現実味を帯びてきた、日本が米中「代理戦争」に利用される日

 

1.米中を天秤にかけるような、「二股外交」は控えること

安倍総理は2015年4月、「希望の同盟演説」で日米関係を劇的に改善させました。ところが翌月、中国に3,000人の訪中団を送り、日中関係改善にも動いた。この時、米中関係は「南シナ海埋め立て問題」でかなり緊張していたにも関わらずです。

この「不誠実」な動き。世界的常識では、「日本はアメリカと中国を戦わせるつもりだ!」と見られます。つまり、「日本はアメリカを対中国で利用しているだけだ!」と。

日本は、韓国の「二股外交」を批判します。しかし、「自分たちも同じことをしている」現実もしっかり認識した方がいい。日本政府は、アメリカ、中国との関係において、「いつもアメリカの味方であると思われる言動を続ける必要があります。

2.日本は、中国を過度に非難したり挑発してはいけない

これは「バックパッシング」を避けるためです。では、中国との関係は、どう距離を取るべきなのでしょうか?

日本は戦略的に、「アメリカのオウム」になるべきです。アメリカが「南シナ海の埋め立ては国際社会の脅威だ!」といえば、「そうだ!そうだ!脅威だ!」という。アメリカ以上の激しさで中国を批判するべきではありません

これ、なんとも「なさけない」話ですが、「いつもアメリカに主導権を握らせること」が大事なのです。日本が中国バッシングの主人公になると、「梯子をはずされる」可能性が出てきます。

3.アメリカの許可を得て、「自主防衛能力」を高める

ところで、アメリカの行動を見て、「なんと狡猾な!」と思いましたか? 実をいうと、アメリカ側も日本について、「狡猾な!」と考えていること、知っておく必要があります。

世界3大戦略家ルトワックさんの『中国4.0』に面白い記述があります。

過去6年間の日本の政策の主軸は、「チャイナ2.0」への対抗にあった。「チャイナ2.0」は日本にとって大きな挑戦であった。

 

これが、日本の領土の保全に対する挑戦でありながら、日本は国家安全保障面でアメリカから独立していないからだ。

 

だからこそ、中国からのあらゆる圧力は、アメリカ側にそのまま受け渡される形となった。いわば、アメリカへの「バックパッシング」、つまり「責任転嫁」である。
(p148)

ここでルトワックさんは、「日本はアメリカをバックパッシングしている!」と指摘しています。言われてみれば、確かにそのとおりですね。もちろん日本としては、「そういう状態にしたのは、あんた(アメリカ)だろう!」と主張できます。

しかし、戦後70年が経って、アメリカも弱ってきた。アメリカは、「日本も自国の防衛にもっと責任を持て!」と態度を変えてきている。ですから、感謝して「自主防衛能力」を高めていったらいいのです。

以上、注意点を挙げました。日本は、中国から尖閣、沖縄を侵略されないように、アメリカからバックパッシングされ中国と戦争にならないように、きわめて用心深く、慎重に進んでいく必要があるのです。

image by: 首相官邸

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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