アメリカは、自分がつくった「世界秩序」を破壊した
今の世界秩序は、第2次大戦のいわゆる「戦勝国群」がつくったものです。アメリカは、その世界秩序の中で、「強制力をもつ国連安保理で『拒否権』をもつ」という特権的な地位にある。しかし、「唯一の超大国」になったアメリカは、「5常任理事国の一国」という地位に満足できませんでした。
他のメンツをみてください。
イギリス、フランス、ロシア、中国。
アメリカは、「どう考えても、この4国より、俺たちは上だろ!?」と考えた。それでどうしたか? 現在の国際法では、「戦争できる理由」は「二つ」しかありません。一つ目は、他国が攻めてきたときです。この時、「自衛権」を行使して戦うことが、認められています(日本も戦える)。二つ目は、国連安保理が、戦争に賛成したときです。
さて、戦争ばかりしているアメリカ。9.11後の「アフガン戦争」は、「自衛権の行使」という名目で行われました。しかし「イラク戦争」は、同じ理由が使えなかった。フセインは、アメリカを攻撃していませんから。そこで、アメリカは、安保理の「お墨つき」を得ようとした。すると、フランス、ロシア、中国が反対したのです。
結局アメリカは、「国連安保理」を「無視」することにしました。そう、アメリカのイラク戦争は、「国際法違反」だったのです。証拠はこちら。(04年9月16日、朝日新聞)
イラク戦争「国連憲章上違法」 国連事務総長がBBCに
15日の英BBC放送(電子版)によると、アナン国連事務総長はBBCとのインタビューで、イラク戦争を「我々の見地からも、国連憲章上からも違法」と断じた上で、「各国が共同歩調をとり、国連を通して行動するのが最善という結論に誰もが達している」と述べた。
国連では21日からブッシュ米大統領ら各国の元首、首相、外相らを迎えて総会の一般演説が行われる。アナン氏の発言はこれを前に、イラク戦争を国際法違反とする国連の姿勢と、唯一武力行使を容認できる機関としての安全保障理事会の重要性を再確認したといえる。
このことについて、Z氏は、「アメリカは国連安保理を無視したことで大変なことになるぞ」と03年時点で警告していました。05年出版の『ボロボロになった覇権国家』にも書かれています。
私はZ氏の話を聞いたとき、「そんなもんかいな」と本気にしなかった。しかし、今は「安保理無視」の長期的悪影響がはっきりわかります。日本にいるとわかりづらいかもしれませんが、これでアメリカは「正義の味方」の地位から、失脚したのです。そして、「国際秩序を破壊する悪者」になってしまった。
ジョージ・ソロスはいいます。
ブッシュ政権が追求しているアメリカの単独覇権という考えの誤りを、イラクははっきり示している。イラク侵攻は、アメリカがテロとの戦争を進め、世界における支配的地位を維持することをむずかしくした。
アメリカはその地位を失う道を歩んでおり、ブッシュ大統領はわれわれをその方向にはるばると連れてきている。
『ブッシュへの宣戦布告』p77
● アメリカが衰退した理由2
=自らつくった世界秩序を壊した