【書評】沖縄県知事がついた嘘。「基地撤退」の背後にチラつく中国の影

 

米軍基地の「人権弾圧」?

翁長知事のスピーチは、次に米軍基地が人権を弾圧してきた事をこう非難する。

沖縄の面積は日本の本土のわずか0.6%ですが、在日米軍専用基地施設の73.8%が沖縄に集中しています。戦後70年間、沖縄の米軍基地は、事件、事故、環境問題の温床となってきました。私たちの自己決定権や人権が顧みられることはありませんでした。

 

自国民の自由、平等、人権、民主主義も保証できない国が、どうして世界の国々とこうした価値観を共有できると言えるのでしょうか。

(同 p231)

「在日米軍専用基地施設の73.8%が沖縄に集中」とは巧みなトリックで、「専用」だけでなく自衛隊と共用している三沢、厚木などの基地を含めると、沖縄は約25%となる

米軍基地が事件や事故の温床と言うが、1,000人あたりの刑法犯検挙人数で見ると、沖縄米軍は1.4人と、沖縄県民の3.0人の半分以下である。外国人犯罪の温床というなら、来日韓国・朝鮮人永住者含むの19.4人、すなわち米軍の13.8倍に達する問題こそ取り上げなければならない。

環境問題に関しては、米軍基地の目の前に住むある県民は次のように証言している。

この辺りはタッチアンドゴー(滑走路に接地し、すぐまた上昇する航空機の離着陸訓練)にテレビが10秒ほど消えることが数回あるくらいで、騒音に関しても窓が開いていると電話が聞こえにくくなる程度です。本当に基地の近くが住みにくいのなら、基地前の地価の高騰やこれだけ多くの住人がいる理由が証明できません。

騒音に関しては、基地反対派が午前5時台からメガホンでがなりたてていて、何度か「常識の範囲内でやって欲しい」とお願いしたが、「表現の自由だ」「耳栓をして寝たらいい」と言い返されたという。こちらの方がよほど人権弾圧ではないか。

「全ての選挙で示された民意を無視して」

翁長知事の嘘は続く。

日本政府は昨年、沖縄で行われた全ての選挙で示された民意を無視して、今まさに辺野古の美しい海を埋め立て、新基地建設を進めようとしています。

 

私は、考えられうる限りのあらゆる合法的な手段を使って、辺野占新基地建設を阻止する決意です。

 

今日はこのようにお話しする場を与えて頂き、まことにありがとうございました。

(同 p231)

まず「新基地建設という表現自体が嘘だ。周囲が市街地になってしまった普天間基地の危険性除去のため、その480ヘクタールの土地を返還して、辺野古の埋立地160ヘクタールに移設しようというものである。

さらに普天間のみならず、北部訓練場、牧港補給基地、キャンプ随慶覧、キャンプ桑江など、沖縄米軍基地の4分の1、約5,000ヘクタールが返還される(同 p27)。「基地の加重負担」「環境問題」を訴えるなら、この移転を一刻も早く進めなければならない。

沖縄で行われた全ての選挙で示された民意も大嘘で、移設推進の保守系が、移設地の名護市では3回連続、県知事選は4回連続勝っている。鳩山民主党の「最低でも県外」発言の混乱が尾を引いて、今回、翁長知事が勝ったのである。

「知事選なら4期16年後にやっと勝って今回だけが民意ですと言われてもそれは理不尽と言うものです」と我那覇さんは指摘する(同 p155)。

しかも、その翁長知事は生え抜きの自民党員であり、自民党県連の要職をすべて経験し、かつては普天間基地辺野古移設の旗振り役だった(同 p119)。その豹変ぶり厚顔ぶりには驚かされる

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