傾きマンション問題、短い杭を打たせた不動産会社の「被害者面」

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今年の後半に大きな話題を呼んだ、横浜のマンション傾き問題。杭の長さが足りないことで起こった今回の問題は、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。この件について、『辛坊治郎メールマガジン』では、本当に責任をとるべき会社は一体どこなのか、その真相を追求しています。

マンションが傾いた責任はこの会社に

例のマンション、「2センチ段差が出来た」って報道されましたが、体内センサーの鋭い人なら場所によっては頭がくらくらするレベルだと思います。終の棲家と思ってこのマンションを買った皆さん、ホント気の毒です。いったい誰が一番悪いのか

このニュース報道が始まった当時、真っ先にやり玉に挙げられたのはくい打ち工事を担当した旭化成建材でした。そりゃ確かに、長さの足りない杭を打った上にデータを偽装し、杭が堅固な地層に到達していたように偽ったのは悪いですよ。でもね、今思えば、下請けの旭化成建材に全責任を押し付けて、あたかも自らが被害者であるかのように装った三井不動産の責任が最も重かったのは明らかです。だって、あの場所に14メートルの杭を打つように旭化成建材に指示したのは三井不動産だったんです。

くい打ち工事に当たって、下請け業者はあくまでも仕事の発注者の指示の下で工事をする権限しかありません。で、あのマンションを設計して、地盤強化のために打つ杭の長さを決めたのは三井不動産で、旭化成建材は三井不動産の指定した長さの杭を打っただけですからね。それもタチが悪いのは、あのマンションの建設場所って、元々どこかの工場が建っていたらしいですが、その工場建設の時に使われていた杭の長さは18メートルだったって三井不動産は知っていながら、「14メートルで足りるだろう」って根拠なく決めていたんです。杭の長さ一つで建設コストが変わりますから、短い杭を指定したのは、工期短縮とコスト削減のためでしょう。

仕事の発注元が「現場の地盤を調べて設計したから14メートルの杭を使うように」って指示してきた時、どうでしょう、仕事をもらっている下請けが断れますかねえ。そりゃ職業倫理としては、「14メートルの杭では堅固な地層に届きません。もっと長い杭を使わせてください」って言うのが正解です。でも工期とコスト管理を厳命されている下請けが、親会社にそんなことを言い出した時に考えられる反応を想像した時、「全部の杭が利いてない訳じゃないから、データ改ざんでごまかして穏便に済まそう」ってなるのは、仕方ないとは言いませんが、あり得る話ですよね。等々、現場で起きていたことを知ると、ホントに悪いのは杭打ちデータを偽装した旭化成建材じゃなくて、旭化成建材に短い杭を打つように指示した三井不動産だったんです。

これらの事実はその後の報道を丹念に追っかけている人にとっては常識のレベルでしょうが、当時の嵐のような報道しか記憶にない人の多くは、「杭打ちデータを偽装した旭化成建材が悪い。下請け業者にデータを改ざんされ、不十分な工事をされた三井不動産は被害者」って思っている筈です。理不尽ですよねえ。

image by: MAG2NEWS

 

辛坊治郎メールマガジン』より一部抜粋

著者/辛坊治郎
「FACT FACT FACT」をキーワードに、テレビや新聞では様々な事情によりお伝えしきれなかった「真実」を皆様にお伝えします。その「真実」を元に、辛坊治郎独自の切り口で様々な物の見方を提示していきたいと考えています。
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