NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は家康の江戸入部について。家康が江戸に居城するようになってから江戸が大発展し、今日の東京があるのは言うまでもありませんが、家康が来る前の江戸はどんな所だったのでしょうか?「ひなびた漁村で荒れ果てていた」という説もありますが、メルマガの著者・西股総生さんは、江戸は以前から関東で最大級の経済都市であり、この説はかなり「盛られている」と反論しています。
今回のワンポイント解説(6月26日)
今回は、家康の江戸入部について。敵を討伐するに時には、敵地の隣に領地を持っている者が先陣にあたり、討滅した敵の領地を戦功に応じて与えられるのが、中世武家社会の慣例であった。家康が秀吉から北条領を与えられたのも、この慣例に従ったまでのことで、別に秀吉がイジワルをして家康を僻地に追いやったわけではない。
ところで、家康が入部した頃の江戸は漁村のような淋しい田舎で、城もボロボロだったという話が、まことしやかに伝わっている。でも、これは家康を江戸幕府の創業者として祭り上げるために「盛られた」話だ。そもそも江戸は、中世を通じて関東でも最大級の経済都市だったし、北条領国では副首都のような位置付けを与えられていた。ドラマでは話をわかりやすくするために、北条氏政は小田原にいるように描かれていたが、実際には江戸城を拠点に外交や戦略の指導に当たることが多かったようだ。江戸城は、小田原城に次ぐ重要な戦略拠点だったのだ。
とはいえ、家康が政権を手にしてゆく過程で、江戸が大発展を遂げたのも事実だ。家康といっしょに江戸に入ってきた家臣達が、歳をとってから「自分が来た頃は、このあたりには何にもなくてねえ」などと書き残すのも当たり前だろう。ほら、東京だって、練馬や杉並あたりのお年寄りは、「戦前はこのあたりも、畑や雑木林ばかりでねえ」と言うでしょう? 江戸城だって、城主の氏政がいない状態で籠城戦をつづけた挙げ句に落城して、略奪にだって遭っているだろうから、建物が傷んでいたのも仕方ないことだった。
そもそも、大名の国替えは、サラリーマンの転勤のような呑気なものではない。文字通りの敵地に乗り込む仕事なのである。家康の場合、関東への国替えとは北条領国の占領を命じられたことを意味する。一部の家臣は、国替えの準備のために国元に戻らなくてはならないが、家康本人は徳川軍を率いて、そのまま関東に駐留しなくてはならない。万単位の軍勢ともなれば、大量の食料や生活物資を消費するわけだから、漁村のようなインフラの整っていない場所に、そもそも進駐できるはずがない。
家康にとって、経済的・戦略的ポテンシャルの高い城と都市を本拠に選べたのは、むしろラッキーだったといってよい。(西股総生)
《今週のワンポイントイラスト》
江戸の荒地を開拓したことにしてもいいじゃない。神君だもの。(みかめ)
文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)
ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組
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第1部「戦国軍事考証から見る城と合戦」 西股総生による講座。
第2部「戦国軍事考証 vs 歴女」 西股総生×磯部深雪×みかめゆきよみで「あのドラマ」を語ります。
2016年7月9日(土)14:00~17:00 新宿クラブツーリズム(アイランドウィングビル)
コース番号 第1部【C2021-912】
コース番号 第2部【C2022-906】
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今週の『真田丸』SNS反応【編集部まとめ】
#真田丸 今回印象的だったのは「豊臣に関わっていない人たちがみんな幸せそうに描かれている」という容赦のない部分である。あれだけ鶴松の死を悲劇的に描いている同じ回で、真田家の一家は皆幸せそうである。唯一、源次郎だけが豊臣に深く関わったせいで、常に苦渋の顔をしている。
— 地雷魚『越天の空』7/9 新潮社より発売 (@Jiraygyo) 2016年6月26日
しかし秀吉のぶっ壊れ具合で目立たなかったけど、大谷吉継も怖いくらいぶっ壊れてますね。あれは西軍につきますわ #真田丸
— まとめ管理人 (@1059kanri) 2016年6月26日
寧さまが受け止めて、子どものように泣く茶々がつらい…。
ぶっ壊れるでなく、泣き喚くでもなく、静かにでんでん太鼓を鳴らす演出もやばい…_(´ཀ`」 ∠)_#真田丸— 高枝景水@若旅コミック乱連載中 (@namazudou) 2016年6月26日
何のセリフも無く、号泣も無く、ただでんでん太鼓の音だけが鳴り響く演出って初めてかも。#真田丸 pic.twitter.com/lGdAs6mVzu
— アキム (@singbe) 2016年6月26日
“鶴松は死ぬだろう”という見解は昌幸も家康も同じなのに、差し入れ先が見事に違ってて。
こういうとこで、”死ぬ””鶴松(秀吉)”じゃなく”、生き残る””家臣”に確実に喜ばれるものを差し入れする家康の人身掌握術のすごさがな。そりゃ負けた家の家臣が臣従するわ。 #真田丸— アサナミ@小夜かわ沼は底無し沼 (@nagi_asanami) 2016年6月26日
まだ鶴松存命中に葬儀の相談を始める。利休を追い落とす機を逃さず畳み掛ける。「本当に手を汚すということ」を知る。#真田丸 の大谷吉継、義だけの男ではない。底知れぬ…面白い。
— ぬえ (@yosinotennin) 2016年6月26日
「商人」の最期が切腹…ってよく考えると凄いよね…という事を改めて思った、どこまでも生臭い「政商」にして、その業の深さ故、余人の辿り着けない領域にまで至れた「茶聖」でもある利休という男の白装束。業の深さがその人の輝きと比例するところのあるこのドラマを体現する一人でしたね。 #真田丸
— 道人 (@dojindo) 2016年6月26日
茶々が泣き出したトコで貰い泣きしそうになった。寧々さんに抱き締められて漸く泣き出すあたり、転んだ時には泣き出さないのに、お母さんに慰められた途端に泣き出す子供みたいだなぁ。
子供のまま心を凍らせたお人か。— すみれ (@violet221) 2016年6月26日
胸が苦しくなる、秀吉と淀殿の悲しみ。
この寵愛ぶりが、のちの秀頼への偏愛に繋がって行く。豊臣の破滅への伏線をバシバシ感じる。
亀裂が入る音が聞こえる様で、怖くも面白くなってきた!来週は松岡茉優ちゃん登場だよ!!#真田丸
— じゅにー (@junny0413) 2016年6月26日
#真田丸 豊臣政権の行く末を昌幸パパと家康ザタヌキに交互に語らせたのが…関ヶ原で明暗を分ける因縁の2人、リスク認識は共通してるってところをちゃんと視聴者に説明してるのがダイナミックでしたなあ
直後に相見えてキャラの違いを際立たせてるのがwww— ◎▼□× (@zrou_chakb) 2016年6月26日
鶴松の死は産んだ淀さまにとっては当然ショックな出来事だけど、ねね様にとっても夫の跡継ぎを失い、直系の後継者を失ったことになるために、豊臣家のことを考えたらそらもう大ショックだし痛みも感じていると思います。だからこそ淀さまの痛みを分かち合うことができる人なのでは…と。 #真田丸
— トメ (@tome_3) 2016年6月26日
茶人であり堺の商人であり、そして死の商人であることを「業」と言った千利休の最期が、悪気ない茶々の行動によるものって、却ってドラマチックで好きかも #真田丸
— ぺけし@実況専門 (@P4iE5) 2016年6月26日