イギリスがEUから離脱すると、世界が混乱することは必至だし、何よりかつての栄光の大英帝国のイメージがますます没落して、10年もしないうちに普通の中流国家とみなされてしまうだろう。大航海時代に栄華を誇ったオランダ、ポルトガル、スペインなどと同じ命運を辿るのではないか。
イギリスは第2次大戦まで約300年近く、世界の覇権を握っていた大帝国だった。アフリカ、エジプト、中近東、インド、中国、オーストラリア、アメリカなど世界中に植民地を持ち「沈まぬ帝国」といわれたものである。その点はオランダやスペイン、ポルトガルなどとは桁が違う偉容を誇っていた。
EU結成の際はドイツとフランスが手を結び主導権をとってしまった。当時のサッチャー元首相は「ドイツにチャラチャラするフランスめ」と嫌味をさんざんいいふらしたものだ。
イギリスは世界中に植民地を作り世界をマネジメントした経験をもつ。また旧植民地から情報をかき集められる情報大国であり、世界の大学の中心であるオックスフォード、ケンブリッジを有する文化、教会、哲学の雄であるところに力の源泉があったのだ。離脱すればこれらの資産・力も失うのではないか。
(財界 2016年6月21日号 第425回)
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