真田丸『第29話』裏解説。昌幸が木幡山に「出丸」を築こうとしたワケ

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NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は本城から張り出して設けられた「出丸」について。城を増強するための設計を昌幸と信幸が担ったというのはドラマ上の演出だそうですが、出丸を築くことは「城の防御性」を高めるためにとても効果的なことでした。それは一体なぜなのか?著者の西股総生さんがわかりやすく解説してくれています。

今回のワンポイント解説(7月24日)

今回のテーマは「出丸」。秀次を粛清して聚楽第を破却した秀吉は、指月伏見城を豊臣政権の首都にするため、大々的な屋敷割や街路の整備を行っていた。とはいえ、もともと指月は隠居所として選ばれた場所だったから、風光明媚な地ではあっても要害性はイマイチだ。とくに、北東に城を見おろすような丘があるのは、防禦の観点からは明らかにマイナスだ。 

ドラマの中で、城を増強するための設計を昌幸・信幸が任されたというくだりは、もちろんフィクション。ただ、信幸が「もともとが平城だから、強化をするにも限度がある」と言っているのは、指月という場所の特徴をよく表している。そこで昌幸が目を付けたのが、城の北東にある丘=木幡山。昌幸は、木幡山に出丸を築くことによって、指月伏見城の地形上の弱点を補おうと考えたわけだ。 

このような場所に出丸があると、攻める側は最初に出丸を攻略しなくてはならない。出丸を無視して本城に攻めかかると、出丸から出撃した部隊に横合いや背後を衝かれてしまうからだ。本城の側では、その間に万全な守備態勢を整えることができる。また、攻め手が出丸攻略に手間取っていると、今度は本城からの逆襲を食らってしまう。 

つまり、ツボを得た場所に出丸を築いておくことで、相手に攻撃目標や作戦プランの変更を余儀なくさせて、不本意な戦いを強いることができるわけだ。こうした出丸のような施設のことを、専門用語で「側面陣地」という。昌幸が木幡山に出丸を築こうとしたのは、もちろんフィクションだが、軍事的セオリーにかなった発想なのである。

ちなみに、指月伏見城がどのような形をしていたのかは、史料が残っていないため、よくわかっていない。木幡山の出丸については、まったくのフィクション。今回は、太閤殿下のために謹んで縄張りをさせていただきました。木幡山出丸は、模型にする際に少し簡略化されてしまいましたが、僕の原設計はもっとカッコよかったです(笑)。 

なお、出丸については、『図解・戦国の城がいちばんよくわかる本』P70〜P73 を参照してください。 木幡山出丸の話が、ドラマのクライマックスに向けての大事な理論的伏線になっていることがわかると思う。というか、『戦国の城がいちばんよくわかる本』は最初から『真田丸』の参考書になるように作ってあります。ほら、表紙のカバーも、なんとなく参考書っぽいでしょう(笑)。

☆第29回マニアックすぎる見どころ情報☆

いずれも画面には本当にチラッとしか映らないので、なかなか気付かないと思いますが(笑)…

(1)信幸が持っている伏見城の絵図面には朱線が入っています。信幸なりに、伏見城強化プランを考えていた事がわかります。

(2)信幸が参考資料としていた絵図面のうちの1枚は、実は新府城です。

(3)昌幸が構想した木幡山出丸には丸馬出があります。雛型では碁石が置いてあって、わかりにくいですが(笑)。武田の武将ですなあ。

(西股総生)

今週のワンポイントイラスト

豪華絢爛を誇った聚楽第も、戦略上必要なくなった途端、容赦なく破却!(みかめ)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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