日本にとって好都合。米英の再接近が中国にもたらす「大打撃」

 

トランプは、米英の「特別な関係」を復活させる

ブレグジットは、中国を落胆させ、中英関係を破壊する。しかし、トランプ・アメリカにとって、イギリスがEUと切れることは、とても良いことです。なぜか?

EUは、エマニュエル・トッドさんがいうように事実上の「ドイツ帝国」になっている。EUを「ドイツ帝国」と見ると、アメリカと「ドイツ帝国」の経済規模はほぼ同じで、人口は「ドイツ帝国」の方が多い。だから、「EU(=ドイツ帝国弱体化トランプ・アメリカの国益にかなっています。(EU内でGDP2位のイギリスが抜けることで、EUの経済規模は、かなり縮小します)。

そして、「ブレグジット」は、「グローバリズムからナショナリズムへ」という時流に沿っている。世界的に見ると、「ブレグジット」と「トランプ大統領誕生」は、同じ時流の中で起こったのです。だから、トランプにとってイギリスは同志」である。

さて、トランプは1月27日、イギリスのメイ首相と会談しました。毎日新聞1月28日を見てみましょう。

トランプ米大統領とメイ英首相は27日、ホワイトハウスで会談し、英国の欧州連合(EUは)離脱をにらみ、2国間の貿易協定締結に向けて協議することで一致した。大統領就任後、トランプ氏が外国首脳と会談したのは初めて。

大統領就任後、トランプ氏が外国首脳と会談したのは初めて。

ここ、大事ですね。やはり、「重視している国の首脳」とは「早く会いたい」と思います。

会談後の記者会見で、トランプ氏は「英国との深いつながりを新たにする日だ」と指摘し、メイ氏も「(就任直後の)招待は特別な両国関係の証拠だ」と強調。両首脳とも米英の「特別な関係」を内外にアピールした。トランプ氏はエリザベス英女王からの年内訪英招請も承諾した。
(同上)

メイさんは、壊れていた「特別な関係」が健在であることを、世界に示した。EUから離れたので、アメリカに擦り寄らなればならない事情もありますが。

トランプ氏は、英国のEU離脱について「素晴らしい出来事になる」と改めて称賛。両首脳は英国への最大の投資国が米国であることを念頭に、通商関係の強化を確認した。
(同上)

EU離脱は素晴らしい出来事」だそうです。確かにアメリカにとっては、「素晴らしい出来事」ですね。なんといってもイギリスが、EUや中国から離れてアメリカに戻ってきたのですから。

またメイ氏は、トランプ氏が北大西洋条約機構(NATO、加盟28カ国)を「100%支持する」と会談で述べたことを明らかにした。
(同上)

これは、何でしょうか? 欧州は、二重支配構造になっています。つまり、ドイツはEUを通して欧州を経済支配する。アメリカはNATOを通して欧州を軍事的に支配する。だから、イギリスをEUから切り離し、ドイツを弱体化させる。そして、NATOを通して軍事的支配を強化する。これが、トランプ・アメリカの国益です。

というわけで、再びアメリカとイギリスが接近しています。結果、イギリスと中国をさらに遠ざけるでしょうから、日本にとっては良いことなのです。

 

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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