新型の特急ロマンスカーに採用された「夢の素材」は何が凄いのか

 

ところが、このシリコンには問題があります。というのは熱効率が悪いのです。例えば、コンピュータに負荷をかけるとチップが加熱して、それを冷やすためにファンがブンブン回るわけです。オーディオ機器でも、例えばアンプなどは、大音量を出すと熱くなるし、その熱を放射冷却するためのフィンが付いていたりします。PA用の大出力アンプの場合はやはりファンが付いています。

電車のパワー制御などという使い方をすると、シリコン半導体は、それこそ多くの熱を出します。ですから、コンピュータどころではない、大きな放熱用のファン(ブロワと言います)をそれこそブイブイ回して冷却するわけです。

ですが、そもそも半導体が熱を出し、しかもそれを冷やすのにモータでブロワを回すというのは非効率です。

炭化ケイ素(SiC)というのは、この点で「夢の素材」ということが言えます。とにかく、熱効率がいいのが特徴なのです。つまり、パワーを入れても発熱量が少ない、つまり熱による損失がシリコン半導体より少ないのです。一部の研究データによれば損失は10分の1という数字もあります。その一方で、熱に強いという特質もあります。シリコンと比較して3倍の強度があって、しかも放熱が早い性質があるのです。

つまり、このSiCというのは、「熱を出さないし、熱に強い」わけで、これを使った電源回路では冷却機構を省略できるということになります。ムダな熱を出さないし、熱を冷やすためのブロワを回す必要もないわけです。今回発表された70000形のロマンスカーは、旧型比での省エネ効果については、まだ明らかにされてはいませんが、恐らくは30%前後のエネルギー節約が可能になると思われます。

image by: 小田急電鉄プレスリリース(PDF)

 

冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋
著者/冷泉彰彦
東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは毎月第1~第4火曜日配信。
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