょうか?」
――最近では外国人の観光客も増えていますね。
「そうですね。市場を訪れた外国の方々が『ウム、日本の食生活の源はここか』と思うわけですから、最新の設備を備えた豊洲新市場は身の丈に合った良い改変だと思いますよ」
――あとは風情の問題です。
「実はそこがいまだに勘違いされているところで。あのごちゃっとした市場の場外はそのまま残るんですよ」
――え!? そうなんですか?
「はい。あそこもなくなって、全てが豊洲に移ると思っている方も多いんですが。ただ、業務施設がちょっとやり辛いからそれを移転するだけで、築地市場のよさは残るわけです。僕ね、あちこちでこの説明をしています(笑)。難しく考えずに、築地市場のよいところは残り、現代のニーズに合わせて効率化すべき部分はする、そう思っていただけたら嬉しいですね」
その後、ツアー一行は豊洲新市場の建設工事現場をバスで周り、月島へと移動。「パティスリー・ラ・ノブティック」の日高宣博シェフによる市場の食材を使用したスイーツ教室が行われた。
日高シェフ考案、旬のリンゴを使い新市場への思いを込めた「豊洲への期待 春巻き林檎タルト」を実食し、ツアーは終了した。
築地市場といえば、どうしても歴史的な観点から見がちだが、このように移転にはいろいろな思惑があるようだ。現地に出向かなければ意外と知らないこともある。興味を持ったなら一度、実際に築地市場を見学するといいだろう。築地市場には「東京いちばステーション」があり、移転についてよりくわしく解説してくれる。
<関連サイト>
TOKYO ICHIBA PROJECT http://www.tokyoichiba-project.metro.tokyo.jp/