アメリカがイランと和解した背景
さて、皆さんご存知のように、アメリカ、ロシア、他4大国とイランは2015年7月、核問題に関して「最終合意」に達しました。これで、イランの「核問題」は、事実上解決したのです(誠神大和さまのメールに、「『2015年2月10日に米国家情報局のジェームス・クラッパー長官は、アメリカ議会の情報関係者に対して、イラン政府が核兵器の開発製造をあきらめた徴候はまったく見られないとつたえた。』とも書かれています」とありますが、この6か月後にアメリカとイランは和解している。つまり、オバマ政権は、クラッパーさんの分析、発言を重視しなかった)。
そして、2016年1月には、対イランの経済制裁が解除されました。イランは、サウジアラビア、イスラエルを敵視しています。それで、イランと和解したアメリカと、サウジ、イスラエルの関係がとても悪化している。
アメリカ、サウジの関係悪化について。産経ニュース2016年4月21日。
オバマ米大統領がサウジ訪問 友好ぶり「演出」も歓迎ムード乏しく 国王出迎えなし、対イラン政策など根強い不満か
【カイロ=大内清】サウジアラビアを訪問したオバマ米大統領は20日、サルマン国王と会談し、ホワイトハウスの声明によると「両国の歴史的な友好と深い戦略的パートナー関係を再確認」した。
しかし、サウジには、対立関係にあるイランに対する米国の姿勢などへの不満がくすぶっており、今回の訪問は両国関係の良好ぶりを「演出」するだけにとどまった形だ。
サウジは、イランの影響力拡大が中東の不安定要因だと認識しており、米国が昨年、イランとの核合意を成立させたことを「裏切り」とみる向きも強い。
(同上)
現地からの報道によると、サルマン国王がオバマ氏を空港で出迎えないなどサウジ側に歓迎ムードは乏しく、オバマ氏が今回の訪問をシリア和平や過激派対策での成果につなげられるかは不透明だ。
(同上)
国王が「出迎えにこない」というのは、重要なシグナルですね。
原油安は、アメリカとサウジの共謀ではない
質問2にいきます。
二つ目の質問は、米国とサウジアラビアの関係は険悪なのに、ロシアのプーチンを叩くために手を結ぶことなどできるのでしょうかという点です。
できません。
最近の原油安には、「二つの陰謀論」が存在します。一つは、「アメリカとサウジが組んで原油価格を下げ、プーチンをつぶしている」というもの。もう一つは、「アメリカのシェール企業をつぶすために、サウジは減産を拒否し、原油価格を下げている」というもの(原油価格の低迷がつづけば、シェール企業は採算がとれず、撤退に追い込まれるという読み)。
原油価格が1バレル110ドル台から一時30ドル台まで大暴落したのには、いろいろ理由があります。
- 長期的にはシェール革命による供給増
アメリカは、40年ぶりに原油輸出を再開した。 - 中国経済減速による、エネルギー需要減少
- 核問題解決で、資源大国イランが世界市場に戻ってきたこと
- サウジが、減産を拒否したこと
などなど。いずれにしても、険悪な仲のアメリカとサウジが、プーチンを潰すために原油価格を下げているというのは、「そんなことないだろう」と思います。