地下アイドル刺傷。弁護士に聞く、事件を未然に防げなかった理由

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世間を震撼させた「地下アイドルストーカー刺傷事件」。被害女性の容体が心配されていましたが、半月ぶりに意識を回復したという報道がありました。今回の事件はあくまで氷山の一角であり、法改正無しでは今後も同じような悲劇を繰り返すことになりかねません。無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』では、ストーカー被害に遭ってしまった時に取るべき対応について、現役弁護士がアドバイスしています。

ストーカーに遭ってしまったら?

芸能活動をしていた女性がファンの男に襲われ重体となるという痛ましい事件が起こりました。男は殺人未遂と銃刀法違反の容疑で逮捕されています。報道によれば、容疑者は被害にあった女性に対してSNS上で執拗にメッセージを送っており、女性は警察にストーカー被害を相談していたようです。それにもかかわらず今回の事件が起きたのはなぜでしょうか?

ストーカー行為等の規制等に関する法律ストーカー規制法)」という法律があります。これは2000年に施行された法律で、桶川で起こったストーカー殺人事件をきっかけに制定された法律です。この「ストーカー行為」の中には、つきまとい・待ち伏せ・見張り、監視している旨の告知行為、無言電話・連続した電話・FAX、などが挙げられています。

2013年には、逗子で発生したストーカー殺人事件を受けて法改正が行われ、「執拗な電子メール」についてもストーカー行為に含まれることになりました。しかし、FacebookやTwitterなどのSNSを利用した執拗な書き込み等については、ストーカー行為に含まれていません。今流行しているLINEについても、「電子メール」に含まれるか含まれないか微妙なところにあります。このあたりが法律の穴と言われていました。

今回の場合は、容疑者が、女性に対してSNS上で300回以上の書き込みを行っており、女性がメッセージの受信をブロックするまで100日間に渡って行われたそうです。女性は書き込まれたメッセージの内容を持って警察署に相談に行ったものの、書き込みを止めさせて欲しい、という相談の内容であったことから「ストーカー相談とは扱われなかったそうです。この対応に問題はなかったのか、検証が進められています。

なお、このようなインターネット上の現状を踏まえて、自治体によっては県の迷惑防止条例に「ストーカー行為の禁止を追加することで規制に乗り出そうとしているところもあります。兵庫県は2016年7月1日から「改正兵庫県迷惑防止条例」を施行しますが、その中の10条1項5号において、「電子メールその他の電気通信の送信」として、SNSを利用したメッセージの送信についても対応できるものとなっています。コミュニケーションの手段としての電子メールとSNS上のメッセージの送信に違いはないと思いますので、兵庫県の改正は適切ではないでしょうか。今後、ストーカー規制法においても改正が行われる可能性があると思われます。

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