犬猿のトルコとロシアが電撃和解せざるを得なかった「大人の事情」

 

プーチン、エルドアンの「悪事」を暴露する

さて、ロシアとトルコの関係は、いつ悪化したのでしょうか?

2015年9月、ロシアは、「IS空爆を開始しました。ロシアの目的は、シリアのアサド政権を守ることですから、真剣。アメリカと有志連合が手をつけなかったISの石油インフラをドンドン爆撃、破壊していきます。

そして、プーチンは、トルコ・アンタルヤで開催されたG20で、「爆弾発言」をし、世界を驚かせました。ISに資金を提供している国が、「G20加盟国を含め40か国に上る」というのです。朝日新聞デジタル2015年11月17日。

プーチン氏は、ISによる原油の販売について、ロシアの偵察衛星が撮影した画像をG20の会議の場で示した上で、どのような規模で行われているかを説明したという。

これは要するに、「トルコのエルドアンがISから石油を密輸し事実上ISをファイナンスしている」ことを暴露したのです。

「トンデモ、トンデモ、トンデモ~~~~~~!!!」

常識派の人たちの叫びが聞こえてきます。では、証拠をはりつけておきましょう。読売新聞2015年11月28日付。

欧米情報当局「イスラム国がトルコに石油密売」

読売新聞11月28日(土)10時22分配信

 

【パリ=石黒穣】イスラム過激派組織「イスラム国」から大量の石油がトルコに密輸されているとの見方は、欧米情報当局の間でも強い。

 

米軍特殊部隊は今年5月、シリア東部で「イスラム国」の石油事業責任者を殺害した。

 

英有力紙ガーディアンは、同部隊がその際押収した文書から、「トルコ当局者と『イスラム国』上層部の直接取引が明確になった」と伝えた。

主体に注目。「トルコ当局者」とあります。要するに、「エルドアン大統領を含むトルコ政府がISから石油を密輸している」というのです。

プーチンがしたことを復習すると。

  1. プーチンは、エルドアン政府が、「ISから石油を密輸していること」を暴露した。
  2. ロシア軍は、ISの石油インフラを破壊することで、トルコの「裏石油ビジネス」をつぶした。

この二つでエルドアンが激怒した。その結果、2015年11月24日、「トルコ軍がロシア軍機を撃墜した」というのが、ロシアの主張なのです。エルドアンは、貴重な「裏ビジネス」をロシアにつぶされた。しかも、「ISとの黒いつながり」をプーチンに暴露されて怒っていた。プーチンは、ロシア軍機が撃墜されて激怒した。

プーチンは15年12月3日、年次教書の中で、こんなことを言いました。

われわれは、相手に自分たちが何をしたのかを常に思い知らせる。彼らは、自分たちの行為を後悔し続ける。

怖いですね~~。そしてロシアはトルコに経済制裁を課すことにしました。ロシア国民も、エルドアンを大悪魔のように憎み、トルコに旅行する人は、ほとんどいなくなった。そして、トルコの観光産業は大打撃を受けることになったのです。

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