2歳の娘に「死ね」。豹変した妻をどうにかしたい夫、石田衣良の回答は

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さまざまな質問に石田衣良さんが答えてくれるメルマガ『石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」』。今回のお悩みは、娘を産んでから妻の心身状態がよくないが、どうしたらよいのか? というもの。解決が難しい問題のように思えますが、石田さんからの回答やいかに…?

娘が生まれてから妻の心身状態がよくないのですが…

Question

shitumon (1)共働きで同い年の妻と保育園に通う2歳の娘がいます。娘が生まれてからずっと妻の心身状態がよくありません。最近は娘に暴言を吐く日々が続いています。「お前のせいで人生めちゃくちゃだよ」「お前なんていらない」「死ね」と、聞くにたえません。

私が娘をかばうと「あんたが甘やかしすぎだから子どもがだめなんだよ」「どうして子どもばかりかばうんだよ」と矛先が私に向き、口論となります。最後は「離婚か、私が死ぬしかないね。こんな価値のない人間は生きていても意味がない」と自暴自棄になります。私は子どもをまずケアするのが当然だと思うのですが、幼少期に両親からないがしろにされた過去が影響し、自分の方が大事にされたいようです。

精神科では鬱病ではないと診断されました。本当は私がもっと話を聞いてあげることが大切ですが、娘の日常の世話に加え、攻撃的な妻への嫌悪感により、余裕がありません。家庭での毎日が緊張感だけの日々になっており、苦しいです。

石田衣良さんの回答

これねえ、もう解決の糸口がわかっているんですよね。その幼少期に、自分の母親にやられたことを奥さんは繰り返してしまっているんですよ。精神科では鬱病ではないというふうに言っているかもしれないけれど、その子どもの頃のトラウマが残ってしまっているので。だからといって何もしないっていう医者ではだめなので、別の精神科に行くのがひとつ。

あとは、奥さんと同じようにトラウマを抱えながら子育てをしている人の集まりがあるので、そこに一緒に行ってください。「自分はこういうことがあって、どうしても子どものことが愛せないんだけど……」と同じように悩んでいる人がたくさんいるはずです。それが珍しいことでもないし、「自分は価値がない」ということでもないとちゃんとわかるので。

それをやらないと、いつまでたっても同じことを繰り返すし、娘に自分のつらかったことをして復讐してしまいます。そうすると娘もまた同じようになって、負の連鎖でつながっていってしまうので、そこを断ち切るための努力をしてほしいんだよね。そういう会は、大きな街だったらどこにでもありますから。そこに繋がってみてください。それをやるとかなり変わってくると思います。そのうえで、精神科でちゃんともらった薬を飲むこと。

彼女の両親には言っても無駄だし、距離を置かないと。「あなたのせいでこんな目にあった」って一回言って断絶できればいいけど、その後も、関係が続くと面倒くさいじゃない? だから親は無視するか、距離を置いて離れたほうがいいよね。彼女のためには。

心配なのは、やっぱり娘さん。まだ2歳でしょう? 2歳の娘に「お前はどうしようもない」みたいなことを言っても、まだ人格とか出てきてないから、どうしようもないも何もわかんないんだよね。だから娘の存在自体がだめということなので、もう彼女の側がはっきりと病気ですから、そこをケアして、同じような人と繋がる会に入ってください。検索すればネットにいっぱい情報があるので、そこに行って会員になることと、薬をもらうこと。

あなたは本当に大変だと思うんだけれど、彼女のフォローをしつつ、その2歳の子のお世話をしてあげてほしいな。でもやっぱり厳しいね。2歳の子どもに「死ね」って言っている母親って、もうしんどいじゃない? 見るからに。でもそんなの本当にざらにあることなので。

「自分に価値がない」とかではなく、いかに大勢の女性がだめな親の問題で苦しんでいるかっていうのを現場で見たほうがいいよね。それで、みんなの前で泣きながら話せばいいんですよ。うちの親がいかにひどかったかって。私の責任でも何でもないのにこんな風に育てられてしまって、いかに苦しんでいるか、そういう告白を皆の前でしたほうがいいかもしれないね。必ず皆もちゃんと聞いてくれるから。同じ境遇にある人達なのでね。

劇的に変わるみたいなことはないんだけれど、少しずつ乗り越えて。でも生きていくうえで、今負っている傷を修復できたらものすごく強い力になります。それができた人は、素晴らしく強く明るくなれるので、そこを目標にこれから5年、10年というレベルの時間をかけて、ゆっくり生き直してみたらどうかな。それを奥さんにしてあげられたら一生かけがえのないパートナーになれるので、そこを目指して少しずつがんばってほしいですね。

あなたもうまく息を抜きながら、奥さんのフォローをしてあげて下さい。

source: 石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」

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石田衣良石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」
著者:石田衣良
本と創作の話、時代や社会の問題、恋や性の謎、プライベートの親密な相談……。
ぼくがおもしろいと感じるすべてを投げこめるネットの個人誌です。小説ありエッセイありトークありおまけに動画も配信。週末のリラックスタイムをひとりの小説家と過ごしてみませんか?メールお待ちしています。
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