老朽マンション建て替え「規制緩和」報道が与えた大きな誤解

 

自治体で、市街地再開発事業の都市計画決定を受けるということは、並大抵のことではありません。高度利用による公益性が確保でき、このスキームで建て替えができる可能性がある団地は、本当に数えるほどだと思います。1つでも可能性があるなら、法改正は意味があるのですが、それに惑わされる管理組合が出ることが心配です。

税金を使うには、それだけの価値があるかが問われますし、もう、団地内の私的自治の世界の話ではありませんから、議会や都市計画審議会の審議に耐える合理的な理由が必要になります。

建替えに反対する人は、当然、議員に陳情するでしょうから、いろいろな思惑を持った外部の人も巻き込んで、コミュニティは完全に分断すると思います。役所の担当者の方の本音として、実際には、内部に1/3近い強硬な反対者である市民がいるような状況で、とても都市計画決定などできません。むしろ、全員賛成に近い合意形成が必要になると思う…と。

ですから、どうぞ、建替えが簡単になったなんて誤解しないでくださいね。郊外の団地が、また、建替えの夢をふくらませて、高いお金をコンサルに払って、結局、実現できない立派な絵と、内部の対立が残っただけということにならないでくださいね。何年にもわたって、建替えコンサルにお金を払い、環境整備に必要な工事が放置されている団地をみると、なんか、切なくなるからです。

その分のエネルギーとお金を、今の団地をよくすることに使ってほしかったな~と。

image by: Shutterstock

 

まんしょんオタクのマンションこぼれ話
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