韓国に「第2の国辱」を招いた金泳三を、国家葬に美化した思惑

 

そんな折に金泳三元大統領が亡くなりました。金泳三は初の文民政権として韓国の民主化を進めたという功績がある一方で、政権当時の1997年、アジア通貨危機によって韓国は国家破産し、IMFの管理下に入るという「第2の国辱」を招いた張本人でもあります。

加えて、1993年には300人近い死者・不明者を出した西海フェリー沈没事故、1994年には32人が死亡した聖水大橋の崩落事故、1995年には500以上の死者を出したビル崩壊事故である三豊百貨店事故など、大事故が次々と起こったのも金泳三政権です。そのため、これまで韓国国内では金泳三氏の人気はあまり高くありませんでした。

一方で金泳三氏は、こうした経済崩壊や国内の混乱に対して、反日による政権の支持率浮揚を初めて行った韓国大統領でもあります。1995年には旧朝鮮省督府の建物を日本時代の負の遺物、つまり「日帝残滓」だということで爆破解体し、竹島に埠頭を建設し、さらに中国に反日教育を拡散した江沢民と手を組んで、「日本の礼儀作法を必ず直してやる」と息巻き、国内での人気を集めました。

反日愛国に精出す 竹島に埠頭“独島愛国主義”のスタート切る

また、韓国国内に残っていた日本統治時代の測量用の杭を、「朝鮮半島を衰退させるために風水上の要所に杭を打った」という妄説を信じてその撤去を命じたのも、この政権でした。

加えて、河野談話が発表されたのも、金泳三政権時代です。河野談話の文面自体、金泳三政権の関与が発覚しています。発表前に、日韓で文面のすり合わせがあったことが、安倍政権の検討チームの報告書で明らかになっています。

日韓の綿密なすり合わせ明記 検討チーム報告書

もっとも、金泳三元大統領も、日韓基本条約ですべては決着済みであるので、賠償を取れないことはわかっていたのでしょう。あるいは、慰安婦問題そのものが虚構であることを知っていて、さすがにそこまで要求するのは無理だと理解していたとも考えられますが、金泳三氏は「日本に賠償は求めない」と発言しています(朝日新聞1993年3月18日付)。それを信じた日本は、倍賞を請求されないらならばということで、それまでの立場から踏み込んで、「強制性」があったかのような河野談話が発表されてしまったのです。

日本のお人好しぶりがよくわかりますが、結局、それによって現在まで続く禍根を残してしまったわけです。

韓国の歴代大統領を見てみると、引退後はたいてい「不幸」な境遇に陥っています。初代大統領の李承晩は国を追われ、次の朴正熙は凶弾に倒れ、全斗煥と盧泰愚は有罪判決で禁錮刑、盧武鉉に至っては自殺しています。

大統領退任後に天寿を全うできたのは、いまのところ金大中と、国内外で人気がもっとも低かった金泳三くらいしかいません。金泳三は、退任後に台湾の李登輝総統に会いたいと申し込みましたが、きっぱりと断られました。

今回、朴槿恵政権は金泳三氏を国として最高レベルの国家葬にすることを決定しました。ちなみにこれまで国葬になったのは朴正熙、金大中の2人しかいません。盧武鉉は一段下の国民葬でした。

11月14日にソウルで大規模な反政府デモが起こり、朴槿恵政権はこれを力で弾圧しましたが、現政権に対する韓国国民の不満はますます高まっています。

そこで、金泳三氏を英雄視し、その業績を美化することで、自分たちの反日による支持率アップを正当化してくる可能性があります。すでに朝鮮日報などは、「日本を痛罵した直言居士」ということで、評価の見直しを奨励するかのような記事を載せています。

「日本の礼儀作法を直してやる」 金泳三元大統領、数々の直言が話題に

また、「第3の国辱」となる国家破綻が迫っている朴槿恵大統領としては、かつて国家破綻を招き、激しい反日を展開した金泳三氏を国葬にすることで前例を作り、自分の行く末を守るという計算もあるのかもしれません。

それはともかく、金泳三氏の業績を鑑にするならば、「日本に賠償は求めない」という言葉をきちんと継承してほしいものです。

 

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黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋

著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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