アメリカは常に正義なのか。核兵器開発の濡れ衣でイランを叩いた理由

2016.06.03
by yomeronpou
 

イランは、核兵器を開発しているのか?

一つ目の質問は、

そもそもイランの「核兵器製造計画」は米国のイランに対するイチャモンだったと記憶していますが、実際のところはどうなっているのでしょうか。

です。

世界情勢を少しでも追っている人なら、アメリカとイランが10年以上対立していた事実をご存知でしょう(1979年のイラン・イスラム共和国建国時から「ずっと対立している」とも言えます)。

実際、03年4月にイラク・フセイン政権を打倒した後、アメリカ政府の高官たちは、「イランと戦争をする可能性がある」ことを、繰り返し語ってきました。理由は、イランが、「核兵器を開発しているから」。日本人のほぼ100%が、この話信じていると思います。

まず、基本的な話から。みなさん、以下の事実をご存知でしょうか?

  1. イランは核兵器を開発する意向を一度も示したことがない。
  2. アメリカも数年前まで、イランには「核兵器を開発する意図がない」ことを認めていた。
  3. 核兵器開発が「戦争」の理由であるなら、真っ先に攻撃されるべきはイランではない。

まず、「1.イランは核兵器を開発する意向を一度も示したことがない」。

「イランが核兵器を開発している」というのは、欧米だけが言っていること。当のイランは「核兵器を開発する」とは一度も言っていません。「核開発、「原発用」だとしています。

次に、「2.アメリカも数年前までイランには『核兵器を開発する意図がない』ことを認めていた」について。こちらをごらんください。

〈イラン核〉米が機密報告の一部公表 「脅威」を下方修正

 

[ワシントン笠原敏彦]マコネル米国家情報長官は3日、イラン核開発に関する最新の機密報告書「国家情報評価」(NIE)の一部を公表し、イランが03年秋に核兵器開発計画を停止させたとの分析結果を明らかにした。
(毎日新聞2007年12月4日)

どうですか、これ? NIEは、「イランは03年秋に核兵器開発計画を停止させた」と分析していた。

アメリカだけではありません。世界の原子力、核エネルギーを管理、監視、監督する国際機関といえば、IAEA(国際原子力機関)。そこのトップ、日本人・天野之弥(あまのゆきや)氏は、09年12月就任直前になんと言っていたか?

イランが核開発目指している証拠ない=IAEA次期事務局長

 

[ウィーン 3日 ロイター] 国際原子力機関(IAEA)の天野之弥次期事務局長は3日、イランが核兵器開発能力の取得を目指していることを示す確固たる証拠はみられないとの見解を示した。ロイターに対して述べた。

 

天野氏は、イランが核兵器開発能力を持とうとしていると確信しているかとの問いに対し「IAEAの公的文書にはいかなる証拠もみられない」と答えた。
(ロイター2009年7月4日)

どうですか、これ? 09年半ば時点で、IAEAの次期トップが「イランは核兵器開発を目指していない」と断言しているのです。

イランは一度も核兵器保有を目指す意向を示したことがない
アメリカもIAEAもつい最近までそのことを認めていた

という事実。よろしいですね。

それでも、イランは「核兵器保有」を目指しているのかもしれません。私も、断言はしません(ですから、誠神大和さまの「実際のところどうなっているのでしょうか?」という質問に、「絶対こうだ!」と答えることはできません。評論家で、「イランは絶対核兵器を開発している!」あるいは「絶対開発していない!」という人は、はっきりいえば、「ウソ」を言っているのです。そんなことは、わかるはずがありません)。

私に言えるのは、「アメリカの諜報、情報機関もIAEAも、イランは核兵器を開発していないと結論づけていた」という「事実」です。

しかし、イランはひょっとしたら核兵器を開発しているのかもしれない。たとえそうだとしても、イランだけがターゲットにされるのはおかしいのです。なぜか? 次を見てみましょう。

print
いま読まれてます

  • アメリカは常に正義なのか。核兵器開発の濡れ衣でイランを叩いた理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け