天皇陛下の「生前退位」スクープを新聞各紙はどう報じたか?

 

憲法1条と9条をつなぐ

【毎日】は2面で、4人の識者に話を聞いている。4人とは、加藤陽子(東京大学教授・日本近代史)、保阪正康(ノンフィクション作家)、半藤一利(作家)、原武史(放送大学教授・日本政治思想史)。

加藤氏は、天皇陛下は「多数の新聞を毎日読み比べて国民世論の動向に配慮し…国民統合の象徴として行動されてきた」とし、「主権の存する国民の側が期待する天皇像とは何かを慎重に考えられ、決断されたのではないか」という。また、譲位の発想は近代日本になかったわけではないという。

保坂氏はフィリピンやペリリューの慰霊訪問が「1つの区切り」となったのではないかと言う。最晩年まで皇位にあり、病床のままなくなられた先帝の姿も参考にし、いつまで天皇としての責務を果たしていけるか考えられた上での判断だろうとも。「陛下は長く、美智子さまとともに、大戦の犠牲者の追悼と慰霊を繰り返し、戦後の慰霊を紡いでこられた。」「一方で、そうした平和希求の潮目が変わるかのようにみえる今日、あえて近代では異例の生前譲位の意向を示されることの意味を、私たちは考える必要がある。」と。

半藤一利さんのコメントの中で印象的なのは、陛下は「憲法1条と9条をしっかりとつなげ、それを自分の仕事として実践された、日本でもたった1人の方」という部分。

原武史さんは、「長いスパンで天皇制のことを考え、出した結論なのだと思う」という。また、「象徴としての天皇が果たすべき役割とは何か、深い議論がなされないまま戦後70年が経過した。生前退位を打ち出すことで、冷静な国民的議論がわき起こることを望んでいるようにも感じる」としている。

半藤さんと原武史さんには、《東京》も話を聞いている。

uttiiの眼

加藤さんが言われるように、天皇陛下は新聞をいくつも読んでいて、琉球新報と沖縄タイムスも読んでいるらしい。沖縄についての思いが深いことについては、《東京》の「筆洗」が記している(後述)。

それにしても、半藤さんの、「憲法1条と9条をつなげる」という表現には参った。ちょっと太刀打ちできない…。残念なことに、この認識は日本人のなかに広がっているとは思えないが。

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