新聞各紙は、陛下の「深い反省」をどのように理解したか?

 

言外に政権に対する警告まで

【東京】は、1面トップで、追悼式での天皇の「お言葉」を詳細に報じている。2面には高市、丸川の2閣僚が靖国神社を参拝したことについての記事、3面の解説記事「核心」は、戦没者追悼式と天皇陛下に関する詳しい記事。陛下は自ら、パソコンで推敲を重ねているという興味深い内容。24面25面の「こちら特報部」は、昨日の靖国神社のルポ。そして26面と27面には、天皇の「深い反省」を識者、遺族、式典参加者らはどう聞いたかなど。

uttiiの眼

3面の「核心」には、「昭和天皇から平和への思いを引き継いだ陛下にとって、戦没者追悼式は象徴天皇としての行為の中心にある」と書かれている。生前退位の意向が表明された今、重要な指摘だと思う。

その大切な追悼式については、厚労省の社会・援護局が「宮内庁を通じて、毎年、天皇、皇后陛下にお出ましをお願いしている」のだそうだ。また元側近によれば、陛下はお言葉を自らパソコンで書いているそうで、宮内庁関係者は、「完成原稿まで推敲を重ねられる。お疲れになるはず」と話しているという。

これで、毎年似た内容だが微妙に違うことの理由がハッキリした。また、昨年の戦後70年、今年の71年に、「さきの大戦に対する深
い反省」という言葉が入ったことは、まさしく、天皇による「推敲」の結果だったということになるだろう。

社会面。識者が「深い反省」をどう聞いたか。

ノンフィクション作家の保阪正康さんは、2014年までの「歴史を顧み」が「過去を顧み」と変わったことにも注目。過去は現在・未来とセットの比較的新しい歴史のこと、つまり、「深い反省」の対象は、昭和の戦争を指していることが明らかだと指摘。神戸女学院大学の河西秀哉准教授は、「深い反省」に日本の加害責任を含めて過去を忘れてはならないという陛下の思いを感じるという。国民だけでなく次世代の皇族にも語り掛けているのではないかと。また、漫画家のやくみつるさんは、「今年のお言葉にはそれほどメッセージ性はなかったが、天皇と首相では平和希求の在り方が違う。言葉は穏やかだが言外に政権に対する警告があるのではないか」と。

保阪さん、河西さん、やくさんの読み方は三者三様だが、「深い反省」の対象となっているものについての考えは基本的に同じだと思われる。素直に聞けば、どなたでも、答えは同じになるだろう。

あとがき

以上、いかがでしたでしょうか。

天皇のお言葉に対する《読売》の「知らん顔」ぶりが際立った8月16日の紙面でした。テレビの世界は基本的に「リオ五輪漬け」でしょうから、秋風が吹く頃にならなければ論点は定まっていかないのかも知れません。

image by: Wikimedia Commons

 

uttiiの電子版ウォッチ』2016/8/16号より一部抜粋

著者/内田誠(ジャーナリスト)
朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を比較し、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜日から金曜日までは可能な限り早く、土曜日は夜までにその週のまとめをお届け。これさえ読んでおけば「偏向報道」に惑わされずに済みます。
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