2015年、「難民危機」と「IS問題」が、世界を変えた
このように「グローバリズムへの不満」は、マグマのように溜まっていました。
アメリカで2011年に起こった「ウォール街を占拠せよ!」運動。スローガンは、「俺たちは99%だ!」。つまりアメリカでは、「トップ1%はますます豊かになっているが、残り99%は、ますます貧しくなっている」と理解している人たちがいた。
そんな「グローバリズムへの不満」を爆発させる二つの出来事が、2015年に起こりました。一つは、「欧州難民危機」です。この年、内戦がつづいていたシリア、イラク、アフガニスタン、リビアなどから欧州への難民が殺到した。ドイツだけでも、100万人を超える難民がやってきた。
このことは、元から欧州に住んでいた人に、二つの恐怖を与えました。一つ目は、政府は、大量難民に衣食住を与える。しかし、その政府にお金を払うのは、俺たちだ。つまり、大量難民を養うために、税金が跳ね上がるのではないか??? 二つ目は、大量難民が就職すれば、俺たちの給料はますます下がるのではないか? ひょっとしたら職を失うのではないか?
さらに、欧州のみならずアメリカの民を恐怖させたこと。それは、「ISテロ」が頻発したこと。「難民の中に、ISメンバーがたくさん紛れ込んでいる」。つまり、EUは、難民を受け入れることで、ISメンバーも一緒に入れてしまった。
元から溜まっていたグローバリズムへの不満。2015年の「大量難民問題」と「ISテロ問題」で、爆発寸前になっていました。
2016年に起こった、二つの歴史的大事件
そして2016年、世界では「二つの大事件」が起こりました。
一つは、イギリスの国民投票で「EU離脱派」が勝利したこと(2016年6月23日)。「移民問題が主因の一つ」と伝えられました。そして、「反移民意識」を大いに強めたのが、「大量難民」と「IS問題」だったのです。
二つ目は、トランプがアメリカ大統領選で勝利したこと。今回の選挙では、「反グローバル化」を主張する二人の有力候補がいました。一人は、民主党でヒラリーと最後まで戦った社会主義者サンダーズさん。もう一人は、トランプです。
一方ヒラリーは、90年代から「ファーストレディー」「上院議員」「国務長官」と、政権の中枢にいつづけた。つまり、「グローバル化を推進した勢力」「エリートの味方」と思われていた。さらに、リベラルで、ISテロに対して強い措置をとれそうにない。そして、「メール問題」「クリントン財団」にまつわる様々な疑惑。
結局、勝利したのは、「アメリカ・ファースト」のナショナリスト、トランプでした。