現実味を帯びてきた、日本が米中「代理戦争」に利用される日

kitano0420
 

過去にグルジアやウクライナをけしかけ、事実上の「代理戦争」を仕掛けたとされるアメリカ。「日本もいつか同じように利用されるのでは…」と思ってしまうのも無理はありません。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者の北野幸伯さんが、そんな不安を抱く読者からの質問にシャープに答えています。

アメリカは、日本を北朝鮮、中国征伐に利用するか?

読者のMさまから、興味深いメールをいただきました。

北野幸伯 様

 

初めてメールをしたためております。いつもRPEジャーナルを深い興味とともに感嘆をもって拝読させて頂いています。

 

私は全くの素人で政治にも疎く、メルマガなどで読む程度の知識しかありませんが、今日いつものように拝読していてさらにいつも以上の危惧を感じてしまい、不安にも駆られて宜しければ聞いて頂けるだけでもと、こうしてキーを叩いております。

 

いきなりですが、トランプ氏の3つの発言について、あれはこの先、日本と中国もしくは北朝鮮とを(代理)戦争を実際にさせることを目指しているのではないんでしょうか。

 

相手が北朝鮮となったとしても、当然中国もそのバックに着きますし、そうやって中国の国力を弱まらせる、あるいは世界他国から非難させるなどに向かわせるため、日本が彼らと戦争しやすく、しかもそうなってももう、アメリカが直接関わらなくて済む体制を整えてアメリカが何のダメージもなく中国を弱体化させるシナリオとなっているような気がします。

 

(中略)

 

どうでしょう。アメリカがそうと決めて、この先その方に進ませれば、日本なんてあっという間に手のひらで転がされて、リアルの戦争にまっしぐら、なんてなりそうな気がします。
(以下略)

全文は、「おたよりコーナー」で掲載させていただきます。Mさんが7年間アメリカに住んで感じたことなどが書かれていて興味深いです。是非ご一読ください。

さて、

日本と中国もしくは北朝鮮とを(代理)戦争を実際にさせることを目指しているのではないんでしょうか。

アメリカが直接関わらなくて済む体制を整えてアメリカが何のダメージもなく中国を弱体化させるシナリオ

とのことです。つまり、「アメリカは直接戦わず日本を中国北朝鮮にぶつける」というのです。これ、「善悪論」は抜きにして、「大いにありえる」と言えるでしょう。アメリカが悪い国だからではありません。「そういうもの」なのです。

「バランシング」と「バックパッシング」とは?

ここにA国がいます。B国が経済力と軍事力を増し、大いなる脅威になってきました。A国は、「B国を叩こう」と決意していますが、この時大きく2つの方法があります。

1つは、「バランシング」(直接均衡)と呼ばれる方法。これは、A国が主導権を持ってB国を叩くのです。国内では軍事力を増強し、国際社会では「反B国同盟」「B国包囲網」形成を主導します。

もう1つは、「バックパッシング」(責任転嫁)と呼ばれる方法。これは、自分で戦いを主導せず、「他の国とB国を戦わせる」のです。たとえば、A国がB国をつぶすために、C国やD国を使ってB国を叩かせる。

Mさんが心配されている、「アメリカは、日本を中国や北朝鮮と戦わせるのではないか?」というのは、「アメリカは日本をバックパッシングするのではないか?」と言い換えることができます。

ところで、大国は、自分が中心になって戦う「バランシング」と、他国に戦わせる「バックパッシング」、どちらを好むのでしょうか?これ、他国に戦わせるバックパッシングを好むのです。世界でもっとも尊敬されているリアリストの権威ミアシャイマー・シカゴ大学教授は、なんと言っているか?

事実、大国はバランシングよりも、バック・パッシングの方を好む。なぜなら責任転嫁の方が、一般的に国防を「安上り」にできるからだ。
(大国政治の悲劇 p229)

どうですか、これ?

「日本はもっと金をだせ!」
「韓国はもっと金をだせ!」
「NATOはもっと金をだせ!」

と叫んでいるトランプさん好みのセオリーではありませんか? 「大国は、バックパッシングの方が好き。なぜなら、そっちの方が『安い』から」(!)だと。

これを、アメリカ、中国とアジア諸国の関係に当てはめてみましょう。「アメリカは、直接中国や北朝鮮と対峙する(バランシング)より、日本、韓国をぶつける(バックパッシングの方を好む。なぜなら、そっちの方が『安上り』だからだ」となるでしょう。つまり、Mさんの懸念は、「常識的にありえる」のです。

繰り返しますが、これは「アメリカが悪い国だから」ではありません。「どこの国もやっていること」なのです。

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