絞られてきた本命。米大統領候補者「ザ・ビッグ5」ってどんな人?

 

クルーズ

キリスト教右派やティーパーティ的草の根右翼に支持があるクルーズは、ブッシュ息子政権のような単独行動主義」に走る可能性が高い。

ISをいかにして打ち負かすのか? 「圧倒的な空軍力で彼らを1人残らず完全に破壊する。絨毯爆撃だ。湾岸戦争では37日間に1,100回の空爆をやったが、それと同じような猛爆を行えば、後にはほとんど何も残らない。次にクルド族を武装させる。その上で、米軍を送って、くだらない『交戦規則』などに縛られずに戦わせる」。爆撃で市民が犠牲になるのは避けられないのではないか? 「ISの部隊だけを爆撃する」。ISが町から離れて砂漠で野営していると思っているのか?

絨毯爆撃は彼が最も好む戦術であるらしい。彼は、オバマ政権が主導してようやく国際的に成立したイランとの核合意に反対していて、大統領に就任したらすぐにこれを廃棄すると公約している。そんなことをすれば、イランの核開発が再び野放しになり、核合意を支持した各国が怒り出すに決まっているが、ウォルト教授の推測では、クルーズは「知ったことか。イランを絨毯爆撃すれば一発で問題は解決する」と考えている。

ところが不思議にも彼は、シリアの反体制勢力に武器を与えてアサド政権を崩壊させようとすることには「反対」を表明している。

いずれにせよ、クルーズのキャンペーンでは、対外政策の位置づけは低く、共和党お得意の「オバマは弱腰だ」「強い軍事力が必要だ」「移民には反対だ」程度のお題目しか用意されていない。しかもクルーズ陣営の対外政策の責任者は知り合いの美術史の先生が務めているという。上記のような絨毯爆撃発言は単にその場の思い付きで右翼受けすることを口走っているだけで、整合性のある政策は何も持っていないと見るべきだろう。

ルビオ

ルビオはまさに「無邪気なネオコン」で、ブッシュ政権をアフガニスタンとイラクの戦争に引きずり込んだネオコンたちの牙城であるシンクタンク「アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)」とその周辺が対外政策のアドバイザーを務めている。実際、ルビオのキャンペーン用のウェブサイトはトップページの「新しいアメリカの世紀に向かう心構えはできているか?」という問いかけで始まる。

ネオコン連中はルビオを、ブッシュ息子やサラ・ペイリンと同じく、情報に疎くてナイーブな人物と捉えていて、彼らの極端な世界観を吹き込んで操作するのに格好の対象と見ているのだろう。そんなルビオが大統領になればブッシュ息子の二の舞いになるのは確実で、米国はネオコンが中東はじめ世界に撒き散らした害毒の悲惨な結末から何一つ学ばなかったのだろうかと、全世界を落胆させることになる。

イランの脅威を強調する点ではクルーズと同じだが、IS壊滅に関しては今オバマが迷いながら遂行している政策と余り代わり映えはしない。中国については、経済関係は大いに強めるが、中国の人権侵害には厳しい態度をとり、またサイバー攻撃は封じる。TPP は賛成で、推進する。要するに、ここにも整合性のとれないままの混沌がある。

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