アメリカは常に正義なのか。核兵器開発の濡れ衣でイランを叩いた理由

2016.06.03
by yomeronpou
 

「3.核兵器開発が「戦争」の理由であるのなら、真っ先に攻撃されるべきはイランではない。」

アメリカがイランを攻撃するのは、「核兵器保有を目指しているからだ!」としましょう。ところで、もうとっくに核兵器を持っているやっかいな国がいませんか? そう、北朝鮮

みなさんもご存知のとおり、北は06年10月9日に核兵器の実験を成功させ、世界を驚かせました。

北朝鮮とイランどっちが危険かは一目瞭然です。北朝鮮は、核兵器を保有している。実験もしていて、世界中がそのことを知っている。イランは、核兵器を保有していない。また、核兵器を保有する意志を一度も示していない。どっちが悪いか、「一目瞭然」ですね。

ところが、イラン攻撃の可能性を何百回も公言しているアメリカは北朝鮮は攻撃しないと断言しています。例えば、06年10月12日の毎日新聞。

〈北朝鮮核実験〉ブッシュ大統領「米国は攻撃意思ない」(中略)

 

北朝鮮が核開発の理由に米国からの攻撃を阻止する抑止力を挙げていることに対し、「北朝鮮を攻撃する意思はない」と明確な姿勢を示している、と説明した。

このように、アメリカの行動は常識的に考えるとメチャクチャなのです。「核兵器開発」が本当の理由でないとすると、いったいなぜ、アメリカは「イランバッシング」を続けていたのか?? ありえる可能性を、書いておきます。

1.ドル体制防衛

イランも、フセイン時代のイラク同様、ドル体制に反逆しています。

2.石油、ガス

みなさん、グリーンスパンさんの衝撃発言、覚えておられますか? 曰く、「イラク戦争の理由が石油であることは、誰もが知っている事実である」。

BPのデータによると、イランの原油埋蔵量は、1,570億バレルで、世界4位。また、イランは、天然ガス埋蔵量世界1位。世界有数の資源大国なのです。アメリカは、当然この石油ガス利権を他国に渡したくなかったことでしょう(その後、「シェール革命」で事情は大きく変化しました)。

3.イスラエル防衛

イランが、アメリカと非常に近い(近かった)イスラエルを敵視していることも理由の一つと考えられます。

[ワシントン=犬塚陽介]オバマ米政権は、イスラエルが単独でイラン核施設の攻撃に乗り出す可能性に懸念を強めている。イランが核施設攻撃の報復に打って出れば、原油高騰など世界経済に悪影響を及ぼすのは確実。

 

一方で大統領選をちょうど1年後に控え、米国内のユダヤ票の行方には神経質にならざるを得ない。イランの核問題はオバマ大統領の再選戦略を揺るがしかねない。
(産経新聞2011年11月6日)

4.中国封じ込め

米中覇権争奪戦の観点から見ると、アメリカにとって、イランは非常に重要です。

中東産油国の民衆は、イスラム教徒で概して反米。しかし、トップは、おおむねアメリカと良好な関係を築いていました。とはいえ、中東産油国で反米の国もあります。その代表がイラクとイランでした。しかし、アメリカはイラクを攻撃し、傀儡政権をつくった。残るはイランです。

これは非常に重要なのですが、アメリカがイランに親米反中傀儡政権をつくれればほぼ中東支配を完了したと言えます。すると、どうなるか? 米中関係がいざ悪化してきたとき、中東産油国を脅して中国に石油を売らせないようにすることができる。

中国の方にもそういう危機感があります。そのため、中国は陸続きのロシアや中央アジアとの関係構築に必死になっているのです(アメリカは、イラン政権を打倒して屈服させるのをあきらめ、「和解して味方につける」方針に転換しました)。

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