狙いは中国「孤立化」か。米国が、宿敵・キューバと和解した意味

 

アメリカの大戦略は、「中国孤立化」

こう見ると、アメリカ外交の変化と流れがはっきり見えてきます。東欧を見ると、ウクライナ問題を解決し、ロシアと和解した。中東を見ると、イラン問題、シリア問題を解決した。中南米を見ると、キューバと和解した。これは、一体なんなのでしょうか?

米中覇権争奪戦」が起こっているということです。アメリカは、「世界中の反米国家」と和解していますが、覇権に挑戦している中国とだけは和解していないのです(中国の支援をうけて存続している北朝鮮とも和解していない)。なぜ、中国以外の反米国家と和解するのでしょうか?

1つは、ロシア、シリア(アサド)、イラン、中国と同時に戦うと、力が分散するからです。戦うなら、敵国を一国にしパワーを集中させて取り組んだほうがいい。

もう1つは、戦争(戦闘)の前に、「孤立化戦争」が行われるということです。日本の歴史を振り返ってみましょう。1933年、日本は、満州国問題でもめ、国際連盟を脱退。この時点で、世界的に孤立していました。1937年、日中戦争がはじまった。中国は、アメリカ、イギリス、ソ連から支援を受けていた。こんなもん、勝てるはずがありません。

日本はなぜ負けたのでしょうか? 人によって答えはいろいろだと思いますが、私は「孤立したから負けた」あるいは、「孤立させられたから負けた」と答えます。そう、「孤立したら負ける」のです。それで米中は、「孤立化戦争」をしています。

2015年3月に「AIIB事件」が起こった時点で、明らかに中国が優勢でした。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、イスラエル、オーストラリア、韓国など親米国家群がアメリカを裏切ったのをみれば、誰も否定できません。中国は、「チャイナマネー」をもって、世界の国々を懐柔していた。

それでアメリカは、「経済情報戦を開始し1年間で中国経済をボロボロにしました。「AIIB事件」が起こった頃、世界では、「中国経済の成長は鈍化しているが、まだまだけん引役」という論調が圧倒的に多かった。ところが「AIIB事件」後は、毎日毎日「中国経済、もうだめだ!」「ハードランディングは避けられない」など、ネガティブな報道一色になっています。情報は、事実であることが多い。しかし、情報が事実をつくることもあるのです(例、日経が「A社はヤバい!」と書けば、必ず株は下がる)。

アメリカは、こうして中国の武器「チャイナマネー」を奪った。そして、「反米の砦」キューバを懐柔し、中南米取り込みに動いていく。アメリカがキューバとの和解に動いているのは、「中国に対抗するため」なのです。

日本は、「米中覇権争奪戦が行われている」ことを1日も忘れることなく、用心深く動いていく必要があります。

日本は、世界から「孤立」して負けました。ですから、「孤立する行動」は、慎重に避けていく必要があります。どうすれば「孤立」を避けることができるのでしょうか? これは簡単で、「これをやると孤立するだろうか?」と自問してみればいい。個人でもそうですが、我欲に支配されると孤立することになります。

 

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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