賽は投げられた。東京五輪の巨額予算をめぐる小池知事vs森元首相の死闘

 

東京のオリンピック開催のヒントはロスに

こうしてリオオリンピックは終わったが、いよいよ4年後は東京に舞台が移る。リオでいろいろあった課題が東京に持ち越されることにもなる。東京都は小池都知事になり、経費面等、透明性を高めようという動きになってきた。これをどのように実現していくのか、なかなか大変だと思う。森元首相が東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のトップにおり、JOCもある中で小池氏がどう斬りこんでいくかがカギだと思う。その時に考えるヒントとしては、1984年開催のロスオリンピックがある。

アメリカが自信を取り戻す契機に

この当時のアメリカはまだ70年代の不況を引きずっていたものの、ようやく景気がよくなり始めた。私はこの当時アメリカに駐在していた。オリンピックはアメリカでは日本ほど盛り上がらないのだが、この時はソ連がボイコットし、アメリカはメダルラッシュとなった。そして、ついにアメリカでもオリンピックがメジャーとなっていった。「強いアメリカ」を訴えてきたレーガン大統領(当時)にピッタリのオリンピックだったという感じがした。そして、これがアメリカが自信を取り戻すきっかけともなった。

ショーもアメリカらしいショーで、空から宇宙飛行士の格好をした人たちが下りてくる非常に派手な演出をした。これらのことでロスオリンピックは非常に話題となったが、この時からオリンピックの商業化が進んだと言われている。

ロスでいい商業化を実現

ひと言で、商業化と言っても「いい商業化」と「悪い商業化」の二つの側面がある。ロスの場合は「いい商業化」とみてよいと思う。それは、ロスオリンピックにおいて税金が全く使われていないことだ。森本毅郎さんが東京オリンピックの開催経費が7,300億円の予算だったのがすでに2兆円超している」と紹介されていましたが、ロスでは公金が一切使われていない。

この時、ロスでは史上初の民営五輪を運営。実業家のピーター・ユベロス(Peter Victor Ueberroth)が組織委員長を務め、放映権の一括入札を実施し放映権の一発入札制を採用し、ABCが破格の540億円で落札した。これは1社に絞って協賛金の引き上げを狙ったもので、問題があるかもしれないが民営だけの運営でコストを削減したということは評価できる。

さらに1932年のロス五輪のスタジアムをそのまま使ったり学生寮を利用した選手村などを作り、支出を削減した。その結果、当時の金額で490億円もの黒字となった。そういう意味では、いい商業化だったといえる。

東京でも全てを民間に任せるかどうかということは別として、上記から考えても旧国立競技場などはそのまま使えたかもしれない。今回、新国立競技場に聖火台が設置できないなどさまざまな問題があるが、税金投入ゼロを掲げるというのも一つの手のように思う。

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