トルコのクーデター未遂で、状況は一変
ところが、両国関係を一変させる事件が起こりました。それが、トルコで7月15日に起こったクーデター。軍幹部が主導した非常に大規模なものでした。
警官ら8,777人解任、拘束7千人超=死刑復活も検討─トルコ・クーデター未遂
時事通信7月19日(火)1時42分配信
【エルサレム時事】トルコ内務省は18日、クーデター未遂に関連し、公務員8,777人を解任した。このうち7,899人が警察官で、地方の知事・首長30人も含まれた。
またユルドゥルム首相は同日、クーデターに関与した容疑で拘束された軍人・司法関係者らが7,543人に増えたと明らかにした。トルコメディアが伝えた。
ところで、クーデター未遂の首謀者は誰なのでしょうか? 軍幹部が、直接クーデター作戦を指揮したようです。
政府は16日、2,839人の軍人を拘束したと発表。地元メディアによると、このうち高級幹部はアーデム・フドゥティ陸軍第2軍司令官、エルダル・オズトゥルク陸軍第3軍司令官、アキン・オズトゥルク元空軍司令官らで、トルコ紙によると将官40人以上、大佐が29人いるという。
(朝日新聞デジタル7月17日)
すごいメンツですね。ところが、当のエルドアンさん自身は、なんと「真の黒幕は、アメリカにいる!!!」としています。どういうことでしょうか? エルドアン大統領は、政敵のギュレン師が「クーデター未遂の黒幕」と見ているのです。
トルコ「クーデターを首謀」米にギュレン師引き渡し要求
朝日新聞デジタル7月17日(日)21時14分配信
トルコのボズダー法相は17日、未遂に終わったクーデターに関与したとして約6,000人を拘束したと述べた。陸軍の幹部など複数の将官や大佐らが含まれる。
またトルコ政府はクーデターを首謀したのは米国亡命中のイスラム教指導者ギュレン師だとして、米国に同師の引き渡しを求めた。
ギュレン師とは誰でしょうか?
AKP政権発足当初、エルドアン氏はギュレン師とイスラム重視で一致。軍の政治的影響力の排除などで同師の協力を得た。だがエルドアン氏が強権ぶりを発揮するのに伴い、ギュレン師は離反したとされる。
13年には両者の対立は決定的になり、エルドアン氏はギュレン師を「国を乗っ取ろうとしている」と非難した。
トルコ政府は昨秋、国家転覆を企てているとしてギュレン師の団体を「テロ組織」に指定した。
(朝日新聞デジタル7月17日)
ギュレンさんの影響力は強く、「ギュレン運動」というのもあるのです。
〈ギュレン運動〉
米国に亡命中のイスラム教宗教指導者ギュレン師を中心とする運動。
公の場から宗教色を排除する世俗主義が国是のトルコで、世俗主義とイスラム教は矛盾しないとする穏健な思想を持つ。
公的機関でのスカーフの着用や酒類販売の規制強化など宗教色を前面に出すエルドアン政権とは対立関係になった。
(同上)
ちなみに、ギュレン師本人は、クーデター未遂への関与を否定しています。それどころか、「エルドアンの自作自演だ!」と語っている。ギュレン師の引き渡しを要求されたアメリカは、「証拠を見せやがれ!」と逆要求しています。
ギュレン師の引き渡し、ケリー氏「証拠示せば」
読売新聞7月18日(月)0時13分配信
【ワシントン=尾関航也】ケリー米国務長官は16日、訪問先のルクセンブルクで記者会見し、トルコ政府がギュレン師の身柄引き渡しを求めていることについて、「トルコ政府が妥当な証拠を示せば米国は適切に判断する」と述べた。
せっかくクーデターを食い止めたエルドアンさん。しかし、欧米との関係はどんどん悪化しています。理由は三つ。
- 「死刑を復活させる」意向を示している。
トルコは長年EU加盟を目指していますが、「死刑」のある国はEUに入れません。 - クーデター後の大規模な粛清
- アメリカがギュレン師引き渡しを拒否していること
エルドアンは、欧米との関係がひどく悪化したので、プーチンとの和解に乗り出したのです(6月から和解に向けた動きは始まっていたが、クーデター未遂で、プロセスが加速した)。