安倍政権のイメージ操作か。北朝鮮が打ち上げたのは衛星ロケットだった

 

北に核・ミサイル開発を止めさせる簡単な方法

さて、そのように北のミサイル大騒動を理解し、それが必ずしも米国に対するICBM能力を獲得しつつあることを意味しないことが分かったとしても、北が核爆弾とICBMを開発しているのは事実で、これをどうしたら止めさせることが出来るかというのは大問題である。

しかし、結論は簡単で、これまでの「6カ国協議」の論理──北が核開発を放棄すれば、南北中米による和平協定協議とそれに連続する米朝国交正常化交渉に入ることが出来るという「核放棄=入口論を転換することである。それと並行して、日本政府も、拉致問題の「解決」(何を以て解決とするのかの定義不明のまま)を最優先する「拉致問題=入口論を止めなければならない

カナダのジャーナリスト=グイン・ダイヤ-は2月10日付ジャパン・タイムズの「ピョンヤンの合理的な抑止力」と題した論説で、「北朝鮮は、米国の核兵器の暗黙の脅威の下でほぼ70年間、暮らしてきた。米国は北に対して核を用いないとは一度たりとも約束してこなかった。北がもっと早く核を開発しなかったのはむしろ驚きなのだ」と述べている。

北朝鮮の核・ミサイル開発問題の核心はまさにここで、朝鮮戦争当時、朝鮮派遣米軍の指揮をとっていたダグラス・マッカーサー司令官が劣勢挽回のため、北朝鮮軍を支援する中ソ両軍の中国東北地方にある軍事拠点を潰すため、原爆投下を含む空爆の拡大を再三にわたり主張、トルーマン大統領と対立して解任される事件が起きて、世界は「米国はいざとなれば通常戦争でも核兵器を使うかもしれない恐ろしい国なのだ」と思い知る。それでスターリンのソ連も、その支援を受けた毛沢東の中国も、独自核開発を急ピッチに進め、金日成の北朝鮮もまた1956年にソ連との間で原子力開発協力協定を結んでその後を追い始めたのである。

冷戦下の世界が核軍拡競争にのめり込んで行く引き金を引いたのがマッカサー元帥であることは疑いのない事実で、ダイヤーが言うようにそれ以来60余年、北朝鮮は「いつ米国から核をブチ込まれるか」という恐怖に苛まれながら生きてきたのであり、飢えようがどうしようが軍事統制国家であることにしがみついてきたのである。ダイヤーは、北が先月の水爆らしきものの実験の後に発した1月6日付の声明を引用する。

共和国は米国の凶悪な核戦争の企図を粉砕し、朝鮮半島の平和と地域の安全を保障するために努力の限りを尽くしている真の平和愛護国家である

政治的孤立と経済的封鎖、軍事的圧迫を加えた揚げ句、核惨禍まで浴びせようと狂奔する残虐な白昼強盗の群れがまさに、米国だ

今回の水爆実験が最も完璧に成功することによって、共和国は水爆まで保有した核保有国の前列に堂々と立つことになり、わが人民は最強の核抑止力を備えた尊厳高い民族の気概をとどろかすことになった

(朝鮮中央通信訳)

これを受けてダイヤーは「本当に彼らは米国に核兵器で狙われるかもしれないと怖れていて、それを防ぐには自分で水爆とICBMを持つしかないと思っているのか。これを純粋に防衛的手段だと思っているのか」と自問し、そして「もちろんそうだ」と自答している。

北を68年間支配してきた金一族は、短気で衝動的であるようには見えるけれども、気が狂っているわけではない。彼らが戦争を始めたことは一度もないし(負けると分かっているからだが)、今の3代目も核戦争を始めようとしているわけではない。北は、1年に数発の爆弾を作る以上の資源を持っていないし、何時かはICBMを持つかもしれないがそれが確実に撃ち落とされないようにする技術は持っていない

北の体制エリートも一般国民も、韓米日に核兵器を撃ち込めば、数時間後に自分らが全滅するであろうことを知っている。米国は数千発の核兵器を持っていて、その内の小型の数十発を使うだけで北の支配層のエリートを全滅させるだろうが、北はそれを防ぐ手段を持っていない

数発のさほどハイテクとは言えない核兵器は、ピョンヤンに米国やその同盟国を核攻撃するための実用に足る能力を与えるものでなく、そこそこに信頼しうる核抑止力を与えるものである。主要な核大国に数発の核兵器を撃ち込むのは自殺行為である。しかし、その数発の核兵器は、核大国の(先制的な)攻撃に対する完璧な抑止力とはなりうる。なぜなら、北の数発は「墓場からの復讐」の能力を持つからである」

私もほぼ同意見だが、こういう見方は日本では全く馴染みのないもので、ちょっと口にしただけで「お前は北朝鮮の味方をするのか!」という怒号に取り囲まれそうである。が、問題は敵か味方かという単純な話ではなくて、相手はどう物事を捉えているのかを冷静に分析しないと、事態の悪化を防止し解決の糸口を見つけていくことはできないという戦略的理性を保つことである。

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