談志の名言を胸に刻め。仏は極右大統領を選んでも後悔しないのか

 

ただ、僅差にはなるだろうと予想しています。私の職場では、フィヨン対ルペンになるのは疑いの余地なしフィヨンが勝つのもほぼ間違いなし、ではどれだけの差が出るか、を賭けていまして私はね、55パーセント対45パーセントでフィヨンと見ているんです。ほかの同僚はもっと差が付くと予想しています。70対30など。確かに、フィヨンはかなり右よりの人なので、極右に投票しようと考え始めている人が、フィヨンで妥協しようとするのは考えられますがルペンは父親ほど強硬な極右路線ではありません。彼女は現実的で頭もいい。今後、フィヨンに流れようとする人々を自分に呼び寄せる作戦を打ってくるはずです。

が、国民戦線党内で強硬派と柔軟派が揉めていますし、ごく最近、彼女は「不法移民の子どもに無償で義務教育を与えるのを中止しよう」などと言い出し、何を馬鹿なことを、と呆れられましたので、今のところちょっと不利ですね(欧州人権条約ですべての子どもへの義務教育は保障されています)。

で、先日の世論調査では、フィヨン65パーセント対ルペン35パーセントと出ましてうちのボスは、68対32と言ってましたから、大喜びです。数字が一番遠かった人が、みんなにランチをご馳走しなければならないんですけど、まずいです、私、今回一番遠かったです。ルペンがんばれ(うそです!)。

現実が真実、とは、故立川談志師匠の言葉だそうです。こんなはずじゃなかった、という言い訳を許さない、厳しい言葉ですね。大統領選の1年後には必ずこんなはずじゃなかったと言い出すフランス人。今回こそは、こんなはずじゃなかったと言わなくてもすむような大統領が選出されることを望みます。

でも同時に、こんなはずじゃなかったのもまた、現実なのでしょうね。なにがどうあれ、受け入れなければならない見据えなければならない。現実が真実、とは、そういう言葉だと思います。

著者/MAO(「移民への道」連載。フランス・パリ郊外(LES ULIS市)在住)
バブル末期に幻想を抱いて渡仏。こんなはずじゃ、と思いつつ、だらだら過ごしてはや10年。パリ在住日本人が避けて通る地域を転々としたあげく、ついに悟りを開き、「おフランス」にて大阪のおばちゃんになりきる決意。肉屋のおじさんと仲良くなるのが得意。

image by: Frederic Legrand – COMEO

 

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