安倍プーチン会談の「惨敗」を伝えない大手新聞社の苦しい言い訳

 

安倍の言葉を受け売りに

コラム氏が言うように、朝毎読日経4紙は北方4島での共同経済活動に向けた「特別な制度構築へ協議開始することで合意したことを大きく取り上げ」た。これは、どこから採った見出しの立て方かというと、16日の共同会見で安倍が、

この「新たなアプローチ」に基づき、今回、四島において共同経済活動を行うための「特別な制度」について、交渉を開始することで合意しました。この共同経済活動は、日露両国の平和条約問題に関する立場を害さないという共通認識の下に進められるものであり、この「特別な制度」は、日露両国の間にのみ創設されるものです。これは平和条約の締結に向けた重要な一歩であります。

と述べた部分である。

ところが、その同じ会見でプーチンが述べたのは、

平和条約が今ないということは過去の負の遺産だと思っています。相互の信頼を確認するための、血のにじむような仕事を行っています。この意味において、安倍首相のイニシアシブにおいて、南クリル諸島における共同経済活動も考えられています。このようなことを実現することで、平和条約締結に向けた信頼の醸成が行われていると思っています。
(産経16日付要約による)

という言い方であって、「特別な制度」に関して交渉開始で合意したとは言っていないしその言葉にさえ触れていない。また安倍は、それが「平和条約締結に向けた重要な一歩」と言っているのに、プーチンは「平和条約締結に向けた信頼の醸成」だとしか言っていない。

普通、記者たる者は、同じ会見で安倍が盛んに「合意した」と言っていることについてプーチンがその言葉を使わないということは、「ん? 合意していないんだな」「少なくともその言葉の解釈でズレがあるのかもしれない」と思って、そこを突っ込んで質問したり取材したりして確かめなくてはおかしい。ところが、そういう疑問を持つこともなく、安倍の一方的な希望的観測を込めた言葉遣いを平気で大見出しに持って来てしまうのが、今時の大新聞である。

またその共同経済活動が実現したとして、それをストレートに「平和条約締結への一歩」と言うのか、「信頼醸成の一環」としか位置付けないのかは、これまでプーチンがこの件について何を言ってきたかを知っていれば、2人の間の溝が埋まらなかった証拠と捉えるのが当然であるが、記者たちにその知識・教養の深さもニュース感覚の鋭さもない

こうやって、安倍に都合のいいような大政翼賛的な大見出しがいとも簡単に作られて紙面に踊り、それしか見ない国民の多くは何も考えることなく羊の如くそれに従うのである。世も末のプーチン来日報道であった。

image by: 首相官邸

 

高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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