これだから日本は「韓国よりロシアを下に扱う」という過ちを犯す

 

日本の悲劇は、「大局観」「戦略観」のなさ

ここまで書いてきたことが、ロシア側の本音」です。原油・天然ガスの値段が安く、安定推移している現状で、「ロシア側に4島返還の意志がないのなら、わざわざ仲良くする必要あるの?」と誰もが思うことでしょう(2島返還は、日ソ共同宣言があるので、可能性があります)。私だって、そう思います。

しかし、日本には、ロシアと和解しなければならない戦略的理由」がある。それは、もちろん「中国ファクター」です。RPEの読者さんは、「尖閣をめぐって日中戦争が起こる可能性がありますよ」といっても、驚かないでしょう。メルマガでは、08年のリーマン・ショック前からずっと同じ話をしている。そして、実際中国側の挑発は、ますますひどくなっています。

尖閣有事」の際、参加国は4つのパターンが考えられます。

1.日米 vs 中国

これは、日米必勝パターン。ですから、日本は、トランプが勝ってもヒラリーが勝っても、あらゆる手段を講じて、アメリカと良好な関係を築かなければならない。

2.日本 vs 中国

これだと、おそらく尖閣は中国に奪われるでしょう。沖縄もヤバくなってきます。なんといっても、中国は、『日本に沖縄の領有権はない!」と世界中で宣伝している。

3.日米 vs 中ロ

これは、どうなるかわかりませんね。しかし、アメリカが日本の離島を守るために、中ロと戦争するでしょうか?

ちなみに、アメリカの傀儡国家ジョージアは08年、ロシアと戦争をしました。このとき、アメリカはロシアと戦いませんでした。ロシアがクリミアを併合したとき、アメリカはロシアと戦いませんでした。アメリカが中ロを敵にまわして戦うとは思えません

4.日本 vs 中ロ

これは最悪日本が勝つ可能性は1%もありません。ちなみに、中国とロシアは、最近も南シナ海で合同軍事演習をしたばかりです。

結局、日本がロシアと和解するべき理由は、対中国で、1.の「日米 vs 中国の必勝パターンを維持するためなのです。そのためには、「2島先行返還」(先行です)でも受け入れ、ロシア側が拒否したら「棚上げ」するべきです。

「棚上げ」と書くと「国賊」といわれそうですが。しかし、皆さん考えてみてください。ロシアは世界有数の親日国家です韓国は世界1、2を争う反日国家です。日本政府高官は、ロシア政府高官に会うと、真っ先に「いつ島返すんだこの野郎!」といって、日ロ関係を険悪にします。そして今、安倍総理は、微笑みながら、「私はプーチンさんが好きです。いつ島返してくれますか?」と、本質的に同じことをしています。

ところが、同じ日本政府高官が反日国家韓国に行くと、決して、一度も「いつ竹島返すんだこの野郎!」とは言わないのです。安倍総理も、世界一の反日政治家・朴さんに会うと、微笑みながら、「アンニョンハセヨ!いつ竹島返してくれますか?」とは言いません。おかしくないですか? そして、この件で、誰も政府高官を、「竹島を忘れた売国奴だ!」とは言いません。

日本には、中国という巨大な、目前の脅威があります。アメリカとの関係を強固に、ロシアを中立に保てれば日本は必ず中国に勝てるでしょう。

しかし、日本はロシアを反日国家韓国よりも下に扱っている。こういう「大局観」「戦略観のなさで、かつて日本は失敗しました。アメリカ、イギリス、中国、ソ連を敵にして勝てるはずがなかったのです。安倍総理は、是非同じ過ちを繰り返さず、日本を中国の脅威から守ってほしいと思います。

最後に世界一の大戦略家ルトワックさんが、「北方領土問題」について、何と言っているか、引用しておきます。

日本政府が戦略的に必要な事態を本気で受け入れるつもりがあるならば、北方領土問題を脇に置き、無益な抗議を行わず、ロシア極東地域での日本の活動をこれ以上制限するのをやめるべきだ。

 

このこと自体が、同地域での中国人の活動を防ぐことになるし、ロシアが反中同盟に参加するための強力なインセンティブにもなるからだ。
(『自滅する中国』p192)

image by: 首相官邸

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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