「すべてわかる」という題名の本、わからなかったら作者は詐欺罪?

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本のタイトルには「すべてがわかる」とあるのに、読んでもさっぱりわからなかった…。そんなケース、ままありますよね。では、読者が「詐欺じゃないか!」と訴えたら、そのような書籍の執筆者は罪に問われてしまうのでしょうか。無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』で現役弁護士が回答しています。

「すべてわかる!」という本を読んでもわからなかった。作者は詐欺罪になる?

 □相談□

例えば「これを読めばすべてがわかる! 骨移植」という本を読んでも、全然何もわからなければ作者は詐欺者で犯罪者ですか? (30代:男性)

 □回答□

刑法246条1項に規定される詐欺罪は、「人を欺いて財物を交付させた」場合に成立します(2項詐欺と言って、人を欺いて「財産上不法の利益」を得た場合にも成立します)。より具体的に要件を言えば、「人を欺く」という行為によって、「相手方が錯誤に陥り」、その錯誤によって行為者に対して財物を交付するという「交付行為」が一連的に認められなければなりません。実は、詐欺罪はこうした一連的な判断をしなければならないため、「これは成立するのか?」と判断に悩む犯罪類型となります。

今回のご相談のように、著者が、(著者なりにわかりやすく書いた)「これを読めば骨移植がわかるよ」というタイトルの本を書き、それによって相手方たる読者がわからなかったとしても、お金を騙し取るためにキャッチーなタイトルをつけているわけではないため詐欺罪は成立しないと思われます。おそらくは、著者なりにわかりやすく骨移植のことをまとめているということになるため、「騙す」とは到底言えないのではないかと思われます。

例えば、「ここに書いてある通りにすれば、必ず儲かる」と言って、100万円という超高額な本を売り、実際は中に何も書いていなかったというようなケースであれば、本に何も書いておらず、本も異常に高額であり、「当初から騙す目的で行った行為」というのが認定できるため、詐欺罪が成立することになります(なお、今回のご相談内容は「詐欺罪の成否」について限定するものであったために上記の回答にとどめておきます。刑法以外の法律を見ますと、景品表示法において、実際以上に性能を良く見せようとするようなPRを禁じる優良誤認の問題もあり得そうですが、ご相談内容は著作物における著者が決めたタイトルであり、問題になる可能性は極めて低いと思われます)。

簡単に言えば、当初から財物を得ることに向けられた欺く行為があるかどうかというのがポイントになるとお考えください。

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image by: Shutterstock

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