アメリカは「永遠」の同盟国なのか? 歴史に学ぶ敵と味方のボーダーライン

 

「核拡散防止条約」(NPT)は、アメリカがつくった「秩序」

アメリカ、イギリス、フランス、ソ連(後ロシア)、中国は、いわゆる「戦勝国」と呼ばれます(中国建国は1949年なので、「戦勝国」とよぶのは厳密にいうとおかしいですが、ここでは深入りしません)。彼らは「戦勝国」の特権として、国連安保理で「拒否権」をもっています。

また、「俺達戦勝国で核兵器の所有を独占しよう!」と決めた。そして1968年、「核拡散防止条約」(NPT)を作った。これは、主に「日本とドイツの核保有を阻止するため」に作られたのです。

NPTは、全世界を網羅できたわけではありません。インド、パキスタン、イスラエルは、NPTに参加せず核保有を実現した。北朝鮮は、NPTに参加していましたが93年に脱退。過酷な制裁を受けながら、核保有を実現した。

それでも、NPTには190か国が加盟。190か国が「核兵器は保有しません!」と宣言している「秩序」は、戦勝国、特にアメリカにとって「大成功」といえるでしょう。

日本が「核武装」を決意すれば、アメリカが中心につくったこの「世界秩序を破壊することになります。日本は、「中国や北朝鮮が核をもっているので仕方ない!」という正論を主張するでしょうが、正論で勝てるわけではありません。(そういう論理なら、韓国、ベトナム、フィリピンなども、核武装を主張できる)。

普遍的な正義を主張するのなら、「すべての国が、平等に核兵器をもたないべき」あるいは、「すべての国が、平等に核兵器をもつべき」となるでしょう。しかし、これは子供の論理です。

もう一度。日本は、反日国家中国に対抗するため、「核武装」したい。しかしそれをやると、アメリカと4大国がつくった「世界秩序」の破壊者となる。「中国に対抗すること」が目的だったのに、気がついたら「中国だけでなくアメリカと世界を敵にまわしていた」となりかねない。

戦前も同じことをしました。「ロシアの南下政策に対抗するため」に満州に進出した。ところが気がついたら、ロシア(後ソ連)だけでなく、アメリカを敵にまわし、中国を敵にまわし、イギリスを敵にまわし、国際連盟を敵にまわし、結局、大敗戦です。

その当時、「満州は日本の生命線」などといっていた。結果をみれば逆で、日本は、米英を満州に入れ、ロシアの南下政策に対抗してもらうべきだったのです。

「核武装」については、幸いそこまで盛り上がりをみせていません。しかし、「核は日本の生命線なければ中国に侵略される!」などと政府が言い始めたら、「いつか来た道」「必敗の道」です。

 

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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