アメリカの本音、日本の岐路。在日米軍撤退をちらつかす大国の意図

 

アメリカの戦略変更は、日本のチャンス

そうはいっても、これは日本のチャンスでもあります。どんな政党でも、「自分の国は自分で守る必要がある」と言います。しかし、いきなり「わが国は、軍事的自立を目指します!」といって軍拡を始めたらどうなるでしょうか? 「また日本が軍事国家になろうとしている!」ということで、アメリカ、中国、ロシアは、一体化して日本を潰すことでしょう。

しかし、「アメリカを助けるための軍事力強化です」と言えば、少なくとも欧米は反対しません。ですから、「アメリカの都合で日本の軍事力強化が行われる」のはとても良いこと。抵抗にあうことなく「軍事的自立」に近づけるのですから。

そうはいっても、日本は決してアメリカ以上に中国を挑発すべきではありません。なぜでしょうか?

アメリカが中国を打倒する方法は、二つあります。一つは、バランシング直接均衡)。これは、アメリカが主導して、「中国包囲網」を築くのです。もう一つは、バックパッシング責任転嫁)。これは、自分は戦わず、他国と敵国を戦わせるのです。つまり、日本と中国を戦争に誘導するのです。

アメリカは、どっちの道を行くのでしょうか? いまのところ、バランシングしているように見えます。しかし、「バックパッシングの誘惑」はとても強いのです。リアリストの大家ミアシャイマーは、「大国は、(自分で戦う)バランシングより、(他国に戦わせる)バックパッシングを好む傾向がある。なぜなら、そっちの方が『安上り』だからだ」と断言しています。

実際、アメリカに利用された国の例もあります。たとえば08年、アメリカの傀儡国家だったグルジアは、ロシアと戦争し、壊滅的打撃を受けました。結果、アプハジア、南オセチアを事実上失ったのです。14年、アメリカの傀儡国家になったウクライナは、ロシアから支援を受ける東部親ロシア派と内戦状態になりました。ウクライナは、クリミアを失い、ドネツク、ルガンスクも、事実上独立状態にあります。

このように、アメリカにバックパッシングされた国は悲惨な状況にある。「オバマさん、広島に来てくれてありがとう!」ですが、アメリカのバックパッシングには、いつも警戒が必要です。

「日本は、『アメリカ主導のバランシング同盟内で活躍する

このことをいつも忘れないことが大事です。「日本が主導して反中バランシング同盟をつくる!」などと気合を入れれば、「梯子を外される」リスクが出てきます。あくまで日本は、「アメリカを支える妻の役」でいいのです。

ロシアには、「夫は頭、妻は首」ということわざがあります。頭は、「一家の長」という意味。でも、頭は、首の動く方に動きますね。「結局、頭(夫)は、首(妻)にコントロールされている」という例えです。皆さんの家庭もそうでしょう?見た目はあなたが一家の長でも、結局奥さんの要求がいつもかなっているではないですか? 日本も、あなたの奥さんのように。「賢くならなければ」、ですね。

image by: A Periam Photography / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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