NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は本城から張り出して設けられた「出丸」について。城を増強するための設計を昌幸と信幸が担ったというのはドラマ上の演出だそうですが、出丸を築くことは「城の防御性」を高めるためにとても効果的なことでした。それは一体なぜなのか?著者の西股総生さんがわかりやすく解説してくれています。
今回のワンポイント解説(7月24日)
今回のテーマは「出丸」。秀次を粛清して聚楽第を破却した秀吉は、指月伏見城を豊臣政権の首都にするため、大々的な屋敷割や街路の整備を行っていた。とはいえ、もともと指月は隠居所として選ばれた場所だったから、風光明媚な地ではあっても要害性はイマイチだ。とくに、北東に城を見おろすような丘があるのは、防禦の観点からは明らかにマイナスだ。
ドラマの中で、城を増強するための設計を昌幸・信幸が任されたというくだりは、もちろんフィクション。ただ、信幸が「もともとが平城だから、強化をするにも限度がある」と言っているのは、指月という場所の特徴をよく表している。そこで昌幸が目を付けたのが、城の北東にある丘=木幡山。昌幸は、木幡山に出丸を築くことによって、指月伏見城の地形上の弱点を補おうと考えたわけだ。
このような場所に出丸があると、攻める側は最初に出丸を攻略しなくてはならない。出丸を無視して本城に攻めかかると、出丸から出撃した部隊に横合いや背後を衝かれてしまうからだ。本城の側では、その間に万全な守備態勢を整えることができる。また、攻め手が出丸攻略に手間取っていると、今度は本城からの逆襲を食らってしまう。
つまり、ツボを得た場所に出丸を築いておくことで、相手に攻撃目標や作戦プランの変更を余儀なくさせて、不本意な戦いを強いることができるわけだ。こうした出丸のような施設のことを、専門用語で「側面陣地」という。昌幸が木幡山に出丸を築こうとしたのは、もちろんフィクションだが、軍事的セオリーにかなった発想なのである。
ちなみに、指月伏見城がどのような形をしていたのかは、史料が残っていないため、よくわかっていない。木幡山の出丸については、まったくのフィクション。今回は、太閤殿下のために謹んで縄張りをさせていただきました。木幡山出丸は、模型にする際に少し簡略化されてしまいましたが、僕の原設計はもっとカッコよかったです(笑)。
なお、出丸については、『図解・戦国の城がいちばんよくわかる本』P70〜P73 を参照してください。 木幡山出丸の話が、ドラマのクライマックスに向けての大事な理論的伏線になっていることがわかると思う。というか、『戦国の城がいちばんよくわかる本』は最初から『真田丸』の参考書になるように作ってあります。ほら、表紙のカバーも、なんとなく参考書っぽいでしょう(笑)。
☆第29回マニアックすぎる見どころ情報☆
いずれも画面には本当にチラッとしか映らないので、なかなか気付かないと思いますが(笑)…
(1)信幸が持っている伏見城の絵図面には朱線が入っています。信幸なりに、伏見城強化プランを考えていた事がわかります。
(2)信幸が参考資料としていた絵図面のうちの1枚は、実は新府城です。
(3)昌幸が構想した木幡山出丸には丸馬出があります。雛型では碁石が置いてあって、わかりにくいですが(笑)。武田の武将ですなあ。
(西股総生)
《今週のワンポイントイラスト》
豪華絢爛を誇った聚楽第も、戦略上必要なくなった途端、容赦なく破却!(みかめ)
文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)
ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組
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今週の『真田丸』SNS反応【編集部まとめ】
本日の #真田丸 、細川忠興夫人の玉(ガラシャ)が登場しました。実は永青文庫にもガラシャ関連の遺品 https://t.co/e8Vx6VQruR はほとんど残っていません。江戸幕府から疑念を持たれぬよう、あえてガラシャとその信仰の痕跡を消したのではないかとされています。
— 永青文庫 (@eiseibunko) 2016年7月24日
秀吉亡き後の天下を「変わらないとは思えない」と言い切った信幸兄さん、世が乱れるなら徳川につくともう決めてしまっている信幸兄さん、信繁が豊臣に深入りしすぎていると警告する信幸兄さん、「先のことを考えている」信幸兄さん、「すべては真田のためだ」と宣言する信幸兄さん……!!! #真田丸
— 雁 (@m_hntkr) 2016年7月24日
殿下、捨じゃないよ……拾だよ……捨はもういないんだよ……
#真田丸 pic.twitter.com/l11xW9iqru
— ゆずず (@yuzu0905) 2016年7月24日
治部様もう完全に信繁と目合わせて話してくれるようになってるね#真田丸
— u (@urako0924) 2016年7月24日
①文禄年間になると体力の衰えが見えてきた秀吉は、文禄2年に体調不良により失禁したと「駒井日記」に記されています。ただ慶長年間になっても精力的に活動していて、秀吉の死の約5ヶ月前に行われた醍醐の花見も、準備段階から何度も醍醐寺に足を運んだり指図していたようです。#真田丸 #敬称略
— 歴ドル・小栗さくら@さくらゆき (@oguri_sakura) 2016年7月24日
大切なことなので2度言いましたでは済まない老いていく秀吉。密かにほくそえみ納得する家康。真田兄弟は日常レベルでは相変わらず仲良しなのに政治絡みでは進む道がはっきり別れ始めている。築城でやる気を取り戻した昌幸だが地震で暗雲。ああ今日もまたおもしろおかしいのにツライこと! #真田丸
— しゃのん (@shnskyae) 2016年7月24日
高齢化社会になった今、秀吉の後期を大河で度々扱うのは感慨深いです、NHK特集に勝るです… #真田丸
— 二輪草@投資とネコ (@kosi72) 2016年7月24日
三成は秀吉の側に居過ぎて、秀吉に忠誠し過ぎて、兎に角秀吉を信用し過ぎて、片目を塞いでたのかも知れない。刑部が病でなければ三成のそういうとこを察して忠告しただろうに。こういうとこも関ヶ原敗北に繋がってるんだろうな。#真田丸
— 陽世夫 (@joseph_maki) 2016年7月24日
老いて衰えていく秀吉がここ1年で要介護5の判定されるまでになった父親にかぶって辛い。
淀様の「父親の老いた姿を子に見せたくない」ての気持ちは、うちの母親も言ってたしな…秀次の気が病んでいく描写といい…本当に身近な体験に結び付かせるドラマだよなぁ #真田丸— 梶井ゆりゑ (@kajikaji_ye) 2016年7月24日
玉さんが橋本マナミで大丈夫か? って言われてたけど、むしろ人妻のセクシーがにじみ出てて、それがピュアな信仰を持っている姿が実に艷やかで美しい…穢れ無き色気がむしろいかがわしい…これは不埒な輩に「汚したい」と思わせてしまうぞ… #真田丸
— 双馬 (@crwksQ) 2016年7月24日
太閤殿下のカウントダウンが本格的になってきましたが、真田家もこの先兄弟の道が分かれる感(というか、分かれても違和感ないと思える伏線)がぎゅんぎゅん漂ってきました。 #真田丸
— てふ (@tefu87) 2016年7月24日