真田丸『第25話』裏解説。当時の江戸が「湿地の不毛地帯」は嘘?

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NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は家康の江戸入部について。家康が江戸に居城するようになってから江戸が大発展し、今日の東京があるのは言うまでもありませんが、家康が来る前の江戸はどんな所だったのでしょうか?「ひなびた漁村で荒れ果てていた」という説もありますが、メルマガの著者・西股総生さんは、江戸は以前から関東で最大級の経済都市であり、この説はかなり「盛られている」と反論しています。

今回のワンポイント解説(6月26日)

今回は、家康の江戸入部について。敵を討伐するに時には、敵地の隣に領地を持っている者が先陣にあたり討滅した敵の領地を戦功に応じて与えられるのが、中世武家社会の慣例であった。家康が秀吉から北条領を与えられたのも、この慣例に従ったまでのことで、別に秀吉がイジワルをして家康を僻地に追いやったわけではない。

ところで、家康が入部した頃の江戸は漁村のような淋しい田舎で城もボロボロだったという話が、まことしやかに伝わっている。でも、これは家康を江戸幕府の創業者として祭り上げるために「盛られただ。そもそも江戸は中世を通じて関東でも最大級の経済都市だったし、北条領国では副首都のような位置付けを与えられていた。ドラマでは話をわかりやすくするために、北条氏政は小田原にいるように描かれていたが、実際には江戸城を拠点に外交や戦略の指導に当たることが多かったようだ。江戸城は、小田原城に次ぐ重要な戦略拠点だったのだ。 

とはいえ、家康が政権を手にしてゆく過程で江戸が大発展を遂げたのも事実だ。家康といっしょに江戸に入ってきた家臣達が、歳をとってから「自分が来た頃は、このあたりには何にもなくてねえ」などと書き残すのも当たり前だろう。ほら、東京だって、練馬や杉並あたりのお年寄りは、「戦前はこのあたりも、畑や雑木林ばかりでねえ」と言うでしょう? 江戸城だって、城主の氏政がいない状態で籠城戦をつづけた挙げ句に落城して、略奪にだって遭っているだろうから、建物が傷んでいたのも仕方ないことだった。

そもそも、大名の国替えは、サラリーマンの転勤のような呑気なものではない。文字通りの敵地に乗り込む仕事なのである。家康の場合、関東への国替えとは北条領国の占領を命じられたことを意味する。一部の家臣は、国替えの準備のために国元に戻らなくてはならないが、家康本人は徳川軍を率いて、そのまま関東に駐留しなくてはならない。万単位の軍勢ともなれば、大量の食料や生活物資を消費するわけだから、漁村のようなインフラの整っていない場所に、そもそも進駐できるはずがない。 

家康にとって、経済的・戦略的ポテンシャルの高い城と都市を本拠に選べたのは、むしろラッキーだったといってよい。(西股総生)

今週のワンポイントイラスト

江戸の荒地を開拓したことにしてもいいじゃない。神君だもの。(みかめ)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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