天皇陛下の「生前退位」スクープを新聞各紙はどう報じたか?

 

「憲法上の立場」というなら…

【読売】は2面に沖村豪編集委員による「憲法上の立場に慎重配慮」と題する解説的なコラムを置いている。

退位の意向を持ちながら公にせず、政府も水面下で準備を進めてきたのは、憲法7条で、天皇陛下の国事行為は「内閣の助言と承認による」とされているからだとの説。皇室典範という法律の改正を促すような政治的な発言をしたと言われないためだったという解釈。今回の報道についても、宮内庁が否定しているのは、同じ理由からだとする。

とはいえ、80歳を超えての激務。皇太子にバトンタッチしたいとの考えは国民に理解されるだろうから、「今後、陛下の意向を尊重しながら、天皇制のあり方について広く議論が行われることが必要」だとしている。

uttiiの眼

憲法7条が大事でないなどとは言わない。しかし、天皇陛下の公務が持つ意味を辿っていけば、それは第1条「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」という規定に辿り着く。7条は天皇陛下が政治に関わることを禁ずる意図だが、今回の「生前退位」に関しては、飽くまでサイドストーリーに過ぎないであろう。

ちょっと嫌な感じがする。

《読売》が「憲法上の立場に慎重配慮」と仰々しく書いているのは、単に担当編集委員の思慮が足りないせいではなく、憲法が何かの障害になっているというイメージ、憲法は建前であって、(天皇陛下が生前退位を希望しているという)現実とは距離があるという印象を振りまこうとしたからではないか。そんな疑問が浮かんでくる。

この問題は、国の最高法規の第一条に規定された存在として、象徴天皇としての役割を全うしたいという天皇陛下の強い意志を前提に考えるべきことだと思う。そして、その象徴としての仕事とは、国民統合の象徴としてあり続け、内外の戦没者に鎮魂の祈りを捧げ、許しを請うこと、そのように意識されているのではないか。

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