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結局、尖閣有事の際にアメリカは日本を守ってくれるのか?

尖閣諸島問題で一触即発となるも、最悪の事態は免れた日中関係。しかし無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、中国は尖閣を諦めたわけではなく、「日本にアメリカという大きな後ろ盾があるため、手出しできなくなっているだけの話」と分析しています。

アメリカ、「中国から攻撃あれば日本を守る」宣言

08年に起こったアメリカ発「100年に1度の大不況」。これで、冷戦終結後つづいていた「アメリカ一極時代」が終わりました。そして、「米中二極時代」がはじまったのです。

「二極時代」といっても、2015年までその中身は、「沈むアメリカ昇る中国」。アメリカの影響力はどんどん下がっていき、中国のそれはどんどん増大していく。強大化する中国は、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない!」と宣言している。

※ 証拠=反日統一共同戦線を呼びかける中国

それで、日本の関心は、「尖閣有事の際、アメリカは日本を守ってくれるのか???」ということ。この件について、アメリカのハリス太平洋軍司令官は、こんな力強い発言をされています。

「中国から攻撃あれば尖閣を守る」 米軍司令官が言及

朝日新聞デジタル 1月28日(木)11時29分配信

 

米太平洋軍のハリス司令官は27日、ワシントンで講演し、中国が領有権を主張する尖閣諸島について「尖閣諸島が中国から攻撃されれば、米軍は同諸島を防衛する」と明言した。

 

米国は尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象になるとの立場をとってきたが、「中国の攻撃」に言及し、米軍による尖閣諸島の防衛に踏み込んだ発言は異例だ。

これ、どうなんでしょう。素直に喜んでいいのでしょうか?

日米安保は機能しているか?

既述のように、ここ数年「アメリカは、日本と中国が戦争になったとき、本当に日本を守ってくれるのか?」という議論をよく耳にします。これについて、私は明確な答えを出せません。というか、だれも断言できる人はいないはずです。断言する人がいても、「推測」を「絶対そうだ!」と言いかえているにすぎません。

比較的最近の例で、アメリカに捨てられ領土を失った国があります。コーカサスの旧ソ連国、グルジア(ジョージア)です。グルジアは、研究者の間では、「アメリカの傀儡国家」として知られています。

「傀儡国家」になったのは、03年のバラ革命以降。この国は08年8月、ロシアと戦争をしました。その結果、グルジアは、同国からの独立を目指していた南オセチア、アプハジアを事実上失ってしまいます。ロシアが、南オセチア、アプハジアを、独立国家として承認してしまったのです。アメリカは、ロシアからグルジアを守りませんでした。こんな例を見ても、「アメリカは日本を守るのか?」という疑念には、一理あります。

もう1つ、「日本側の立場」もアメリカの政策に影響を与えることでしょう。たとえば、日中戦争が起こったとき、「米軍を沖縄から追い出せ!」という立場の(鳩山さんのような)政治家が総理大臣だったら? アメリカとしては、「俺らに『出てけ!』というのなら、日本だけで対処できるのだろう。お手並み拝見だ!」と考えるに違いありません。

では、「日米安保」はムダなのでしょうか? そうとも言えません。現時点ですでに、「日米安保」は有効に機能しているといえます。たとえば、2010年の「尖閣中国漁船衝突事件」を思い出してみましょう。あのとき中国は、自分たちに責任があるにもかかわらず、日本に対して次々と制裁を打ち出し、私たちを仰天させました。9月7日に事件が起こったあと、中国は一貫して超強気の態度を崩さなかった。しかし、9月末ごろになると、一気にトーンダウンしていきます。考えられる唯一の理由は、アメリカがはっきりと日本の味方についたことです。

当時

・スタインバーグ国務副長官
・クリントン国務長官
・ゲーツ国防長官
・マレン統合参謀本部議長
・オバマ大統領

などが、相ついで日本を支持する声明を出しました。特にアメリカが「尖閣諸島は安保条約の適用対象」と宣言した効果は大きかった。中国はアメリカと戦いたくないので、おとなしくなったのです。ですから、「日米安保」は事実として役に立っている。もしアメリカが2010年9月、「尖閣は日米安保の適用対象外」と宣言すれば、尖閣はとっくに中国のものになっていたでしょう。

大切なのは、相手に「何を信じさせるか?」である

先日、天才地政学者の奥山真司先生が、「アメリカ通信」で面白い話をされていました。

孫子は、戦略というのは究極的に「マインドゲーム」である、としていること。

 

つまり戦略として最高なのは、そもそも、相手に初めから戦おうとする意識を持たせないことだ、ということになります。

 

これはまさに物理的な城や兵器に対する攻撃ではなくて、あくまでも働きかける対象は相手の「マインド」。

 

もっといえば、相手の脳の中を操作してしまえば勝ち、ということになります。

 

「孫子が脳内操作をススメている?」

全文はこちら。

戦略とはマインドゲームである。

私は、「さすが再臨の諸葛孔明!」と思いました。すでに書いたように、「尖閣有事の際、アメリカは日本を守るか?」は、「実際に起こるまで誰にもわからない」。しかし、それは「最重要」ではないのです。大事なのは、「尖閣を攻めたら、アメリカは動くだろうか?」と中国上層部が考えたとき、「動く可能性が高いと信じさせること。

だから、↓は非常に意味がある。

「中国から攻撃あれば尖閣を守る」米軍司令官が言及

朝日新聞デジタル1月28日(木)11時29分配信

 

米太平洋軍のハリス司令官は27日、ワシントンで講演し、中国が領有権を主張する尖閣諸島について「尖閣諸島が中国から攻撃されれば、米軍は同諸島を防衛する」と明言した。

 

米国は尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象になるとの立場をとってきたが、「中国の攻撃」に言及し、米軍による尖閣諸島の防衛に踏み込んだ発言は異例だ。

この発言を中国のトップが知れば、「そうか、アメリカは尖閣を守ると宣言しているのか…。じゃあ、手出せんな…」と考えることでしょう。というわけで、ハリス司令官の一言で、日本は少し安全になりました。

しかし、安心はできません。「日本とアメリカを分断すれば、覇権は中国に転がり込んでくる」と信じる中国は、相変わらず「反日プロパガンダ」を継続しています。私たちは、油断することなく、注意深く、傲慢にならずに進んでいきましょう。

image by: Wikimedia Commons

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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