抵抗勢力~トルコ、サウジ、イスラエル
しかし、停戦、和平に抵抗する勢力がないわけではありません。シリア内戦は、スンニ派の大国トルコ、サウジアラビア等と、シーア派の大国イランの「代理戦争」でもあります。
アサドは、シーア派のアラウィー派で、イランから支援をうけている。
当然スンニ派諸国は、今回の停戦に反対でしょう。特にトルコは、既にシリア領内に軍隊を入れています(名目は、クルド人勢力の拡大を阻止するため)。
今回の米ロ合意前の記事ですが(日付に注目)。
シリア停戦実現に暗雲 トルコ、2日連続のクルド砲撃
AFP=時事 2月15日(月)11時46分配信
【AFP=時事】トルコは14日、シリア国内のクルド系組織への新たな砲撃を実施した。
シリア情勢をめぐっては同日、米国がロシアに対して反体制派への空爆停止を要求。
関係各国が12日に合意した「1週間以内の停戦」の実現に暗雲が漂ってきた。
今後もっとも注目すべきはトルコの動きです。
しかし、アメリカがトルコを支持しなければ、NATOからの支援も望めず、トルコは、アサド政権を支援するロシアと単独で戦うことになってしまう。そうなるとトルコに勝ち目はなく、エルドアン政権の「自殺行為」になってしまう。「無謀」ですね。
とはいえ、歴史には指導者の「愚かな行動」が満ち溢れているので、どうなるかわかりません。エルドアンが、冷静な判断を下すことを望みます。
最近サウジアラビアも、「シリアに軍隊を派遣する」と宣言しましたが、アメリカにとめられたそうです。
さて、今回の停戦合意にもっとも反対なのがイスラエルでしょう。アメリカは、イランと和解した。そして、反イスラエルのアサド政権は延命しようとしている。これはイスラエルにとって悪夢以外の何物でもありません。
シリア内戦は終わるか?
というわけで、状況を整理しておきましょう。
・シリア内戦を終わらせたい国、勢力
アメリカ
ロシア
欧州
イラン
シリア・アサド政権
反アサド派の一部
・シリア内戦をつづけたい国、勢力
トルコ
サウジアラビア
その他のスンニ派国家
イスラエル
反アサド派の一部
こう見ると、アメリカとロシアが「和平を望んでいる」ことが最大のファクターになります。
ウクライナの内戦時もそうでした。ロシアのクリミア併合は、2014年3月。その後、ウクライナ新政府と東部「親ロシア派」の内戦が勃発した。2014年9月の停戦合意はダメになりました。しかし、2015年2月の停戦合意は、いまに至るまでつづいています。これはなんでしょうか?
15年2月の停戦は、プーチン、ドイツ・メルケル首相、フランス・オランド大統領、ウクライナ・ポロシェンコ大統領の合意によって実現しました。アメリカは当初、これをぶち壊したかったようですが、翌3月に「AIIB事件」が起こり、「まあ、ウクライナはいいか。対中国の方が大事だ」となった。
シリアの場合も、アメリカが「内戦継続を望まない」ことが決定的です。1回目でうまくいくかはわかりませんが、全体的にシリア内戦は終息にむかっているといえるでしょう。
5年間の内戦で25万人の犠牲者が出たといいます。シリアに平和が訪れることを、心から願っています。
image by: Wikimedia Commons
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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