新聞各紙は、陛下の「深い反省」をどのように理解したか?

 

戦争の、何を伝えるか

【毎日】の場合は、まず1面トップで、戦争体験を伝えなければとの焦燥感から、新たに活動を始めた人々の話を伝えている。その下に、昨日の追悼式についての短い記事。ここで、陛下のおことばと総理の式辞についても簡単に言及。2面には、光復節での韓国朴大統領演説について書いた記事。5面は閣僚などの靖国参拝を巡る記事、29面には「列島包む平和の願い」と題した終戦記念日についての記事。武道館、広島・長崎、戦没者墓苑での取材、さらに、真珠湾攻撃にも参加した94歳の元海軍兵士への取材。瀧本邦慶さんは、国が国民に嘘をつき続けていたことなどを戦争体験者として証言してきたが、最近、学校などから依頼されていた講演が突然キャンセルされるようになったという。特定秘密保護法や安保法ができ、再び戦争に向かって「時代の空気」が変わってきたように感じていると。

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1面の短い記事の中で、「おことばには、戦後70年の2015年に「さきの大戦に対する深い反省」との文言が初めて使われた」とし、一方、安倍総理は「歴代首相が言及したアジア諸国への加害責任や謝罪には4年連続で触れなかった」と書いているのみ。それ以上の分析なども一切ない。今朝の《毎日》は、この問題に関心を示していない

逆に、《毎日》が関心を集中させているのは、戦争体験の継承ということ。1面の記事は東京大空襲の体験者による伝承の話、社会面は、証言活動を続けてきたが、時代の雰囲気が変わり、「事実も言えない世になりつつある」と感じている、もと海軍兵の話。

ここで伝えるべきだと考えられているのは、《読売》が言うような、一般的な悲惨さや苦難の経験ではなく、事実を隠し情報と食料を管理して国民を戦争に動員していこうとする国家政府への警戒心だ。また、かつてと同じようなことにならないために、国家、政府を監視しなければならないからこそ、何が起きたかを知るものが、その経験を伝えようとしている、ということだ。《読売》と《毎日》の間には決定的な差があると言わなければならない。

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