新聞各紙は、陛下の「深い反省」をどのように理解したか?

 

思いを致しているか?

【読売】の「終戦記念日」関連記事は、まず、1面左肩に追悼式についての記事、2面に韓国の朴大統領の光復節演説についての記事と閣僚の靖国参拝についての記事、3面の解説記事「スキャナー」は近隣外交という観点からの記事及び社説、6面は特別面で、「父の戦争 母の終戦」の第九回、精神科医師で小説家の帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)さんへのインタビュー。憲兵だった父についての壮絶な話。読むべき記事。32面社会面には、引き上げの悲惨さと苦労についての記事。

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《読売》も、陛下が「深く反省」という言葉を昨年に続けて「お言葉」に盛り込んだことを伝えている。ただし、記事の中に、それ以上の説明は無い。では、標題が「深い反省と不戦の誓い新たに」となっている社説の方はどうか。てっきり、この「深い反省」がテーマかと思いきや、「「深い反省」は、戦後70年の昨年のお言葉に続いて、用いられた。先の大戦に対する陛下のお気持ちに思いを致したい」と書いているだけ。その後は先日のビデオメッセージと象徴天皇の務め、特に慰霊の旅について記し、御製に触れ、なぜか昭和天皇の軌跡、遺族の高齢化と「惨禍」の記憶の伝承云々でマス目を埋め、お仕舞いにしている。

ところで、社説の最後には気になる表現があった。

そこには「戦後日本の繁栄は、多大な犠牲の上に成り立つ。その事実を再認識するためにも、惨禍の記憶を後世に伝えていくことが、ますます大切になっている」と書かれている。だが、戦争の犠牲の上に繁栄があるという認識を、今上陛下は表明していない。即位直後に、それに近い表現をしたことは一度だけあったように思うが、それ以降は「犠牲があったから今の繁栄がある」と受け取られるようなロジックは使っておられないと思われる。戦後の繁栄については、「終戦以来すでに71年、国民のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられました」とし、戦陣に散り戦果に斃れた人々に対しては、「心から追悼の意を表」す。これが一貫した、天皇のお言葉に流れるロジック。

戦死者を顕彰、つまり「よく頑張った」と誉め称え、感謝し、英霊として祭り上げるのは、「靖国神社のロジック」であって、天皇のロジックではない。天皇の言葉についての文章の中に、そのようなものを混ぜ込むのは、メディアの姿勢として、正しくない。ついでに言えば、その表現が意味していることは、間違っても「事実」ではない。

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